Micha クラシックとリュートの楽しみ

クラシック音楽とリュート、自然・科学の話など

MAK:テレマン「水上の音楽」  

アルヒーフのLP盤は銀のレーベルを見ると気分も引き締まり、じっくり針を下ろして聴いてしまったものです。しかし後期には光沢のないグレーのレーベルになってしまい、ちょっと残念。
以前にもちらっと取り上げたラインハルト・ゲーベル指揮、ムジカ・アンティクヮ・ケルンによるテレマンの水上の音楽「ハンブルクの潮の満干」ですが、デジタル音源のLP盤の頃ですから、当然グレーです;
新しいカートリッジAT-DS3で聴き返してみました。

telemann wasser1
telemann wasser2

このLP盤は写真のように内周いっぱいまで音溝が刻まれており、音量レベルも高いものです、今までのカートジッジでは最後近くは音がザラついて聴きづらかったのですが、AT-DS3は最後までクリアーにトレースして音を拾いあげますvこれでアナログ盤再生問題は解決、音質云々の前にこういうのが望みでした。
さて、ゲーベルの演奏は古楽奏法を極限まで強調した現代的演奏と捕えていましたが、テレマンに関しては曲の魅力に対して効果的、「ハンブルクの潮の満干」も今までのところ最も気に行ったものです。これが終曲まできれいに聴けるのは嬉しい。序曲はグラーヴェに始まりますが、ここは思い切りゆったりと引っ張って演奏します、チェンバロの通奏低音が和音を見事に散りばめて聴かせます、同音連続のきわめて簡潔なフーガ主題のアレグロに入るととても闊達でこの対比がじつに心地よい、グラーヴェに戻ってまたアレグロを反復する、やはり反復は聴きたいですね。LP盤片面に納めやすいよう反復省略の演奏が多いところきっちりやっているので、当盤は内周いっぱいなわけです。続く舞曲はいずれも表題をもつもの、例によってテレマンは民族音楽から影響を受けた作風も取り入れ、斬新な楽しさを聴かせていきます。ゆったり聴かせる楽章、切れ味よく聴かせる楽章、ゲーベルの演奏は対比があり、第6曲、テンペスト「嵐:吹きすさぶアエロー」は圧巻です、嵐とはいえ緊迫した短調ではなく、長調で書かれたおっとりした雰囲気もあり面白い。

category: G.P.テレマン

tb: 0   cm: 2

カペラ・コロニエンシス:CLASSICAL SYMPHONIES  

ハンス・マルティン・リンデ指揮、カペラ・コロニエンシス(古楽器)によるCLASSICAL SYMPHONIESと題された古典派の演奏される機会の少ないであろう人達の交響曲を集めたアルバムを取り上げます、こういうアルバムは好きですv
カペラ・コロニエンシスはケルン放送局によって1954年に創設された、古楽器オケで、当初のメンバーはDHMにより創設されたコレギウム・アウレウム合奏団とほぼ同一だそうです。このアルバムが録音された80年代中頃のメンバーの写真を見ると古参の年輩奏者と若い奏者が半々くらい、世代交代している様子が伺えます。昨日のコレギウム・アウレウムの演奏から明らかに近年のピリオド奏法、ピュア・サウンドに移行しています。
指揮のハンス・マルティン・リンデはリコーダー及びフルート奏者として古くからお馴染みで、楽器のほかバリトンの声楽家でもあり、指揮もする多芸の持ち主です。かつてはK.リヒターやA.ヴェンツィンガーらと共演していたH.M.リンデの演奏指向も時代に則した変貌がありますが、同じリコーダー奏者のF.ブリュッヘンの指揮とは対極的とも言えますね。ブリュッヘンに限らず近年の多くの古楽演奏の主流とは違い、リンデは急楽章で急速なテンポは取らず、また鋭い表現は避け、旋律の表情を丁寧に聴かせます、一瞬のことで聴き取れなかった装飾的な走句も丁寧にはっきり聴かせ、こういう曲だったのかとよく解ります。

