Micha クラシックとリュートの楽しみ

クラシック音楽とリュート、自然・科学の話など

ダブル・フレット  

リュートの奇士さんのブログにも紹介されている、ダブル・フレット、私も試したことがありますが、リュート属など現代はガット・フレットを一重に巻くだけが多いですが、歴史的には二回巻のダブル・フレットにしている例が残された絵画に克明に描かれています。どんな効果かというと、インドのシタールや日本の三味線にも仕込まれた、サワリと同じもので、あえてビリつきを生じさせ、程よい刺激音を得るものです。ちょっとハスキー・ヴォイスになるような?

ダブルフレット

弦高が低く、指板の調整が良く凹凸がないほど均一に効果がでますが、ポジションによってバラツキがあるのも面白いです。ナイロンやその他の合成弦、ガット弦など弦素材を替えたり、このようにフレットの状態を変えたり、響きの趣きを変えてみるのもリュート属の面白さでもあります。もちろんバロックギター、ヴィウェラなどでも効果が期待できます。

category: リュート

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手持ちの楽器Ⅰ  

リュート・ブログと言いながら、なかなかリュートの話題が書けません、左手の故障で長く練習を休んでいるせいもあります。昨日もひととおり手持ち楽器の点検だけしました。弾いてやれない見込みの楽器は持っていても仕方ないので使って下さる人に譲りつつあります。でっかいテオルボは持ち主に返却、気に入っていた19世紀ギター(ミルクール・モデル)も思い切って手放しました。少し部屋がすっきりしたかな^^;たぶん手に馴染んだリュート属少しくらいは手元に残すこととなりそうです。

11コース、バロック・リュート(H.フライ・モデル)
マイケル・キャメロン作 80年代

キャメロン 11c
この楽器は英国の製作家によるもので、製作よりも古いオリジナル楽器の修復の仕事を多くやった人だと聞きます。歴史的に忠実に作られた楽器はガット弦を張ると深みのある良い鳴り方をする、というのが一つの証しかと思います。この楽器もそんな素性の良い鳴り方をすると思い、置いています。
修理を重ねるとボディの縁(パーフリング)も痛んでくるので、縁取りに羊皮紙を貼ることになります、これも最後の修理で貼られました。

gut
茶色の低音弦はaquila社のローデド・ガットという、羊腸に銅化合物を含ませて比重を重くした、歴史的低音弦の復元品です。現代の巻弦とは質の違う深みのある低音を出します。残念ながらこの弦は生産停止中です。


修理
中古で購入した後もかなり手を加えましたが、日本の気候下では故障が頻発し、何度修理に出したことか;これは湿気にさらされる事故で接着が緩んだとき、修理を頼んだ製作家さんが送ってくれた写真です。力木はすでに新しいものに替えられていたようです。故障遍歴のある楽器だけに嫁に出すのも心配で、置いておくしかありません;

category: リュート

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T.ファイ:ハイドン交響曲 1、4、5、10番  

順序が前後しましたが、今日はT.ファイ、ハイデルベルクSO、ハイドン交響曲vol.17です。モルツィン家時代の初期作品のカップリングですね。
ホグウッドやS.クイケンらがハイドンの時代、存在し得たであろう理想の演奏を目指し、実現したのも素晴らしいですが、T.ファイはハイドンさえ気付かなかったであろう作品に内在する音楽的喜びを探り、見事ツボを突いて実現します。ファイの演奏で初めて、良い、と思う部分が見つかります。ピリオド奏法を武器として、既成の価値観を破った近未来的な演奏かもしれません。

fey hay 1 etc

第1番ニ長調
第一楽章、テンポは演奏史上最高速でしょう;曲自体、頭からクレシェンドで暴走を誘っているようなタイプで、これもツボを突いた演奏でしょう。それでもファイの演奏は全ての音がきっちり粒立っていて、詳細にこの楽章を聴かせます。
第二楽章、反復の2回目で装飾を加えるのみならず、テンポも強弱も変化させ、ただの繰り返しじゃなく、楽しませます。左右の1st、2nd:vlが対等で、二度音程をぶつけるところ、澄んだ音の不協というのは美しいです、チェンバロを入れず弦のみで味あわせます。
終楽章、ここは速すぎる程じゃないですが、1~3楽章をバランス良くまとめた感じです。ナチュラル・ホルンがスパイシーに響き心地よいです。

