Micha クラシックとリュートの楽しみ

クラシック音楽とリュート、自然・科学の話など

R.ロレッジャン:B.ガルッピ チェンバロ協奏曲ほか  

ヴェネチア出身のバルダッサーレ・ガルッピ(1706-1785)はG.B.サンマルティーニ(1701-1775)に続く古典派最初期にあたる人で、オペラ・ブッファ作曲家として著名、鍵盤作品も多く残しています。micha
Galuppi.jpg
バルダッサーレ・ガルッピ
Wikipedia
今日はBRILLIANT CLASSICSのチェンバロ協奏曲をメインとした2枚組で、チェンバロがロベルト・ロレッジャン、flトラヴェルソがマリオ・フォレーナ、弦楽がアンサンブル・コンセルト・ムジコによる演奏。
ガルッピ02
チェンバロ:ロベルト・ロレッジャン
flトラヴェルソ:マリオ・フォレーナ
弦楽:アンサンブル・コンセルト・ムジコ
録音:2010年6月10-11日、11月21-22日、イタリア、パドヴァ


ガルッピの当CDになぜか、ハイドンの鍵盤協奏曲Hob.XVIII,No.2が混じっています、どういう経緯か?この曲の筆写譜の一つがガルッピ作として伝わっていたそうで、それだけの理由でここに録音されているらしいです。しかしまあ、良い演奏で聴けるので文句ありません^^
CD1には以下の6曲が入っていて、
・チェンバロ協奏曲 ハ長調
・チェンバロ協奏曲 変ホ長調
・チェンバロ協奏曲 ト長調
・チェンバロ協奏曲 ヘ長調
・チェンバロ協奏曲 ハ短調
・チェンバロ協奏曲 イ長調

バロックの要素も幾分感じさせるものの、前古典派コンチェルトのギャラントな様式は完成していて、どの曲も親しみやすい。いずれも10分程度で小規模だが適宜カデンツァ・ソロが置かれ、主題の趣も初期のハイドンと遠くない。イタリア的な優美な要素も魅力、5曲目のハ短調は他と一線を画したように第一楽章のエネルギッシュなキレ、第二楽章の清涼さなどC.P.E.バッハの作品を予期させるようで少々驚くが、これは魅力な作品。

CD2は以下の4曲、
・フルート、弦楽と通奏低音のための協奏曲
・チェンバロ協奏曲 ニ長調(ハイドン作、オルガン協奏曲 Hob.XVIII,No.2 )
・フルート、チェンバロと弦楽のためのソナタ ト長調(*マリオ・フォレーナ補筆)
・チェンバロ協奏曲 ヘ長調

1曲目のフルート協奏曲はヴィヴァルディ時代とギャラントな時代が融合したようで面白い。ソロのほか弦楽も一人ずつの編成なので、装飾演奏も加えられ、一段と優美。
2曲目が問題のハイドンのHob.XVIII,No.2、オルガン協奏曲 ニ長調No.2で親しんでいる曲だが、ガルッピに続けて演奏されても、さほど異質に感じない、ただ規模や内容の充実度は飛び抜けたものとなる、ロレッジャンのチェンバロによる演奏は快速なテンポで流麗、弦楽も活き活きとした表情でこれまで聴けなかった魅力が溢れる。
3曲目のflとチェンバロの協奏曲ト長調は一段と古典派らしく前進した内容。
最後のチェンバロ協奏曲イ長調も少々規模が長くなり、前進した内容に思える。

冴え渡った演奏で、BRILLIANT CLASSICSには古楽の希少な曲の名演が多いです。

category: その他・古典派

tb: 0   cm: 0

W.エールハルト:J.M.シュペルガー 交響曲集  

先日のH.グリフィスとW.エールハルトは本当に次々楽しみを広げてくれます。micha
今日はエールハルト盤で、ヨハネス・マティアス・シュペルガー(Johannes Matthias Sperger,1750-1812)の交響曲のアルバムです、これもDHM新録音です。
sperger sym
ヴェルナー・エールハルト(指揮)、ラルテ・デル・モンド(ピリオド楽器)
録音:2014年9月, ドイツ、レバークーゼン、バイエル=クルターハウス DHM


シュペルガーというと過去にtrp協奏曲を一曲だけ聴いて、その曲はモーツァルトに似た感じだった、というのを覚えている程度です。
シュペルガーは先日のJ.F.X.シュテルケルと同年生まれで、コントラバスのヴィルトーゾだったそうで、作曲も数多く手がけた人です(詳細→Wikipedia)今回、エールハルトが選んだ曲は3曲で、うち2曲が短調作品というのに興味ひかれます。