gossec etc

フランソワ=ジョセフ・ゴセック(1734~1829)
交響曲変ロ長調 op6-6

名前はよく聞く作曲家ですが詳しくは知りません。ベルギー生まれでフランスで活躍した人で、95歳の長い生涯はバロックの終りからロマン派の最初期に渡っています。ゴセックはフランスでハイドンの作品を指揮して、ハイドンを知らしめた一躍もになっているそうです。さてゴセックの交響曲を一曲聞きますが、弦楽のみで5つの楽章からなります。軽快な第一楽章を聴いた印象はG.B.サンマルティーニ、C.W.グルック、J.C.バッハらと同じ系譜を感じます。雅やかな第二楽章に続き短いラルゴの第三楽章が入りますが、続くフーガ形式の第四楽章の前奏のようです。最後は雅びなメヌエットⅠ、Ⅱで終わります。第四楽章の真っ当なフーガは見事で、流石に時代を大跨ぎした作曲家らしいと言えるかもしれません、全楽章フランス趣味でしょうか、気品があり魅力です。

ヨハン・バプティスト・ヴァンハル(1739~1813)
交響曲ト短調

今や有名作曲家ですね、ここで演奏される交響曲ト短調もハイドンらの疾風怒涛とは一味違う、激しさよりも旋律美の味わいが特徴のヴァンハルらしい作品です、リンデの演奏の特質と相性がよく、最も美しいヴァンハルを聴けたという印象です。第二楽章がヴァイオリンとヴィオラの二重協奏曲風になっているのも聴きどころ。メヌエット、終楽章も魅力的です。またこのアルバムの中で唯一バロック的要素のない純古典派的作品です。

アントワーヌ・マオー(1720頃~1785頃)
交響曲ハ短調

この作曲家については情報が見つからずわかりません。
第一楽章はフーガの書法ですが美しく深みがあります、第二楽章はシチリアーノのリズムによる和声の美しい楽章、第三楽章はブーレーのリズム、バロック組曲から三つの楽章を拾いあげたような作品でもありす。

ヨーゼフ・マルティン・クラウス(1756~1792)
交響曲ハ短調VB142

最後は傑作で締めくくります。クラウスの交響曲では最も人気の作品でしょう。
第一楽章、序奏からしてバロック的な対位法で深い魅力を聴かせます、アレグロの主部の演奏もリンデは急速な切迫感より、涼やかな旋律を大事に他の演奏とは異なる魅力を聴かせます。引き付ける力はあり、長い休符の溜めが効きます。弦と木管の撫でやかに溶け合う響きがいい。白夜の地平線から聴こえてくるような心地よくクールな雰囲気でもあります。
第二楽章、アンダンテ、ここも旋律をじっくり聴き進んでいかせる、味わい深い強弱法と弦、管の涼やかな響き、ピアニッシモのところが引き付ける。
第三楽章、もっともエネルギシュな楽章ですが、ここもあまり急速にせず、旋律は丁寧に、リズムを刻むバスをくっきりさせながら、じわじわと高揚感に誘う演奏です。先日のコンチェルト・ケルンとは対極的でしょう。

全曲聴き通して、エネルギー感に欠けるという感じはありません。他の古楽演奏とは違う感覚で充実した演奏を聴き終えた印象で、美しく爽快です。

category: 古典派

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コレギウム・アウレウム:バッハ協奏曲  

LP盤続きです;
harmonia mundiの隣にBASFのマーク、懐かしいですね。超久しぶりに聴いてみた、古楽器合奏団のコレギウム・アウレウム合奏団によるJ.S.バッハ、ヴァイオリン&オーボエ協奏曲ニ短調BWV1060とフルート、ヴァイオリン&チェンバロ三重協奏曲BWV1044のカップリングです。これもアナログ最盛期の時期ですね。録音は最新盤CDを聴いた後でも不足感なく、すっきり見渡せるような音場です。