第4番ニ長調
第一楽章、これもハイ・スピードで始め、痛快スリルの極みですが、それでも旋律のデュナーミクは緻密に表現され、ただの急速ではない整った味わいです。第二主題になると"緩叙主題"かのようにテンポを遅め、性格分けをします、さらにチェンバロで雅に飾ります。45番「告別」では展開部で初めて登場する異例の第二主題?で同様の表現をしていましたが、急速に戻った緊張がとても効果的でした。テンポの変り目の繋ぎがいいんですね。
第二楽章、弦の伴奏部が終始、頭拍からと、裏拍からのシンコペーションの部に分かれ、そこへ1st:vlが動きの緩やかな旋律を弱奏する、不思議な感覚の楽章ですが、ファイは一段と弱奏表現で幻想的にします。
第三楽章、テンポ・ディ・メヌエットでトリオを持たない簡潔なソナタ形式楽章、装飾を加えながら退屈させない演奏、ここでもチェンバロのリアリゼーションが雅に飾ります。

第5番イ長調
第一楽章、ゆっくり、緩叙楽章の魅力を滑らかなサウンドで満たし、ホルンの高音が美しいです。展開部は左右のvlによるポリフォニーが魅力。
第二楽章、いい楽章ですね、普通くらいのアレグロで大事に進めますが、音を思い切り短く切り、ピリっとした感覚が良いです。提示部の反復2回目で、僅かに加速した感じを受けます?展開部は左右のvlの掛け合いがいい。
メヌエット、やや平凡なメヌエットも磨き抜かれたようなサウンドと表現で満足できます。
終楽章、プレストも急速で、各パートは疾走しながらたたみ掛け、痛快、1:27あっという間に終わっちゃいます;

第10番ニ長調
第一楽章、見事な楽章です、提示部から入り組んだ構成をもっていて進めっぷりもいい、展開部は短調部分を置かず短めで再現部と一体となって充実感を作ります。ホルンの粗野な響きも効いています。
第二楽章、ここも弦楽のみですが1st:vlが表情豊かで気品にみちた旋律を進め、ときに2nd:vlが引き継ぎます。木管アンサンブルにしても魅力的になりそうな楽章、9:11じっくり聴いてしまいます。
第三楽章は、ヴィヴァーチェはロンド風、動と静の対比をつけ、ファイとオケの手腕で最後まで快活に楽しませます。

category: F.J.ハイドン

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散り残り  

近場の写真です、毎年紅葉は最も色づく頃、半ば散ってしまいますね。

紅葉1

来年はピークを外さず、木曽川沿いの山腹を見て廻りたいです。

紅葉2

category: 写真・散策

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DHM50周年記念ボックスより  

数年前購入した、ドイツ・ハルモニア・ムンディ50周年記念ボックス(50CD)、いわゆる名曲集ではないです。音楽史的に聴いておきたいけど、音盤を買うのはつい後回しになっていた作品が多く、そういう意味でよくまとまっています。とはいえ名曲もちらほら入っていて、サービス部分もあります。フライブルク・バロック・オーケストラの名演が多く入っているのもお宝です。

50枚の中からCD8のトーマス・ヘンゲルブロック(指揮&Vn)フライブルク・バロック・オーケストラによる、バッハとヴィヴァルディのアルバムです。

dhm box

①ヴィヴァルディ:歌劇『オリンピア』序曲
②J.S.バッハ:管弦楽組曲第4番BWV.1069
③ヴィヴァルディ:弦楽のためのシンフォニアRV.158
④J.S.バッハ:カンタータ第42番~シンフォニア
⑤ヴィヴァルディ:4つのヴァイオリンのための協奏曲Op.3-10
⑥J.S.バッハ:3つのヴァイオリンのための協奏曲
       (3つのチェンバロのための協奏曲BWV.1064からの復原編曲)

