Micha クラシックとリュートの楽しみ

クラシック音楽とリュート、自然・科学の話題など

W.カーター:バッハ リュート曲集  

リュートのCDを買う頻度は非常に少ないのだが;ちょっと興味ひかれる新譜が出ていた。
奏者のウィリアム・カーターはナイジェル・ノースに師事した人で、これまでパラディアンズなどのアンサンブルで通奏低音を録音した何枚かがあるが、非常に上手いと思った。
W.カーターはF.ソルやF.コルベッタなど、ギター系のソロ・アルバムは既に4枚出しているが、リュート・ソロはこれが最初のようだ、2014年に録音した、"BACH Reimagines BACH"と題されたアルバム、"バッハ演奏の再創成"を意味すると思われる。
収録はBWV1001、1006a、995 の3曲。
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LINN レーベル
録音は会場の響きが心地良く、弾弦のかすかな表情までよく捉えている。

1曲目、ソナタト短調BWV1001
これは2曲目のフーガのみ、当時のリュート奏者が編曲したリュート譜が残っているが(これはBWV1000となる)、ここでは原曲の無伴奏vnソナタから全楽章編曲されている、師 N.ノースに近い編曲か。全体の印象は弱音基調で、vnソロの場合の張り詰めた趣きではなく、リュートらしいゆったり語る物腰である、Adagioは圧縮されたパッセージが多々あるが、そこも巧みに落ちついた自然な歩調にする、Fugaも急がず余韻を十分聴かせながら進める、淡彩を重ねていくような味わい。この曲の最後Prestoはリュートには不向きだと思う、個人的にはAdagioとFugaだけでよい。(*因みに、ラウテンヴェルクで録音した鍵盤奏者がBWV1000のほうを弾き、リュート奏者はBWV1001を再編曲して弾く例が多いのが面白い。)
2曲目、組曲ホ長調BWV1006a
この曲は無伴奏vnパルティータBWV1006にバッハ自身がバス声部を付けたラウテンヴェルク用と思われる二段譜が残っており、あとは奏者がリュート上に乗せる作業となる、ただ原曲どおり弾くには運指上の困難がある、カーターの演奏は、プレリュードは安心して聴ける歩調、最近はアクロバット的な急速演奏が多い中、逆に納得できる、遅くてだめってことはない。ブーレ、ジーグなど速い舞曲も個々の弦の余韻を聴く時間を与えるテンポだ。
最後は組曲ト短調BWV995
原曲は無伴奏vc組曲ハ短調BWV1011だが、これもバッハによるバスを加えた二段譜が残っていて、これに基づく演奏、カーターの使用楽器についての詳細はわからないが、通常の13コースリュートには無い、コントラGを弾いている。この曲もリュートらしい語り口で、3曲中最も好ましい出来に思える。4曲目サラバンドには装飾は行わず、1音ずつに神経を込めているが聴き手にはさらりと自然。ガヴォットは少々速め、ジーグはカナリー風のリズムだが、落ちついて音を紡ぎだすような演奏が良い。
特に人目を引く狙いではなく、リュート本来のキャラクターを貫いた自然な演奏で安らぐ、
これが"Reimagines"と思われる。

ご覧いただき、ありがとうございました。

category: リュート作品

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V.ペレス:「ザ・ギャラント・リュート」  

今日はDaisyさんのブログで紹介されていた、とっておきのアルバムです。若手リュート奏者、ヴィニシウス・ペレスによる、自身の編曲とオリジナル曲で古典派作品を集めた4曲で、その名も"The Galant Lute"
ペレスはブラジル出身でバーゼル・スコラ・カントルムにおいてホプキンソン・スミスに師事、ソロや通奏低音で活躍中だが、このデビュー盤は見事に成功している。いわゆるリュートの定番オリジナル曲じゃなく、古典派作品で攻めてきた、存在感ありv
galant lute
ヴィニシウス・ペレス:13コース バロックリュート
2015年9-10月録音