vl:フランツヨーゼフ・マイアー ob:ヘルムート・フッケ
fl:バルトルト・クイケン cem:ボブ・ファン・アスペレン
録音:1976年
bach co au

コレギウム・アウレウムといえば、当初はレコーディングのための古楽器を用いた合奏団として結成されたそうですが、その後公開演奏の活動も広く行い、私も日本での公演を聴きに行ったものです。
古楽器は用いるものの演奏はピリオド・スタイルではなく、耳馴染んだモダンな解釈によるもので、G.レオンハルト以後の本格的古楽演奏が広まるまでの橋渡し的役割だったと言えなくもないですが、あらためて聴くと大変味わい深い名演を行っています。モダン指向とは言っても演奏解釈だけのことで古楽器を手にする以上、それが自然に美しく鳴る弾き方をするはずです、強引にモダン楽器的に弾くことは考えられないですね。
急楽章は速すぎるテンポを取らず、音が立ち上がり豊かな余韻を味わう時間があり、こういう雅びな味わいもあって良いものと思います。その後の急速でスリリングな古楽演奏も魅力ではありますが。
A面:ヴァイオリン&オーボエ協奏曲ニ短調BWV1060はコレギウム・アウレウムのメンバーであるマイアーとフッケによる息の合った演奏、軽くヴィブラートをかけたマイアーのvlは上手く味わい深い、またバックの弦楽が清涼感のある響きで重なる、古楽器ならではの響きにモダン的なしっとりした味わいが融合した感じでわるくない、じっくり味わえます。
B面のフルート、ヴァイオリン&チェンバロ三重協奏曲イ短調BWV1044ではその後の古楽界を率いる若手、フラウト・トラヴェルソのB.クイケン、レオンハルトの系譜にあたるチェンバロのB.van.アスペレンが加わり、二人はまさしく古楽指向の演奏です、そこにマイアーのvlが寄り添います。じつはBWV1044の演奏としては今でも最も気に入っているものなんです。このLPのB.クイケンの演奏でトラヴェルソの真の魅力を初めて味わったのですが、今聴いても名演です、落ち着いたテンポを取っている分、ノン・ヴィブラートの長く引くトラヴェルソをたっぷり聴けますし、この曲の翳りをおびた雰囲気が一段と引き立ちます。

category: J.S.バッハ

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audio-technicaカートリッジ:AT-DS3  

もう一個興味があって注文したアナログ・カートリッジ、audio-technicaのAT-DS3、お金をかけずに楽しむのが前提なのでこれも実売価格5000円内です。

at ds3
audio-technica:サイト

梱包はプラ・ケースでなく発泡スチロールに収められた、マニア向けというより業務用といった感じですが、これは優れもの。VM型で針圧が2.5~4.0gの範囲、標準が3.5gと高いのが意外で、昨年買った同社AT100Eとはタイプが違いそうです。なんと、うちのプレーヤーは3.0gまでしか設定できない;で、3.0gでいきましたがOKのようです。
さっそく聴き馴染んだLP盤を試聴、とても詳細に音を拾うようで、シリコンとブチルゴムの2重ダンパーと高めの針圧による追従性の効果か、ぴたり音溝に吸いついたようで、盤の内周部に至っても殆ど歪まず緻密に音を拾います、ここがいい。音質は飾りっ気なく、武骨にそのままの音を再現する感じです。よって音盤そのものの良しあしにかかってくるようです。

試聴盤はまず、ベルンハルト・クレー指揮、プラハ室内O、ハイドン交響曲6「朝」7「昼」8「晩」 1974年、D.グラモフォン(録音:スプラフォン)
hay 6 7 8

B.クレーによる名演でアナログ最盛期のものですが、トレース能力の効果か、こんな良い音で入っていたのか、と目が覚める感じ、木質の心地よい残響音に包まれた「朝」の清々しい弦の響き、くっきり浮き立つ木管、メヌエットのトリオではチェロの弓を離した後の余韻が今まで以上によく聴こえる。「昼」の第二楽章は最も内周に入っていますが、vlのレシタティーボがクリアに味わえる。

デジタル・マスターのホグウッド&AAM盤、ハイドン交響曲104「ロンドン」のLPもかけてみました、これは同演奏のCD以上の味がある・・CDが生の葡萄ジュースならLPは少し発酵したような味わいに聴こえるんですね(笑)これもカートリッジという音質特性に関わるプロセスが加わった面白さでしょう。