どういうコンセプトのカップリングかわかりませんが、私にとっては聴きどころが集まっています。
①と③のヴィヴァルディは3楽章のシンフォニア、弦合奏のみのダイナミックで彫りの深い音楽、これぞ交響曲の起源?とも感じてきます。
②のバッハ管弦楽組曲第4番、じつは4つの組曲中一番好きな曲なんです。ここではtp、timpを除く版で演奏されていて、室内楽的となりますが、ヘンゲルブロックの演奏がじつにいい、弦楽とobのしなやかな演奏がグラーヴェを清々しく聴かせ、次のアレグロがいい、付点リズムのテーマがフーガであふれ出す、tp、timpが轟かない分、構成が緻密に聴かれ、魔術にかかったような魅力です。特に誇張はないけど、付点リズムをくっきり快活にするのが効いています。続くブーレー、ガヴォットもごく当たり前の演奏なのですが、緻密な表現で不思議なほど良く聴かせる。終曲レジュイサンス、各声部でリズムの重心が複雑に入り乱れた面白さがありますが、音を短めに切りながら、くっきりエッジをたて、この魅力を存分に聴かせます。
④ヴィヴァルディの4vl協奏曲は調和の霊感の中で特にいい曲です。3楽章とも引き付けるものがあって、ソロvlが4つのためか合奏体としての響き、構成が充実して聴こえます、ヘンゲルブロックの演奏は特段誇張はないですが、リズムを効かせ、とても引き締まった味わいがあります。
⑤バッハの3vl協奏曲も同様です、しなやかな心地よい音でありながら、くっきりリズムを立てます。
いずれも飽きの来ない演奏、録音は聴き心地よく鮮明。

category: J.S.バッハ

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Goltz:ハイドン 交響曲80番ほか  

ゴットフリート Von Der ゴルツ:指揮&vl フライブルク・バロックO、80番の演奏がもう少し欲しくて求めたものです。
録音法が直接音主体の力強いもので、間近に聴くような克明な弦の響き、野獣が吠えるようなナチュラル・ホルンの響き、最新のT.Fey盤(hanssler)に近い感じです。低音もよく響いて懐深いサウンドです。

hay 80 etc

交響曲80番
第一楽章、劇的な第一主題とおっとりした第二主題の対比が面白い、トラヴェルソのほんのりした響きが第二主題のキャラに合っているし。展開部も2部に分割したような書き方で、第二主題で前半を閉じ、長い休符を置いてまた調を変えた第二主題で次が始まる、ここがいい;提示部では最後にちらっと出てくる第二主題に結局は主役を奪われた感じ。再現部はかなりカットされた状態のようで終結があっけない。アイデアいっぱいのハイドンならではの楽章です。
第二楽章、1st:vlの主旋律、Goltzは心地よいレガートにしますが、伴奏パートは適度に切り、気分を引き締めます。ポリフォニックな部分も置き内容の豊富さを楽しませる緩叙楽章です。バス部に他のパートをオクターブ・ユニゾンで重ね、力強く聴かせるところ、「十字架上の七つの言葉」にも登場する響きです。これは終楽章でも出てきます。
第三楽章、トリオの旋律、崇高ですね、教会旋法を用いただけで気分がかわります。
終楽章、第一主題はアウフタクトと次の音がシンコペーションのせいで、赤線のようにズレて4/4拍子に聴こえてしまい、一度間違えて聴くと癖がついてしまう;テンポが速いのもあって、惑わされます。
hay sym 80
展開部は弦で第一主題を弾いた後、木管で繰り返す、このあたり聴き手は手玉に取られた感じがします;しかし充実している。

ヴァイオリン協奏曲No.1
交響曲では「朝」「昼」「晩」の三部作を書いた頃でしょうか、克明な録音も手伝ってか、Goltzのvlソロが味わい深く、ノンヴィブラートにより重音奏法が一段と美しく聴こえます。第二楽章は「朝」を思わせる開始ですが、あとはピッチカートの伴奏のみでvlソロを聴かせます。シンフォニックな要素が少なくても全曲引き付けるのはハイドンが一流のメロディー・メーカーである証しですね。終楽章のソロは快活な切れ味を聴かせます。