1曲目はハイドンのピアノ・ソナタ No.6 C-dur Hob XVI:10、ペレスの編曲で、目のつけどころがいい、先にR.ブラウティハムのfpでの演奏を聴いた、快活で楽譜をみても確かにピアニスティックに書かれているが、
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大きく捉えるとハイドンの初期作品らしい、前期古典派的な趣きがリュートにも合いそうだとピンとくるものがある、そして当盤の演奏を聴く、原曲を殆ど崩さずのようだが、リュートらしい物腰で、見事にオリジナル曲かのように変貌する、次に聴くK.コハウトやH.ハーゲンのような古典派期のリュート奏者の作品を知っていると、その延長上にある傑作であるかのように聴こえる、バロックリュートに精通し、腕前抜群のペレスならではの演奏、フィナーレも原作はプレストくらいのテンポと思うが、ペレスの見事な料理でリュートの自然なプレストになっている。

2曲目はカール・コハウトのリュート・ソナタ D-dur、バロック後期のS.L.ヴァイスを頂点に衰退していったリュートだが、ギャラントな時代に入ったリュートの魅力を聴かせるのがK.コハウトである、やはり、リュートに精通した作曲家ならではの深みを持っている。これもペレスにしてみればお手のもの、ハイドンなどの編曲の助けにもなっているだろう。

3曲目はW.A.モーツァルトのディヴェルティメント KV439b/Ⅱ、原曲は3本のバセットホルンのために書かれたまさに3声の曲、→参照楽譜
一聴して懐かしく思った、これはギターの3重奏で楽しんだことがある、他の楽器でも演奏しやすく、リコーダーやオカリナの3重奏にしても魅力的なはずだ。小作りな曲ながら、第一メヌエットとトリオでポリフォニックな部分を置くなど流石と言える聴かせどころを持つ。編曲しだいでは、たしかにリュート1本に収まるだろう。5つの楽章全部演奏されるが、ここでもやはりリュートらしい物腰が一味変える。

最後はクリスティアン・ゴットリーブ・シャイドラーのモーツァルトの主題による変奏曲
じつはこれもバロックリュートの教則本(現代の出版物)に載っていて、取り組んだことがある、シャイドラーは歳下のモーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」から主題を得ている。ペレスの見事な演奏で最後に持ってくるにふさわしい曲となっている、立派に弾くとこんなに良い曲か、と驚くしだい^^;いつの間にかギター曲にありそうな曲に思えてくるが、F.ソルの「魔笛」の主題による変奏曲の上をいく凄さを聴かせる。
最後の変奏で楽譜の①の部分は親指で開放弦を駈け上っていくが、②はどうすべきか;人差し指で駈け下りるものと考えている・・"親指の背"では困難?;
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デビュー盤といえば、かつてナイジェル・ノースが最初から完成度の高いアルバム(LP)を出して、その後期待どおり目覚ましい活躍をしているが、まさに子の世代といえるペレスの当盤にも同じ筋の良さを感じる、抜群のテクニックを持ちながら、あくまで音楽は落ち着いた佇まいに仕上げるのが素晴らしい、今後の活躍に大いに期待したい。

category: リュート作品

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P.ベイエル:S.L.ヴァイス 初期作品  

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久しぶりにリュートのCDを聴きます。
Stradivariusというレーベルは先日のC.グラウプナーといい、古楽の結構マニアック?な作品を、優れた演奏と好録音で出しています。今日はパウル・ベイエルがガット弦の11コースリュートで弾いた、シルヴィウス・レオポルト・ヴァイスの初期作品で、「イタリアのエスプリ」と題されたアルバム、
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ウィーン図書館に残る作品集で父ヨハン・ヤコブの作品も含まれていると言われる、S.L.ヴァイスがイタリアで学んだ影響が色濃く、組曲の最初のファンタジアなどは広い音域を伸び伸びと上下する、トッカータのような魅力、それに舞曲やフーガ、カプリッチォなどが続き、フランス的要素もあるが、後期の作品とはだいぶ趣きが違い、技法的な聴かせどころも多い。
この作品の録音は他に知らないが、P.ベイエルの鮮やかな演奏で楽しめる。
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パウル・ベイエル
当録音の11コースリュート、低音弦はガットを縄状に撚ったタイプと思われ、懐深い響きがじつに良い。余韻の短い力のある低音にオクターヴ弦がしっくり倍音を乗せている。