1曲目、交響曲第26番 ハ短調から魅了されます、
第一楽章 Allegro con spirito これほど緊迫した動機はざらにはない、清涼な第二主題を挟み、切れ味に満ちた強奏と交錯、ハイドンの短調交響曲にヴァンハルの流麗さを併せ持つような感覚で素晴らしい、エールハルトの引き締めた演奏で一段と気合いが入り引き付ける。
第二楽章、Andante auioso ここでシュペルガーの美しいメロディーメーカーぶりが伺える、ハイドンの疾風怒涛期の緩抒楽章の味わいも感じるが、わりと簡潔に終わる。
メヌエットは気品を湛えた主題でここはモーツァルト的か、トリオは木管が演奏し簡潔。
終楽章 Allegro 休符を挟み、短調のためらうようなロンド風主題、しかし長調になる部分が多く流麗な楽しさでいく、展開部は転調を聴かせ、疑似再現を置き、続きが入る、劇的な聴かせどころもあり、両端楽章が入念に書かれている。

2曲目、交響曲第21番 ト短調
26番とくらべ、じっくり聴かせる第一楽章Vivaceだ、開始の動機はここでも休符を挟み、ためらうように始め、第一主題が力強く確定する、この切迫感と第二主題のなでやかさの対比、ハイドンの短調作品に近い感覚もあるが、短調作品は不思議と作曲家の内面を感じる、シュペルガー独自の味わいも多分にある。展開部も疑似再現を挟んだ二部構えで、意外な場面も置かれる。これも魅了してやまない楽章だ。
第二楽章 Andante 26番と同じく、センスにあふれた主題の緩抒楽章、小ソナタ形式か、後半がやや劇的な聴かせどころ。
メヌエット Majestoso Allegro moderato 弦の重音奏法で力感ある始まりの主題、きりっと気品を帯びた深みのあるメヌエット、トリオは一転して弦による涼やかさで魅了。
終楽章 Allegro moderato 弦がト短調のロンド主題を奏で、ロンド形式に徹したような楽章、ロンド主題の間は変化に富み充実する。

最後の交響曲第34番 ニ長調
trpとtimpが入り、第一楽章は序奏としてマーチが置かれる、まさしく祝祭的な作品、主部 Allegro e con spiritoは快速感と鮮やかなパッセージで魅了、trp、timpが華々しい活躍、展開部は意外に穏やかなobソロが進め、対比が効果的。
第二楽章 Andantino 短めにまとめた楽章、主題はやはり優美なセンス。
メヌエット Allegretto このメヌエットも約2分半で簡潔にまとめる、しかし快活な主題とトリオのobソロが心地よい。
終楽章 Allegro ソナタ形式の充実した内容、提示部が既に痛快、展開部から終結までも良く出来ている。

特に前の2曲など、これほどの曲が知られなかったのはもったいない、さすがエールハルト、良い曲を掬い上げてくれます。

category: その他・古典派

tb: 0   cm: 0

W.エールハルト:J.F.X.シュテルケル 交響曲No.1&2  

未知の古典派作曲家の探索を楽しんでいます。今日はヴェルナー・エールハルト指揮、ラルテ・デル・モントによるヨハン・フランツ・クサヴァー・シュテルケル(1750-1817)の交響曲を聴く、エールハルトといえばコンチェルト・ケルン時代からJ.M.クラウスはじめ、一般に著名ではない優れた作品を取り上げてきました、今回DHMの新盤として録音したシュテルケルの作品にも期待してしまう。ラルテ・デル・モントはコンチェルト・ケルンと同じく、弦楽はテンションの低い弦を使っている感じで、線の細い響きだが、微かな弱奏までくっきり聴こえる透明感、コントラバスが底力で全体を包み込むサウンドバランス。micha

sterkel sym
ヴェルナー・エールハルト指揮、ラルテ・デル・モント(ピリオド楽器)
録音:2013年12月 ドイツ、レーファークーゼン・クルターハウス


シュテルケルについて詳しい資料はないが、1750年にヴュルツブルクで生れ、モーツァルトより6歳年長、活躍時はモーツァルトやクレメンティ等と並ぶ人気で、ピアニストとしても有名だったとされる。交響曲はマンハイム楽派を基盤としているそうだが、当然ハイドンの影響も受けただろう、
20世紀流の演奏でモーツァルトなど著名な作品に馴らされた耳にはそれ以外は異質に(出来がわるく)聴こえてしまうかもしれない、エールハルトはそのギャップを飛び越し、作品の魅力に直に迫らせてくれるようだ。