交響曲49番
第一楽章、緩叙楽章ですからリズムの切迫感はありませんが、只ならぬエネルギーの内在を感じる楽章です。80番の第二楽章よりレガートな演奏をしていますが、こちらの楽章にはふさわしい表現と思います。フレーズが移るときの息を呑むような感覚が引き付けます。楽章の後半はさらに凄いです。
第二楽章、そしてこの短調の急楽章が続く、とても効果的な配置ですね。Goltzの演奏はとても快速ですがぴしっと決めています。弱音で上声と低音がカノンするところがありますが、弱音でも低音の響きに重量感があり、この部分の魅力が際立ちます。ここは録音の効果もありそうです。
メヌエットは速くせず適切なテンポ、急楽章に挟まれているので、ここは落ち着かせるところでしょう。
終楽章、Goltzはとても快速にします、後半も反復ありで3:07、ちなみにT.Feyは3:03、違いはT.Feyは途中から僅かに加速する感じですが、Goltzは整然と推進力をつけます。

category: F.J.ハイドン

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J.C.バッハ:協奏交響曲  

Bach's sons、次はJ.クリスティアン.バッハ(1735-1782)の協奏交響曲です。
協奏風ソナタ形式はすっかり出来上がっていて、のちのモーツァルト協奏交響曲の原形となることもよく感じますね。アンソニー・ホールステッド指揮、ハノーヴァー・バンドはクリスティアン・バッハを精力的に録音しているようです。

j c bach sc

①協奏交響曲 変ホ長調 2vl&oboe
第一楽章、アレグロですがあまり急速感はなく、イタリア・シンフォニアらしいオケの前奏から始まり、2つのvlのみがソロを演じます。1st、2ndvlが交互に歌い継いだり、並行和声で重ねたり、オケが入ったりと進みます。短いカデンツァも演奏されます。
第二楽章、穏やかで優美な表情、モーツァルトも彷彿とさせます、ここではoboeのみがソロを演じます。楽章でソロ楽器が代るというのは初めて聴いた記憶です。oboeソロは哀愁の味わい。
第三楽章、ソロ楽器は再び2つのvlとなります。テンポ・ディ・メヌエットはあくまで優雅に、ソロ楽器同士のたたみ込むような掛け合いとか、オケのシンフォニックな響きとか、緊迫した魅力は求められません。

②ト長調 2vl&vc
第一楽章は快活な魅力があります。ソロは事実上2つのvlに2本のflが補助的に加わり、vcが続くという扱いです。各ソロ楽器が交互に、オケも間に入り、優美ですがあまり緻密な構成はありません。
第二楽章、2つのvlとvcが対等に歌い継ぎ、2本のflや弦楽が間に入ります。
第三楽章、テンポ・ディ・メヌエット、ソロ楽器の活躍パターンは前楽章と同じ。

③変ホ長調 svl&vc
この第一楽章もけっこう快調で楽しめるところがあります。2つのvlソロも洗練された感があり、歌い継ぎや絡みもよい、オケの和声が魅力的に入ります。
第二楽章、すがすがしい雰囲気、ここはvcのみのソロ、バックの木管が重ねるハーモニーが豊かさを添えます。
第三楽章、テンポ・ディ・メヌエットとはいえ、オケの前奏はけっこう快速感で運びます。2vlのソロはややテクニカルでけっこう巧みな掛け合いをします、オケ・パートが間に入り、次はどんなソロが聴けるか、というコンチェルトらしい楽しさで進みます。

クリスティアン・バッハ、どちらかというと、推進力や緊迫感をもった普通の交響曲が好きですね。

category: Sons of Bach

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T.ファイ:ハイドン交響曲102番ほか  

トーマス・ファイのハイドン新譜、着実に進んでいるようですね。第1集で録音した104番以来、100番代の録音は2曲目でしょうか、102番と協奏交響曲で討って来ました。

fey hay 102 etc
トーマス・ファイ指揮、ハイデルベルク交響楽団
F.J.ハイドン
交響曲 No.89 F major (Hob.89)
交響曲 No.102 B♭major (Hob.102)
協奏交響曲 B♭major (Hob.105)

89番、第一楽章動機が中山晋平:作曲「証城寺の狸囃子」と同じということで有名?各楽章、充実した傑作です。
ファイは全般に堅実な演奏で安定感がありますが、終楽章の展開部の懐深さが圧巻で聴きどころです。