うちにあるバロックリュートで、このようにガット弦に良く反応してくれるのが、先般修理を依頼した2つの楽器なんです。
オールガットといきたいところ・・ガット系の低音用弦は高価な上に振動不良のものが結構多い、夏場は湿度で調弦が大変、ということで、代用している低音弦がPVFなんです^^;金属の巻弦よりはずっと雰囲気は迫れるようで、巻弦には戻れません。
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(*6コース以下の低音にPVFを使用、電子秤で重さを量り、ガット相当径を算出、適切な径が無いコースは研磨して調整した。)
この太いPVFはゆっくり伸びるので張って安定するまで日を要しますが、伸びきると安定は良いです。高音のほうはひとまずナイルガットです、どこか演奏の場に出かけ、調弦が安定するというのも現実として助かります。

category: リュート作品

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E.エグエス:S.L.ヴァイス リュート作品集  

出た直後くらいに買ったCDですが、2005年録音なのでけっこう経ちます。アルゼンチン出身のリュート奏者、エドゥアルド・エグエスによるS.L.ヴァイスのアルバム、E.エグエスはバーゼル、スコラ・カントルムでホプキンソン・スミスに師事、バッハのアルバムも出しています。師匠譲りと思われる繊細なヴァイスを聴かせます。使用楽器はロバート・ランドバーグ作の13コースlute、低音弦はピラミッドの巻弦に見えるが?使い込んで安定した状態と思われる。

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シルヴィウス・レオポルト・ヴァイス:リュート作品集
1.ソナタ イ短調「L'Infidele 異邦人」 (ロンドン手稿譜)
2.ソナタ ヘ長調(ドレスデン手稿譜)
3.「ロジー伯爵に捧ぐトンボー」(ロンドン手稿譜)
4.ソナタ ニ短調(ドレスデン手稿譜)
エドゥアルド・エグエス(バロックlute:ロバート・ランドバーグ作)
2005年6月 サン・ベルナルディーノ・デ・シエナ教会(ピエモンテ,イタリア)
*ワンポイント録音


このCDでは曲ごとに録音状態が違い、後の方ほど好ましく聴こえる。美しい響きではあるが、残響音はもっと控え目がいい。
一曲目は6つの楽章のソナタ、イ短調"L'Infidele"(異邦人)、以前は「不実な女」と訳されていたが「異邦人」のほうが内容に合う気がする、ヴァイスらしさと同時に他の作品とは少し異色な魅力を持つ、エグエスは装飾を巧みに行い、流線美の中に見事に収める、よくコントロールされたバスは控え目に聴こえるが録音のせいもあるだろう、自分の好みとしては13コースリュートにはいま少しどっしりと迫るところがほしい。
3曲目に入っている「ロジー伯爵に捧ぐトンボー」は後半が素晴らしいが、エグエスは鬼気迫る力感で引き付け、このアルバムで突出した魅力、だだし変ロ短調という難しい調で、易々とは取り組めない;
最後に入るソナタニ短調は、ドレスデン写本にある、あのアルペッジョのプレリュードで始まるお馴染みの曲、バロックluteをやる人が最初に取り組むヴァイス入門の曲だろう、特に困難な技法はなく、魅力を持った作品、エグエスの装飾巧みな第一級の演奏で聴くと、さらに美しくやり甲斐のある傑作に聴こえ、また弾きたくなってくる^^;

category: リュート作品

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R.バルト:S.L.ヴァイス Lute Sonatas,Vol.11  

ロバート・バルトのNAXOS盤、久方ぶりです;
2010年録音が最新盤らしいですが、今回はヴァイスの聴き応えのある作品が入っています。

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シルヴィウス・レオポルト・ヴァイス ソナタ 第11集
バロックlute:ロバート・バルト
録音 2010年11月18-20日、イギリス、西サセックス、聖トーマス・ベケット教会