交響曲第1番ニ長調Op.35-1
第一楽章 Allegro con spirito、快活でやや武骨な第一主題で引き付ける、第二主題は柔和な味わい、じりじりとしたcresc.の後の力感、懐の深い提示部を聴かせ、反復なしで展開部に移る、この展開部の規模と内容には目を見張る、第一主題、第二主題、順に用いた長大なもので、これはハイドンからベートーヴェンへと橋渡しをする内容に思える、再現部、終結の華々しさはP.ヴラニツキーを思わせる。
第二楽章 Larghetto、幾分素朴ながら優美な主題、この楽章は短調となった中間部が聴かせどころ、突如とした緊迫感に包まれる。
メヌエットは活発で小気味よいテーマ、トリオは特徴めいたものはなく、簡潔な楽章だ。
終楽章 Allegro vivace、やや民謡調の主題のロンド-ソナタ形式はハイドンに近い、展開部は上手く休符を置きながら次への期待を誘う、ここでも第一楽章同様の充実感を置き、終結も華々しい。

交響曲第2番変ロ長調Op.35-2
第一楽章 Largo - Allegro assai、短い序奏を置き、主部の第一主題はがっちりと始まる、快速感に満ちた提示部が引き付ける、反復なしで展開部へ、ここもまた第1番に劣らず鬼気迫る内容だ。序奏部をわずかに挿入して再現部となるが、最後まで気を抜くところなく聴かせる。
第二楽章 Adagio un poco、この楽章も中間部以降が非常に充実、聴かせどころとして書かれている。
メヌエット Allegro 活発な性格のメヌエットでトリオも小ざっぱり、3分足らずで簡潔に終わる。J.M.クラウスがたった1曲書いたメヌエット楽章を思わせる;
終楽章 Presto 活発な舞曲風のロンドテーマで、爽快に進む、目まぐるしく対位法も用いたハイドンの傑作に匹敵するような楽章で期待に十分応える、華々しい終結もベートーヴェンほどゴツくさくなく、痛快。

もう一曲「大オーケストラのための序曲」が入っている、大袈裟だがそれなりに楽しませる、管楽器の妙技が目立つ。

さすがエールハルトの取り上げる作曲家、
ヴラニツキー兄弟に続いてすっかりはまってしまった。

category: その他・古典派

tb: 0   cm: 0

E.コルディア:A.ヴラニツキー 弦楽のための室内楽曲集  

未知の作曲家を探っているうち、最近知ったナイスな古典派がヴラニツキー兄弟です(兄:パウル 1756-1808、弟:アントン 1761-1820)、と言っても出ている音盤は数少ないですが;幸い良い演奏で出ている。今日は弟アントンの作品で弦楽五重奏と六重奏曲の2曲、アンサンブル・コルディア(古楽器)による秀逸な演奏で聴けるのは嬉しい。micha
A.ヴラニツキーはモーツァルト、ハイドンに師事した人で、どれくらいの作品を残したか、わかりませんが、先般のvn協奏曲や今日の室内楽を聴くかぎり、洗練されていて相当なキャリアを重ねた人でしょう。ハイドンは弦楽四重奏に専念し、多重奏曲は書いていませんが、A.ヴラニツキーは流石は弟子、という出来栄えでこれらを書いています。作風としてはハイドンに近いかな?でも民謡風の旋律は出てこない。
A ヴラニツキー
アンサンブル・コルディア
2009年 BRILIANT CLASSICS


弦楽五重奏曲 変ホ長調 Op.8-3
五重奏といっても編成はvnが1つ、vaとvcが2つずつ、という低域にバランスの寄った珍しいもので興味深い、第一楽章アレグロ ノン タント、活気のある主題に始まる、vnが主導するが、他のパートが充実した絡みを聴かせる、提示部の反復なしで展開部に入るが、まさに室内楽の醍醐味、快活な中に各パートが掛け合う、ハイドンの後期作品に引けを取らない充実感。
第二楽章アンダンテ コン モート、変奏形式、概ね一貫してテーマが流れ、各パートが変奏の妙技を聴かせる、この楽章にもハイドン風な健康美とセンスの良さを感じる。
メヌエット、vcが歌いだし、カノンで重ねるなど、彫の深い聴き応えあるメヌエット楽章だ。トリオは小洒落た装飾的美しさを聴かせる。
終楽章、アダージョの前奏があるが、深い味わい、ロンド、アレグレットが続く、このロンドでは各パートが代わる代わるソロを弾くが互いに味わいのある助奏で充実させる。