102番、第一楽章序奏は真っ当な素晴らしい演奏、主部は活気、重量感、切れ味を緻密なコントロールで聴かせ、適宜テンポを変化させ、最もよいテンポを各所に当てはめます。盛り上げどころは加速して痛快、左右に配置した1st:vl、2nd:vlが構成感を聴かせる上で効果的です。
第二楽章、弦と木管が空気に溶けるようなレガート、穏やかな中にも大波が打ち寄せる楽章です、例によってダイナミズムもどっしりと表現します。
メヌエット、かなり速めで躍動感満点、アウフタクトで大きく溜めを入れ、聴き手が先走るのを押さえつつ進めます。トリオはゆったりレガート、木管の装飾音がかなり凝ります。メヌエットの再現ははじめよりさらに元気づいたようです。
終楽章、メヌエットからアタッカで入る間です、快速で緻密に構成を聴かせながら、強弱の対比、鋭い打ち込み、斬新なこの楽章の魅力を寸分漏らさず表現しようとする姿勢を感じ、終結は思い切り加速、快演です。

協奏交響曲、まず、オケのシンフォニックでかっちりしたまとまりが心地よい、各モダン楽器のソロはノンヴィブラート奏法でとても味わい深いことを実証しています、ソロには装飾パッセージを加えます。最新の録音として、S.ラトル&BPOのライバル盤と言えそうな秀演。一方でフィッシャー盤のような程よくのどかさをもった演奏も好きですけどね。

category: F.J.ハイドン

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フィッシャー:ハイドン交響曲79、80、81番  

79~81番の3曲はセットで出版されたそうですが、パリ交響曲やトスト交響曲を書く前の試作的な作品でもあり、多くのアイデアが投入されていて面白いです。フィッシャーの演奏がすべて心得たようですばらしい。

hay 79 80 81

79番、第一楽章はvlとファゴットで思い切り平穏な第一主題で始まりますが、すぐに聴かせどころ満載の様相に入ります。展開部も第一主題で導入しますが、第二主題による切れ込み鋭い展開が見事。再現部も同様の充実。
第二楽章は優美な旋律のアダージョですが、突然終楽章に入ったか?のような快活なアレグロに変わる。他に例のない聴きどころ。
メヌエットはすっきりとした優雅な主題で、リズムの心地よさを聴かせる。
終楽章はいかにもロンド主題らしいテーマで始まるが、これは88番終楽章の習作とも言える構成と雰囲気を持つ楽章です。
Joseph Haydn - Symphony No. 79 in F major

80番は短調ではあるものの、疾風怒涛期のタイプではなく、短調交響曲の仮面をかぶったユーモラスな作品です。
第一楽章、ニ短調で"シリアス・キャラ"の第一主題がさっそうと登場し、ちょっと空回りしながら?活躍します、提示部の最後にヘ長調で思い切り"ゆる・キャラ″の第二主題で終わる、休符で間をあけて展開部に入るけど、また第二主題のお出まし;さすがに展開は第一主題が決めようとしますが、第二主題が入って上げ足を取るんですね。フィッシャーは第二主題をウィンナ・ワルツみたいに聴かせます。終り方があっさり。
第二楽章(変ロ長調)は酔狂がすぎた第一楽章の穴埋めのように真面目で充実したソナタ形式、「十字架上の七つの言葉」に入れてもよさそうな緩叙楽章の傑作です。思い切り弱音表現をとったフィッシャーの懐深い演奏で一段とすばらしい。
メヌエット(ニ短調)の主題も装飾的じゃなく、簡潔な味わいがあります。トリオはグレゴリオ聖歌の旋律、ブラームス交響曲4番の教会旋法をちょっと思い出します。
終楽章(ニ長調)いきなりシンコペーションで始まる第一主題、楽譜を見ないとアウフタクトで始まる拍子がまるで掴めず、聴衆を煙に巻く"だまし絵″のようです。フィッシャーはこのシンコペーションをノンヴィブラートでまさしく煙のように演奏します。しかし目まぐるしい第二主題の推進力に満ちた魅力的な終楽章、展開部もシンコペーションで始まり、ひとしきり見事な展開を聴かせ疑似再現を入れ更に展開が続く、再現部は無駄を省き、推進力を落とさず終結に行き、きっぱり終わる。この痛快さは86番の終楽章に通じます。
Joseph Haydn - Symphony No. 80 in D minor