一曲目のソナタ ハ長調はドレスデン本にある大作で演奏時間、27:56
フランス序曲で始まるが、これが充実している、当然、難度も高い;そのせいかタブラチュアには結構運指が書き込まれている。
グラーヴェに出てくる、この上行パッセージを粒を揃え滑かに決めるのが難しい、ここは上の音価どおりより、徐々に加速して拍に収めるのが良い。
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こういうのはルネサンスluteでいうフィゲタのような極意で、真面目な積み上げが必要か^^;
続いてアップテンポのフーガはストレッタで、密度が高い傑作、過去には今村泰典氏が鮮やかに決めた録音があったのみ、フーガのテーマは解放弦のバスでも弾かれるが、今村氏は完璧な消音操作で鍵盤音楽と言えそうな演奏だった。当盤のR.バルトの演奏は、今村氏のような決め方ではないが、リュートらしく、ちょっとほっとする^^
3曲目、ソナタ 変ホ長調に入っている、リゴードンはその昔、佐藤豊彦氏が世界初のバロックlute録音をしたLPにも入っていて印象強い、たしかに良い曲だ。

category: リュート作品

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M.シェーファー:フランスのリュート作品集  

ミヒャエル・シェーファーと同志オイゲン.M.ドンボアはリュート復興の先駆者、ヴァルター・ゲルヴィッヒに学んだ、その後のリュート界の総本山というべき二方です(西と東、みたいな流派の区別はありません^^;)リュート奏者は師を溯ればどちらかに行き着くでしょう。
惜しくもシェーファー氏は41歳の若さで亡くなり、ドンボア氏も昨年亡くなりました。
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今日は1966年録音のM.シェーファーによるLP盤、とても貴重なものとなりました。「フランスのリュート作品集」と題され、今日ではお馴染みのリュート・レパートリーを収めた1枚、録音も良好で多くの人が楽しめる内容でしょう。
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当盤のシェーファーの演奏は師W.ゲルヴィッヒの影響もあるでしょう、一音ずつを慈しむような弾弦音にまず魅了される、近年の奏者は装飾もあざやかにスリリングな演奏が多くなるが、全ての音を明瞭、端正に聴かせるシェーファーの演奏を聴くと、全曲が美しい宝玉のようで、原点に立ち返るべきか・・と思わせる。

1面の前半はピエール・アテニャンのTant que vivrayに始まり、5つの舞曲が続く、6コース、ルネサンスluteの素朴な美しさに溢れる。後半はお馴染みジャック・ビットナーの組曲ト短調、プレリュードが始まると一転して、深い低音弦に支えられたバロックの佇まい、同じ種族の楽器でありながら、これほど気分を変えられるのはリュートの面白いところ^^、シェーファーはリピートでの装飾演奏を行うが、ここも性急さはなく滋味に包み込む。
2面、1曲目は、ル・サージュ・ド・リシェーのグラーヴェに始まるフランス序曲、次にシャルル・ムートンの舞曲が3曲、このあたりもぜひ弾いてみたいような気品にあるれる曲だ。最後はロベール・ド・ヴィゼの組曲ニ短調、曲中のサラバンドなど、現代のギター・レパートリーとしてもお馴染みだが、原曲は5コースのバロックギターのもの、その独特の調弦法からくる響きが魅力だが、ここではシェーファーによるバロックluteへの編曲で演奏される、バロックギターがラスゲアートで奏でるウエイト部分が、リュートの深いバス弦に置き替り、あたかもオリジナル曲のような魅力を放つ。

思えば、シェーファーがSEONレーベルに残した最後の録音は、もう一歩踏み込んで、フレンチluteを聴かせてほしいという願いを叶えた1枚に思えます。

category: リュート作品

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Dubut "悪魔のシャコンヌ"?  

再掲となりますが、随分前から取り組んで未だ手中に収まらない、魅力な曲があります。
生没年不明のバロックのリュート奏者、Dubut(フランス人なら、デュビュ)のイ短調のシャコンヌです、作風からして初期のフレンチ・バロックより、だいぶ時代の下ったあたりと思われます。同じ和声進行の上で変奏をしていくシャコンヌ、パッサカリアはリュートにとって格好の形式で、ヴァイスも含め多くの作品があります。このシャコンヌのような傑作はそう多くはない、唯一録音している、R.キルヒホーフ氏が発掘した曲でしょう、キルヒホーフ氏本人に楽譜の出所を尋ねたところ、アメリカ・リュート協会所管のフィルムにあったそうで、同じフィルムを借りてスキャンを撮ったしだい、インクが褪せて見辛らかった;

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イ短調で書かれていて、恐れていたほど難易度は高くなかったものの、鮮やかに弾きこなすのは難しい;キルヒホーフ氏ほどの演奏は至難の技、
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動画: "Preludio/Chacona en La menor" (Mouton/Dubut) para laúd
・まずS.Moutonのプレリュードが弾かれ、0:42からDubutのシャコンヌ