弦楽六重奏曲 ト長調
なぜか作品番号が付いていないらしい、編成はvn、va、vcが2つずつの六重奏、第一楽章アレグロ、流麗な主題で始まり、これはJ.M.クラウスを思わせる、室内楽の細やかさもあれば、ぐっとシンフォニックに押し出したり、2つずつの楽器がハーモニーを聴かせたり、様々な聴きどころを作る、展開部の充実ぶりは師匠ゆずりか、vcが高域を奏でるのが印象的。
第二楽章アンダンティーノ、変奏形式でト短調となり、憂いを帯びた主題が一貫され、各パートが変奏要素を重ねていく、中間部は長調となる。
メヌエットを置かず、終楽章、ここでもアダージョの前奏を置くが、これも聴きどころ、ロンドのアレグレットに入る、弾むようなテーマで、各パートが切れ味よく掛け合いをする、ロンド主題の間に入る部分が変化に富み、聴き応えあり。

どちらかというと、六重奏のほうが気に入ってしまったが、これらも大いに演奏されてよい曲だと思う。

category: その他・古典派

tb: 0   cm: 0

H.グリフィス:A&P.ヴラニツキー vn、vc協奏曲ほか  

通常は陽の当らない古典派作曲家に注目しているのですが、久々に新盤が出ました。
今回はモーツァルトと同年生まれの、パウル・ヴラニツキー(1756-1808)と弟のアントニン(1761-1820)の作品のカップリングで、指揮は以前、P.ヴラニツキーの交響曲、cpo盤でも取り上げたハワード・グリフィス、今度はメジャーレーベルからの登場です。
発売元の紹介を引用すると、
指揮者のハワード・グリフィスは知られざる古典派の音楽の研究家でもあり、数多くの作品の復活再演を手掛けています。また若手アーティストを支援しており、ここでも2人の新鋭ソリストを起用し演奏を行っています・・とあります。
wrani.jpg
1) アントニン・ヴラニツキー:ヴァイオリン協奏曲ハ長調Op.11
2) パウル・ヴラニツキー:交響曲ニ長調Op.16-3
3) パウル・ヴラニツキー:チェロ協奏曲ハ長調Op.27,
ヴェリコ・チュンブリーゼ(ヴァイオリン)
キアラ・エンデルレ(チェロ)
ハワード・グリフィス(指揮)ミュンヘン室内管弦楽団
録音:2015年10月, ドイツ、プラネック、クップファーハウス
SONY

当録音はさすがSONYの最新盤と言える、cpo盤もわるくなかったが、格段にクリアー。

"知られざる"人の作品の音盤は少ないが、あればなんでもいいとはいかない;古典派ともなれば、より透明度をもって作品の真価を聴かせる優れた演奏でなければ。
'60年代以前の巨匠の時代は、名演奏家の個性とベートーヴェン、バッハなど大作曲家との融合で成立してきたようなところがあり、相性のよい作品以外には手は出さなかった。聴衆の関心度も大きく関わるが、そんな頃、ヴラニツキーとか、J.M.クラウスとかの真価の聴ける演奏は望めなかった、これはハイドンにも同様に当てはまる。新鮮な楽しみに浸れるようになったのは'90年代以後か・・よって新しい名の演奏家に手が出てしまう。