81番は全楽章いいです。
第一楽章の始まりが斬新、提示部でしっかり充実感を聴かせますが、展開部から終結までさらに期待に応える内容です。
第二楽章はお馴染みの変奏形式ですが、主題が良く変奏も冴えて満ち足りた気分にさせる出色の出来。
メヌエットがよろけるようでユーモラス、踊り手はコケてしまいそう;トリオはハーディ・ガーディ風?弦のドローンの上に民謡風の旋律。
終楽章、第一楽章とバランスした内容、高域と低域の対位法のやりとりが聴かせどころです。
Joseph Haydn - Symphony No. 81 in G major

category: F.J.ハイドン

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G.B.サンマルティーニ:交響曲集  

古典派スタイルの交響曲などはどこから生まれたのか、という問いでまず引きだされるのが、ジョヴァンニ・バティスタ・サンマルティーニです。ハイドンが父なら、サンマルティーニは祖父でしょうか。オペラや宗教曲の始めに序曲として演奏される急緩急3楽章の曲を独立した曲としたそうです。
手元にあるケヴィン・マロン指揮、Aradia EnsembleのCDを聴きました。
2003年 NAXOS

g b sammartini

Symphony ①A major(J-C62) ②C minor(J-C9) ③D major(J-C16)
④Fmajor(J-C36) ⑤D minor(J-C23) ⑥Cmajor(J-C4)
音楽史云々の前に、それぞれ美しい曲として楽しめます。弦楽主体の細やかで上品な味わい、トランペット又はホルンがハーモニーとリズムを補強します。初期の作品はまだバロックの様相が強いですが、当盤の①A major や⑥C majorあたり、古典派の始祖らしいスタイルとなっています。サンマルティーニに師事したC.W.グルックの序曲など管弦楽にも同様の音楽が聴かれます。もっと後期と思われるこちらの曲など、
Giovanni Battista SAMMARTINI SYMPHONIE EN RE
管の使い方など古典派らしい管弦楽法も出来上がっているようですね。
グルックと同時期のオペラ作曲家でニコロ・ピッチンニがいます。ピッチンニは周囲の企みでグルックと対立させられ、同題材のオペラ「タウリスのイフィゲニア」を同時上演に向けて書くことになったそうで、その序曲です。
Piccinni: Iphigénie en Tauride - Overture
これを聴くとすっかり古典派完成という雰囲気ですね。

サンマルティーニよりさらに遡ればヴィヴァルディのシンフォニアに繋がるでしょう、三楽章でソロ楽器は現れず、合奏体のみの曲です。またコレッリをはじめとするコンチェルト・グロッソのトゥッティとソロ群が交互に作りだすシンフォニックな響き、これも交響曲へと繋がるとされます。

category: その他・古典派

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J.C.F.バッハの交響曲  

Bach's sons、今日はヨハン・クリストフ・フリードリヒ・Bach(1732~1795)です。
バッハの末から2番目の男児、ハイドンと同年生まれという点も興味あるところ。音楽は最初父に学び、ライプツィヒ聖トーマス教会の附属学校に進む。作風は兄カール・フィリップ・エマヌエルの影響をうけた時期を経て、イタリア人作曲家や弟J.クリスティアンなどからイタリア・スタイルも身につけ、三楽章の交響曲を書き、後期には四楽章となってハイドンのスタイルに近いとのこと。
過去に入手して保留してあったCDを思い出して聴いてみました。
Burkhard Glaetzner:指揮、Neues Bachisches Collegium Musicum
1992年録音、BERLIN Classics

j c f bach sym

1.Symphonie Bs-dur HW 1/20
2.Symphonie Es-dur HW 1/10
3.Symphonie C-dur HW 1/6

1曲目、変ロ長調が4楽章の作品で第一楽章は付点リズムの荘重な序奏を持ちます、主部は颯爽とした第一主題で始まり、かっちりとした構成感はハイドンと共通する趣味を感じます。クラリネットを含む木管の活用が目立ちます。折り目正しく進む中、展開部にぐっと聴かせる閃きがあります。
第二楽章はロンド形式ですが、変奏形式に代る位置づけで趣味はハイドンの緩叙楽章を彷彿とさせます。
メヌエットは装飾的旋律で親しみやすい、トリオでもあまり雰囲気を変えず、木管に歌わせます。
終楽章は弾むようなテーマのロンドで、ソナタ形式の枠組みはないようだが、後半に展開部に相当しそうな短調部分があり、ぐっと引き付けます。
J C F Bach: Symphony in B flat Major