しかし魅了してやまないこの曲は小悪魔の戯れにも聴こえ、"悪魔のシャコンヌ"とでもあだ名をつけたい;
バッハのリュート作品に挑戦する気はまったくないですが^^;このDubutのシャコンヌが満足に弾けたら幸福、弾きやすいお気に入りの11コースluteが必要です。

category: リュート作品

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J.リンドベルイ:S.L.ヴァイス ソナタ集  

リュートのCDをもう1枚、今日はN.ノースとともに長く活躍しているスウェーデンのlute奏者、ヤコブ・リンドベルイの演奏、注目は1590年頃に製作されたオリジナル楽器、シクストゥス・ラウヴォルフ作の11コースリュートを用いているところ。
リンドベルイは2度ほど生演奏を聴きましたが、じつに端正な音づくりで荒っぽさは皆無、昔から変りません。この貴重な楽器でシルヴィウス・レオポルド・ヴァイスのお馴染みの曲を取り入れて録音しています。BISの録音もさすが、奏者の意向も取り入れているかもしれない自然な音響。11コースで演奏可能なロンドン写本の作品から、写本中、本来別個の作品をリンドベルイは適宜組み合わせて弾いています。

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シルヴィウス・レオポルド・ヴァイス
1) 前奏曲 変ホ長調
2) チャコーナ 変ホ長調
3) ソナタ ハ短調
4) ソナタ 変ロ長調
5) 前奏曲 ニ短調
6) フーガ ニ短調 
7) ソナタ イ短調 ‘L'Infidele
ヤコブ・リンドベルイ :リュート


1)の前奏曲 変ホ長調は転調の味わい深い曲、続けて2)は同調のチャコーナ、これはお馴染みの曲。3)ソナタハ短調では冒頭にあのお馴染みファンタジアc-mollを置く、N.ノースの演奏と比べるとサラリとした感覚、続くソナタも味わい深く、最後のジーグでこの楽器の低音の鳴りをよく味わえる。4)のソナタ変ロ長調にはフランス風序曲が含まれ聴き応えあり、最後に置かれたプレストはもう少しスピードを上げると痛快だが、リンドベルイは程々に安定感で聴かせる。5)の前奏曲ニ短調はアルペッジョで始まるお馴染みのソナタ ニ短調の最初の曲、続いて6)フーガニ短調は数少ないフーガ作品、最後の7)で魅力的なソナタ‘L'Infidele を聴かせて閉じる、目下、小生の課題曲につき参考にしたい(汗)

ところで使用楽器、シクストゥス・ラウヴォルフ作、1590年頃は420年ほど前、ガリレオ・ガリレイの若い頃あたり、当然ルネサンス期でこの楽器は最初8コースくらいに作られたものでしょう、その後バロック期に対応した11コースに作り変えられるというよくあるケースです。楽器としての最盛期は過ぎているでしょうが、直に当時の楽器の性質を感じるうえでは貴重でしょう。録音を聴いてどうのこうの言ってもしかたないので、現物を手にしてみたいものです;
こういう楽器を弾くからにはナイロン弦など張っちゃ意味がないので当然ガット弦を張りますが、現代作られているガット弦がどの程度信頼できるものかも問題となります。1~5コースに使う普通のプレーンなガットはほぼ問題ないでしょう、ただ低音に使う弦は不明な要素が多い、
ガット低音
①はガットを縄状にして太さを得たもの、これは6、7コースくらいに向いている。②はガットに銅線を螺旋状に巻いて食い入らせたもの、銅線で重さを加えているが、しなやかさが足りず弦長の短い楽器では最低音には太過ぎて使い辛い。③はガットに金属物を含ませ、細くしなやかに出来たもので、10、11コースの最低音に向いている。いずれも現代の弦メーカーが工夫して作ったもので正確な歴史的再現ではないことも承知しておく必要がある。いずれも大量生産できる物ではないので高価である;リンドベルイはこれらを適宜使っていると思われるが、当録音では味わいのある鳴りっぷりが聴かれる。

最近はもっぱら、低音弦に大型魚用のPVF(フロロカーボン)釣り糸を使っているが、
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ガットのように狂わず、程よい硬度で音の出方も劣ることはない、実質十分代役を果たすというか、それ以上と思う。

category: リュート作品

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N.ノース:フランチェスコ.C.da.ミラノ リュート曲集  