1曲目は弟アントニンのvn協奏曲ハ長調(1794年作曲)
典型的な協奏曲様式、モーツァルトより新しくベートーヴェンの前に位置するような作品、
第一楽章、健康的な主題の前奏に続き、チュンブリーゼのvnが一際透明に美しく始まり、引き付ける。ソロとオケの関わりも巧みで、豪快さと繊細さをもつ立派な楽章である、
第二楽章、短い前奏に続き、vnのみのソロを入れ、旋律美のセンスもなかなかの緩叙楽章、
終楽章、陽気でリズミカルなロンド楽章、うきうきする楽しさで閉じる。
2曲目は兄パウルの交響曲ニ長調(1792年作曲)で3つの楽章、
第一楽章は総奏で豪快に始まり、オペラ序曲を思わせる、颯爽として切れ味よい音楽、ソナタ形式の展開部から終結まで巧みな手腕を聴かせる。
第二楽章は短調に始まり、これも場面がかわった間奏曲のようでもある、
終楽章、対位法も取り入れた聴き応えと痛快なダイナミズムが交錯する、そして各楽器の巧みな効かせ方、P.ヴラニツキーらしい魅力がでている。
3曲目は兄パウルのvc協奏曲ハ長調(1803年作曲)、これは以前エンリーコ・ブロンツィの演奏でも取り上げた。
ハイドンの前古典派的なvc協奏曲も好きだが、こちらは後期古典派らしい内容の傑作だ。
第一楽章はシンフォニックな前奏に続きvcが弱音から出る、エンデルレのvcも力み過ぎず美音を大切にする。木管が巧みに使用され、ソロとオケが対等に活躍、展開部では情緒の細やかさを聴かせる。
第二楽章、穏やかな前奏に重ねてvcが弱音から立ち上がる、優美な旋律趣味といい、一流のセンスを持った緩叙楽章。
終楽章、快活な舞曲的リズムのロンドで、vcの技巧の聴きどころだが、あくまで美音で行く、オケも痛快に間に入る。
wrani02.jpg
透明でバランス良く、程良くダイナミズムを押し出すグリフィスのオケ、二人のソリストも現代の若手らしい古典派モードの演奏がすばらしく、彼らの演奏で申し分なく味わえる。
グリフィスの古典派演奏はSONYでシリーズ化してほしいところ、欲を言えばハイドンもぜひ録音してほしい^^

category: その他・古典派

tb: 0   cm: 0

M.バーメルト:W.ハーシェル 交響曲集  

昨日、話題にした音楽家兼天文学者のウィリアム・ハーシェル(1738-1822)の作品を取り上げます。マティアス・バーメルト指揮、ロンドン・モーツァルト・プレイヤーズの演奏で現代、陽の当らない古典派作品を片っ端しから録音した「モーツァルトと同時代の作曲家」シリーズの一つ、今、手に入るのはこれ1枚しかありません;

herschel sym
マティアス・バーメルト指揮、ロンドン・モーツァルト・プレイヤーズ
2002年録音


収録曲は1760~1762年に作曲された交響曲で、以下の6曲、
No.14 d-dur No.8 c-moll No.2 d-dur
No.12 d-dur No.17 c-dur No.13 d-dur

ハーシェル20代前半の作品となる。この時期ハイドンはエステルハージ家の副楽長に就任したばかりで、ハイドンもこれから主要な作品を書き始めるといった頃である。
いずれも急、緩、急、3楽章の小規模な作品だ。一通り聴いて感じたのは、よく似た作風の作曲家が他にいるかというと、特に思いつかない、あえて言えば、ヨハン・クリティアン・バッハ、あるいは溯って、ジョバンニ・バティスタ・サンマルティーニの影響下に思えるが、あくまで基盤的なこと、W.ハーシェル独自の世界とも言える。また主旋律に対し、バスは通奏低音的な動きが多い、ポリフォニクな書法も入る。
初期のNo.2 d-durが比較的平明でサンマルティーニに近い印象だ、軽快な第一楽章、憂いを帯びた第二楽章、快活な終楽章、と親しみ易い。最も異色を放つのはNo.8 c-mollで、ここで唯一の短調交響曲、第一楽章では疾風怒涛的な切迫感も持つが、和声の推移など他では聴いたことのない不思議な感覚だ。第二楽章も短調のまま悲哀感を帯びる、終楽章もトレモロ奏法による急き立てる楽章。No.12 d-durはホルン、オーボエが入る、この曲は爽快さが印象的、vnのソロ部分もある、第二楽章は優美、終楽章はまた長いトレモロ奏法による急速感で始まり、快活にまとめる。No.17 c-durもまたすっきりとした美しさだ。

No.8 c-mollの不思議な印象を含め、やはり既存のありふれた音楽からは一線を置き、未知の魅力を模索したい、といった、のちに天文学に進むハーシェルらしい気質が作品の風合いに感じられるようだ。
800px-William_Herschel01_20160413182305f8f.jpg
ウィリアム・ハーシェル
俗人の感覚とは一味違う、こればかりは実際聴いて感じるしかないです^^;