2曲目変ホ長調と3曲目ハ長調は3楽章の作品で、ぱっと聴いた感じ、これらのほうが板に付いた作風に思えます。ジョヴァンニ・バティスタ・サンマルティーニに始まるイタリアのシンフォニア、さらにはグルックの管弦楽曲を思わせる、軽快で上品な急楽章、悲劇味をおびた短調の緩叙楽章はなかなかのもの。
Burkhard Glaetznerの演奏は堅実で弦楽が味わい深いです。

category: Sons of Bach

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ミヒャエル・ハイドン:ミサ曲「聖ウルスラ」  

過去にレクイエムを取り上げた、R.キングによるM.ハイドンの2枚組ですが、もう一枚ミサ曲「聖ウルスラ」MH546を聴きました。
sop:キャロリーン・サンプソン ほか ロバート・キング指揮、キングス・コンソート&合唱団

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まずCD1のレクイエムを聴いたときは圧巻でした。第1曲のIntroitusからして、掛留によって二度上の音が重なる響きを繰り返す深淵さには虜になります・・さすがに名曲と認識されているようで、このような映像もネットで見られるほど。 Michael Haydn Requiem C minor Finnish RSO

CD2のミサ曲「聖ウルスラ」は1793年に作曲され、M.ハイドン56歳頃の作品です。レクイエムが34歳頃ですからだいぶ後年の円熟期でしょう。第1曲Kyrieのとても優美な旋律、すんなりと耳に入ってきます、C.サンプソンのsopも心地よい。Gloriaは8:44の規模、合唱、ソロにオケ・パートも充実して切れ味も持ち、クライマックスを置きます。tpの聴かせどころもあり、timpとのコンビで引き締めます。参考:Missa Gloria
Credoは3部に分かれますが、終りのEt resurrexit tertia dieが素晴らしい。Sanctusは穏やかですが後半でアレグロになりまた明るく盛り上げる。Benedictusはtpが心地よく優美な前奏、続いてsp独唱が美しい旋律。
終曲Agnus Dei、モーツァルトにも出てくるような慈愛に満ちた曲で、Douna nobis pacemを続けて盛り上げ、終結は弱音にして静かに終わるセンスの良さ。

旋律美だけ取っても明らかに普遍的価値をもつ作品で、今日演奏される頻度が有名作曲家達と桁違いに少ないのは不当と言えるでしょう。モツ・レク10回なら、ミヒャ・レク8回はあってもおかしくない・・M.ハイドンは勤勉ではあったが野心家ではなかったせいか、目立たないけど、このような声楽曲では兄ハイドンを越えているし、モーツァルトとも対等な位置に思えます。人耳を引く技巧的な遊び心は控えめですが、真っ当な音楽として一流でしょう。

category: M.ハイドン

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C.P.E.バッハ:フルート協奏曲Wq168 etc  

ちょっと流れを変えて、今日はThe sons of Bachより、一番の大物カール・フィリップ・エマヌエル・バッハのフルート協奏曲です。過去にもK.ヒュンテラー&T.コープマンの全集をちらっと取り上げましたが、現在も最高の名演でしょう。
今回はレイチェル・ブラウン:flトラヴェルソ、ロイ・グッドマン:指揮と通奏低音、ブランデンブルク・コンソートによる、イ長調Wq168、ニ短調Wq22、ト長調Wq169、3曲のアルバムです。まず、このhyperionの録音がいいです。くっきりと鮮明でガット弦らしさ、トラヴェルソの楽器の個性まで聴けて、響きを味わってしまいます。ブラウンのトラヴェルソは木質のややくぐもった音色、グッドマンはチェンバロやフォルテピアノでいつもながらセンスの良い通奏低音を演じます、古雅な響きで、演奏は冴えわたります。

c p e bach fl

一曲目:イ長調Wq168
第一楽章、軽快な基調ですが、そこは多感様式、一筋縄では行きません、調の移り変り、ppから突然のff、なにが飛び出してくるか予測できない、言い換えれば聴きどころいっぱいです。曲自体が変化の細かいデュナーミクを要求しているようで、気が抜けない感じですね。
第二楽章、一変して短調のゾっとするほど暗く寂しげな弦の前奏、flは孤独の弱音、先行きの見えない道を進む中、突然ffの疾風が襲ったりします。深い、弟達も多感様式を書いていますが、ここまでいってません。
第三楽章、快活で明るく、しかし平穏に進むことはありません。