久しぶりにリュートのCDです。
リュート界の巨匠となったナイジェル・ノースは以前レビューしたS.L.ヴァイスの2枚に続き、ぜひ聴きたいところを突いてきます。今回はフランチェスコ・カノーヴァ・ダ・ミラノ(1497-1543)の作品集。すでにバッハやダウランドの全集はじめ独奏曲はもとより、通奏低音でも多くの録音を残し、あらためて録音したいのはこういったところでしょうか。

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ナイジェル・ノース(リュート)
6コース・リュート(16世紀初期ヴェネチア・モデル)
マルコム・プリオール 2010年製作
録音:2012年6月、聖アンドリュース教会(イギリス)


F.C.da.ミラノの弾くリュートはバロック期で言えばA.コレッリのヴァイオリンのように神がかった名人とされていたようです。
リチェルカーレやファンタジアといった、1分足らずから3分くらいの短い曲ばかりで、ノースは数曲ずつ続けて演奏するまとめ方が上手い。
ちなみに楽譜(イタリア式タブラチュア)はこんなふうで、ぱっと見、簡素ですが侮れません;
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現在のギター用タブ譜と似ていますが、一番下が①コースです。一番上が①弦というのに馴れてしまうとやりずらいですが、実際に楽器は一番下が①コースなので鏡に映したように現実的です。そう思って弾けばやりやすいはず;
ルネサンス期の典型である多声音楽でフーガの元にもなる、一つのテーマを次々に別声部が追ってくる書き方が中心、跳躍するような旋律は扱えないが、やはり魅力で、声楽さながらに聴き手が声部を追って楽しめるように弾かないといけない、私にはバロックリュートより難しいです;楽譜には音をどこまで伸ばし、どの音に繋がるかまでは記されていない、これは難しいと同時に探る楽しみでもあるが、プロ級の演奏をするのは並み大抵ではないでしょう、楽器も奏者も一流ではじめて成り立つような音楽、ひとつ間違えば玩具遊びみたいにになってしまう。
ノースはさすが完璧、似たような曲がいくつも続くにも関わらず、一曲ずつの内容を楽しませ、次を聴きたいと思うし、一際音が良い。ほぼ同年輩の人だけに元気に活躍してほしいです。今年の1月1日にレビューしたノース氏のLP写真、こんなに時が経ったのが信じられません(笑)

category: リュート作品

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L.キルヒホーフ:「リュート音楽三世紀の旅」  

リュート奏者ルッツ・キルヒホーフはSONYレーベルにいくつか録音していますが、初期にだした「リュート音楽三世紀の旅」と題したアルバムはまさにルネサンスからバロックまでの聴きどころを拾いだしたものでした、

キルヒホーフ

出版物として楽譜が出ていない曲もあって、特に気に入った曲が当CDの中のDubutが書いたシャコンヌ イ短調です。リュートのためのシャコンヌやパッサカリアはS.L.ヴァイスも魅力な曲を書いていますが、キルヒホーフの切れ味の良い演奏でヴァイスの曲にも勝る魅力を放っていた。
参考: "Preludio/Chacona en La menor" (Mouton/Dubut) para laúd
(はじめにMoutonのプレリュードが弾かれ、続いてDubutのシャコンヌです)

Dubutの分厚い曲集を取り寄せてもこの曲は入っておらず、ついにはキルヒホーフ氏本人に出どころを尋ね、リュート・ソサエティ・アメリカがマイクロ・フィルムを所管しているとわかり、フィルムを借りてスキャン、これはいくつかの作曲者を集めた当時よくあった写本です。

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原譜のインクがかなり褪せていて、プリントアウトしても潰れて読めないところがあった、画面に表示すれば微かに読めたのでそこは筆写、という具合でやっと下記のように出来上がり、たった5分程度の好きな曲を手に入れるのにこの手間;;
11コースluteのレパートリーとして再挑戦したいです。

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おそらく世界中の保管庫に知られないまま眠っている傑作があることでしょう。しかしこれ以上楽譜を集めても残りの人生で弾けっこないので、私はこのへんにしておきます;

category: リュート作品

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