category: その他・古典派

tb: 0   cm: 0

アンサンブル・コルディア:P.ヴラニツキー 弦楽三重奏曲集  

古楽研究から模索が始まって、近年は作品の真価が聴ける演奏法が常識化してきた。おそらくバッハやモーツァルトには時代や奏法が変っても味わえる強い要素があって親しまれてきたと思うが、'50~'60年代の奏法でコレッリやテレマンを演奏されても今となっては聴けない、ハイドンでさえ真価は聴き辛い。
一時代前、知られていなかった作曲家はたまにマイナーレーベルから出たが、とりあえず普通に演奏してみた程度のもの、結果、いまいち冴えない作品としか聴けなかった。近年は優れた演奏家が本腰入れて録音したものが出るようになり、NAXOSやcpo、BRILLANT CLASSICSからも次々手に入ってありがたい。
今日はP.ヴラニツキーの続きで室内楽。弦楽三重奏を集めたアルバムでピリオド楽器のアンサンブル・コルディアのメンバーによる演奏、作品の美質を目いっぱい聴かせてくれる。因みに固定メンバーの三重奏団というのは殆どないそうで、ソリストあるいはオケのメンバーが臨時に組む場合が多いとのこと。
当盤は残響を多く取り入れた録音で距離を置いた響き、ボリュームはそれなりに絞らないと、音像が異様に肥大してしまう。

wrani st
パウル・ヴラニツキー
弦楽三重奏曲
変ホ長調Op.17-2
ヘ長調Op.3-1
ト長調Op.3-3
アンサンブル・コルディア


さてヴラニツキーの当作品は、先日の交響曲と同様、ひじょうに良い。今回室内楽ではっと気づいたのが、J.M.クラウスの旋律趣味と共通したものが聴かれる、師弟関係というより友人同士の共通語のような気がする。
変ホ長調Op.17-2は典型的な4つの楽章、第一楽章は流麗な感覚でクラウス風の旋律廻しが実にいい、ぐっと立体的に繰り出す室内楽の醍醐味も聴かせる、3つのソロの掛け合いのようで各楽器のテクニックも聴き応えあり、展開部も胴にいったもの。
第二楽章、とても優美だが、それだけじゃない、聴衆が眠りそうな頃に突如強奏が入る。
メヌエット、このテーマもまた気品があり、嫌味のないセンス。トリオは(まさしくトリオだが)優美な中に切り立った感覚を持たせ引き締める。
終楽章、ロンド形式、ロンドとか変奏曲とかには退屈だったり、クドさを感じる曲がよくあるがヴラニツキーはそういう事態に陥らない、最後まで冴えた感覚で終わる。
ヘ長調Op.3-1は3つの楽章で初めは作曲家のセンスが現れる変奏曲、3つの楽器が交替でソロを取り、各変奏はバロックの装飾を思わせる細やかなお洒落感覚がいい。
第二楽章がメヌエットで、ポリフォニックな聴きどころを置く、トリオは短調で静謐な感覚。
終楽章、ロンド風ソナタ、vlやvcが最高音を聴かせ、爽快さと切れ味がある、展開部の技も巧みで聴きどころ。
ト長調Op.3-3は4楽章、快調な第一楽章はまさにクラウス風、これはもうお気に入りの音楽だ。展開部の踏み込んだ内容はこの曲が一番、気の効いた終結部があって終わる、いつの間にか3つの楽器だけというのを忘れる。
第二楽章、vcがメインにソロを取り、残りが伴奏、一流コンチェルトの緩抒楽章を見事にやってのける。
メヌエット、主題に際立った印象はないが優美、トリオでまたコンチェルト風に聴かせる。
終楽章、ロンド、元気のよいテーマ、短調の間奏になると、ポリフォニックでバロック風になる、気の効いた導入を置いてロンド主題に戻る。
弦楽三重奏なんて軽そうだ・・とあまり期待しなかったがこの充実感には恐れ入る。

category: その他・古典派

tb: 0   cm: 0

H.グリフィス:P.ヴラニツキー 交響曲 ニ長調op.52  

未知の古典派作曲家を久しぶりに聴きます。チェコ出身、ウィーンで活躍したパウル・ヴラニツキー(1756-1808)はモーツァルトと同年生まれ、ハイドンより1年早く没した52年の生涯。出身地で音楽を学び、ウィーンを訪れていた同年生まれのJ.M.クラウスにも師事したそうで、ハイドンにも師事したと言われるが不明、しかしハイドンの作品から多くを学んでいることは聴いて疑いない、詳細はWikipedia 
ハイドン、ベートーヴェン、モーツァルト等、当時の著名な人々と深く関わりを持った楽壇の中心人物ながら、何故か今日では聴く機会がほとんどない。今日忘れられた作曲家は作曲技法や曲のセンスがイマイチで確かに無名でもしかたないという人もいるが、ヴラニツキーは「もっと評価されてよい」という意見もあり、それ以上だと思う、音楽センス、管弦楽の扱いたるや一流、忘れられる存在ではない。今日はcpoレーベルから出ている1枚、ハワード・グリフィス指揮、ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニーOの演奏で交響曲2曲のアルバム。録音は伸び伸びと空間に拡がる響き。

wranitzky sym
パウル・ヴラニツキー
交響曲 ハ短調 「フランス共和国との和平に」op.31
交響曲 ニ長調op52
ハワード・グリフィス指揮、ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団