二曲目:ニ短調Wq22
エマヌエル・バッハの短調作品中でも特に、現代ウケのよい曲でしょうね。グッドマンのバックは弦楽にホルン2本を加えた版です。このホルンとグッドマンのフォルテピアノがダイナミズムを加え引き締めます。
第一楽章、アレグロですが急がずじりじりと緊張を保ちながら進みます。
第二楽章、長調で涼風が穏やかにそよぐ、しかしちょっぴり不安要素も聴こえる。緩叙楽章でもフォルテピアノは分散和音や旋律で心地よく間を繋ぐ。
第三楽章、短調に戻り、多感な変化が疾風のように突き進む、これぞ圧巻ですね。弦のエッジを立てたトレモロが痛快、ホルンとフォルテピアノが響きを補強し、flが鮮やかに駆け抜けます。

三曲目:ト長調Wq169
第一楽章、快調です、時折流れを止め考え込み、また快調に、この変化がいいです。
第二楽章、短調となり、Wq168とはまた一味違った悲哀感ですが雅でもあります。
第三楽章、一段と快活、弦が演奏する跳躍が連続するパッセージをそのままflが模倣しますが、鍵盤ならともかくトラヴェルソには難技巧でしょう、みごと快活に演奏しきっています。

category: C.P.E.バッハ

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O.スウィトナー:ベートーヴェン交響曲「運命」  

スウィトナーは昔からN響番組でその指揮姿はお馴染みでした、がTVのスピーカーからではそのサウンドの特徴というのは聴き取れませんでした。DENONの優れた録音が出るようになり、ようやく他の指揮者にはない魅力がわかるようになりました。スウィトナーはドイツの伝統を引き継ぐ指揮者ですが、どんな作品も"美しい管弦楽″とすることが大前提のように演奏します。近年のピリオド系のオケを聴いたあとでも、すんなり耳に入ってくる晴朗な演奏、各々の楽器が余裕をもって鳴る範囲でバランスを取り、その中で音楽表現をする。

sui be 5

第一楽章、開始の動機からスウィトナーらしい清潔音でフェルマータを控えすんなりと行きます。弦群と木管群の対等なバランス、よく溶け合いながら木管も余裕をもって歌います。弦は涼しげでも、そっけないわけじゃない、味わい深い歌いっぷりです。vl群が強烈じゃない分、コントラバスやtimpの繰り出す量感が効いてピラミッド・バランスの響きが良く、ブラスも爽やか、timpも品のある明確な鳴りで引き締め、心地よい。インテンポでニュートラルな演奏、何度でも味わおうという気になります。
第二楽章、美しい弦と木管の歌い継ぎ、爽快なブラス、申し分なし、第一楽章とエネルギー感は変わらないほどの表現。ブラスのファンファーレに伴うtimpが連打の最後のくくり音をぴたっと決めているのが印象的。
第三楽章、低弦と木管のテーマの後のホルンが美しい、思い切り弱音表現がなされ、クレシェンドは抑えて抑えて、最後で盛り上げる。コントラバスのパッセージに始まり高音部へと対位法的に引き継ぐところ、コントラバスはさすがに深々した魅力を聴かせ、涼しげな高音へと移る。ピチカート部分から最後まではとても弱音、しかしDENON,PCM録音はここでも見事に音場の広がりを聴かせる。
終楽章、期待どおりの見事なブラス音で始まり、総奏の中でも木管の動きがくっきり聴こえる。どっしり決めるところは決め、弱音でも聴かせるべきパートを浮かび上がらせるバランスコントロール、神経の細やかさを感じさせます。一方でアンサンブルがぴたっと揃わない不器用そうな部分もあり、そこは人間らしい味わいに感じるんですね。終結部、あまりの熱血演奏には疲れますが、スウィトナーは適度に加速し、踏ん張るような力みなく、さらりと終わります。

category: ベートーヴェン

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