1曲目の交響曲 ハ短調 「フランス共和国との和平に」は素晴らしいが機会音楽のようで特殊な内容なので今日は割愛し、純粋な交響曲 ニ長調op.52についてのみ。
第一楽章、付点リズムを含む荘重な序奏で気分を引き締める、主部は軽妙な第一主題が弦で始まる、これは後の展開が期待できる、
譜例
すぐに総奏に入るがtimpを効かせたダイナミズムが心地よい活気を出す、ハイドンの交響曲50番若しくは90番のような活気が実に楽しい、展開部は緻密で変化に富み、並みの技量ではない巧みさで引き込む、流麗な魅力もあり。
第二楽章、優美な主題の緩抒楽章として始まるが、tp、timpも動員したシンフォニックな要素が多い楽章、ハイドンで言えば92番の第二楽章の様相で充実感十分。
メヌエット、これはハイドンの53番のメヌエットと同様、簡潔できっぱりとした主題が素晴らしく、飽きが来ない、トリオは気品を帯び、tpの信号が入るのが一味違う。
終楽章、ハイドンの終楽章風に始まるが、ここでもtimpを結構派手に使う、しかしダイナミズムのツボを効かせるもので気品を損なうものではない、ハイドンで言えば103番の終楽章をさらに楽しく痛快にしたような楽章で終わる。
全楽章聴いてみて、センスに欠けるとか、不足に感じるところはない、非常に良い曲ですっかりハマってしまった。テレマンやハイドンのように愉悦のツボを心得ていて、独自の風合いや気品も漂わせる、これほどの作品が今日演奏されないというのは惜しい。H.グリフィス指揮、ハノーファー北ドイツ放送フィルの演奏も現代の古典派演奏らしく優れていて、未知の作品を紹介するには絶好である。ヴラニツキーは交響曲や室内楽が多数あるのでさらに聴いてみたい。

category: その他・古典派

tb: 0   cm: 0

M.Grauwels:F.ドヴィエンヌ フルート協奏曲集  

古典派音楽の探索をしていますが、今日はマエストロ・与太さんの紹介による初登場、フランソワ・ドヴィエンヌのフルート協奏曲集です。ドヴィエンヌはフルートの名手でファゴットも得意としたフランスの作曲家(詳しくはWikipediaに)、NAXOSの当アルバムの3曲を聴いて、なかなか優れた人だと思います。フランス持ち前のセンスもあるでしょうが、きちんと整った協奏ソナタ形式で充実した作品です。フルート・ソロもさすが充実した聴きどころ。注目していきたい人ですね。

フランソワ・ドヴィエンヌ(1759-1803)
1-3. フルート協奏曲 第7番 ホ短調
4-6. フルートとファゴットのための協奏交響曲
7-9. フルート協奏曲 第2番 ニ長調
マルク・グローウェルス:フルート
Alain de Reijckere:ファゴット
ベルナール・ラバディ:指揮、ワルーン室内管弦楽団

ドヴィエンヌ fl con 01

フルート協奏曲 第7番 ホ短調
第一楽章、オケによる印象的な短調の主題で始まるがメロディックな美しさもあり、どちらかと言えばヴァンハルの短調作品を思わせる、前奏の第二主題は長調、ここからフルート・ソロが加わる、再び第一主題をオケが聴かせ、短調の新たな主題によるフルート・ソロが始まる、ソロパートの妙技が冴える。全体には長調が主体で健康的な旋律美。展開部、再現部と型どおり進むがカデンツァは置かれない、ソロの妙技は十分聴かせたので無くてもよいと思える。
第二楽章、アダージョは優美なフルートソロとさりげなく支えるバック、カンデンツァを2度置く、ハイドンの交響曲24番第二楽章にも近い穏やかな美しさ、高域を吹いて終わり、ほぼ間を置かず終楽章へ入る、特長的で魅力な短調のロンド主題を奏でる。間奏がさすがテクニカルで聴きどころ。
フルートとファゴットのための協奏交響曲
第一楽章、総奏で始まるがあまりシンフォニックな印象はない、が健康的で快調な魅力、前奏からフルートは第一vlと重ねて演奏する。フルートソロから始まり、ファゴットが受け継ぎ、2つの楽器が重なる、和声の並進行、反進行、対位法的掛け合いで聴かせていく、ファゴットの低音から高音への跳躍、楽器独自の個性も聴かせる。展開部は緊迫した聴かせどころもある、カデンツァでは2つの楽器が見事に絡む、きちんと様式にのっとった書き方で次の展開も予測どおりだが、予測に不満なく応えるところが良い。
第二楽章、アンダンテ、モーツァルトに近い優美さを感じる。
第三楽章、活気にみちたロンド主題、こちらはハイドンに近い感じ、ファゴットの跳躍を用いたソロが心地よい。
フルート協奏曲 第2番 ニ長調
この曲が一番気に入った感じ、前奏が流麗であり切れ味もある、標準的にとても美しくできた曲、フルートソロもまさにフルート協奏曲の良いお手本のようだが、次々溢れるセンスで満たされ、どこかで聴いた曲の焼きまわしのようなヤボったさがない。展開部のじわじわ深みに誘うところも良い。
第二楽章、短調となる、フルートソロが孤独感を歌う、長調部分になると、モーツァルトfl協奏曲No.2第二楽章をちょっと思わせる味わい。これはフルート名曲集のオムニバス盤に入れても良さそう。カデンツァのあと、弦楽が消え入るように終わり、フルートソロが終楽章のロンド主題をまさぐる、そして快調な終楽章、ベートーヴェンの前にもこの手法、あったんですね、この主題が軽やかで洒落ている、テクニカルなフルートソロが間奏して魅了する。
録音も良好、ひじょうに楽しめる1枚です。

category: その他・古典派

tb: 0   cm: 0

ミヒャエル・ハイドン:トランペット協奏曲d-dur アンドレvsシェルバウム  

懲りずにトランペットを続けます。昔も今もトランペットの上手い演奏というのは人を引き付けてやまないものですね。
今日は弟ハイドンのミヒャエルの作品、トランペット協奏曲ニ長調。L.モーツァルトのニ長調と同じくらい好きな曲ですが、聴きどころは第一楽章アダージョ、音階を徐々に上り、「3点イ音」という超難度の高音を吹くところ。聴く側も緊張します;第二楽章アレグロは緊張を解くように明るく楽しい、ここでもtpの魅力を聴かせます。
ミヒャエル・ハイドンの活躍したザルツブルクにはアンドレアス・シャハトナーというtpの名人がいて恐らくこの人が演奏したものと思われます。この頃のtp奏者はtpの演奏のみで雇われることはなく、他の楽器も兼務できるのが条件だったそうで、シャハトナーはvlも弾いたそうです。

初めにM.アンドレの演奏を2枚、
アンドレ m hay tp
左は1966年、H.シュタットルマイア指揮、ミュンヘン室内Oとの演奏、難所の音はさすがにアンドレといえど難しそうで、ちょい乱れます。
参考動画: M.André, M.Haydn Concerto in D major
しかし、演奏全体はじつに美しいもので安定した美音は他に例がないでしょう。シュタットルマイア&ミュンヘン室内Oも非常に美しい。
右のもう一枚はブダペスト・フランツ・リスト室内Oとの共演、1978年、こちらのバックもさすが美しいですが、例の難所は、難しそうだけど決めている!演奏全体はアルヒーフ原盤のシュタットルマイア盤が好きですけどね。

さて、この難曲を最初に録音したのは、おそらくA.シェルバウムではないでしょうか、昨日レビューしたLPに入っています。
シェルバウム m hau tp
tpを絹の感触のように吹いてしまうアンドレの超人技とは異なり、シェルバウムはtpらしい、ある意味ほっとしますが、名演に変わりはないです。難所の音は・・どうにか決めている;シェルバウムは兄ハイドンの変ホ長調よりこちらが得意かもしれません^^バックのK.リステンパルト&ザール室内Oも美しい弦楽で支えます。

ちなみにW.マルサリスはどうでしょう
参考動画: Wynton Marsalis: Michael Haydn - Trumpet Concerto in D major
ばっちり決めているv

古楽器tpの演奏も
参考動画: Michael Haydn - Trumpet Concerto in D Major; Brian Shaw, Baroque
ピッチが低い分だけ有利かも?

トランペットはマウスピースの大きさや形状で音の出しやすさが変るそうですが、とにかく唇が目的の音に振動しなければ音は出ない、難しさは昔から変らないものと思います。

category: その他・古典派

tb: 0   cm: 0

プロフィール

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

FC2カウンター

ブロとも一覧