もう1枚、D.グラモフォンのF.フリッチャイ、BPOのベートーヴェン交響曲7番も聴いてみました、ベームの演奏とは異なる美質のじんわり流線形の味わいの弦、浮き立つ木管、深い低音、この盤には相性いいです。

このカートリッジがあれば、LP盤の中古をあさってもいいな、という気になります。
今日は岐阜でも雪が舞い、この冬一番の寒気、名古屋の大須あたりの中古レコード店を覗きに出かける予定でしたが、あまりの寒さで延期しました;失くしてしまったお気に入り盤が再び見つかるといいんですが・・

category: オーディオ

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S.ラトル:ハイドン交響曲86番  

このところ、以前に取り上げた音盤の聴き返しもしています。
思えばラトル、バーミンガム市響の86番についても演奏については詳しく書いていませんでした。このCDは十数年前にアメリカのアウトレット・ショップから取り寄せて、粗雑にしまいこんでありました。86番に目覚めた?音盤でもあり、標準的な秀演と思いこんでいましたが、トップ・クラスの名盤に浮上しました。演奏は先日の22番「哲学者」であらためて気付いた美質で聴かれます。
弦の最弱音は"極薄の絹地"の感覚で、強奏になるに従って絹地を何層も重ねていくような響き、あくまでしなやかでゴワつく響きは聴かせない、強弱表現は曲線的にデリケートに起伏をつけながらも、ここぞの所でズバっと段差を付けたり、スパっと音を切ったり、曲の推移、オケ・バランスの捕らえ方が極めてセンス良い。優れた音響デザイナーのように曲を仕立てていきます。合奏の上手さがあまり前に立って聴こえると嫌味にも感じますが、そういうところもなく自然で、上手さは空気のような存在です。

hay 22 rattle
ハイドン 交響曲第22番「哲学者」、102番、86番
サイモン・ラトル指揮 バーミンガム市交響楽団


テンポは全楽章、最も自然なところでピシっと決めています。
第一楽章、序奏は木管をよく聴かせながら弦はしなやかに始め、弦のppに入るとぐっと弱美音にして引き付けます、その後のトゥッティがほどほどの音量ながら壮大に響きます。主部の入りも弱音に押えて、トゥッティとの対比を大きく聴かせます。強奏が続くところも上手く起伏をつけて一本調子にしません。金管とtimpもピタっと決め、重みの付け具合がいい。展開部から再現部にかけても、じつに味わい深い推移を聴かせ、細かく味わえばそれに応える、美しい"入れ子"のような演奏ですが小細工をした感じがせず、ごく自然な仕上がりです。
第二楽章、この楽章はまさにS.ラトルの美質でじっくり聴けます。休符で間を置いては同じ上向音で始める、次は何が出てくるか?と予測できないカプリチオですね。短調の弱美音のところが一段と幻想的で良いし、強奏がずしっと押し寄せる。彫りは深いけど耳心地よい響きで見事にまとめます。
メヌエット、くっきり自然、快活、これ以上やることはないでしょう。トリオをまたしなやかな弱奏で聴かせ、弦の響きが滑らかでオーボエと溶けあい、健康的な喜びにひたらせます。
終楽章、動機の開始はやはり美しい弱奏、快速でも一つずつのフレーズを丁寧に語り、句読点をきちんと付けながら進めていく感じ、また強奏部分は頼もしいくらい景気よく響かせる、もちろん弱奏はぐっと押え、ふたたび怒涛の響き、コントラバスのパッセージも力強くきめ、再現部、終結部はブラスも豪快にして見事な終わり方、終楽章ためにエネルギーが温存してあったような。

category: F.J.ハイドン

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Concerto Koln:J.M.クラウス 交響曲変ホ長調  

今日は久しぶりにコンチェルト・ケルンによるヨゼフ・マルティン・クラウス(1752~1792)の交響曲集を聴き返してみました。
モーツァルトやクラウスが他界した30歳代半ばという年齢は、ハイドンが疾風怒涛期に入り、まさにこれから傑作群を次々生み出していく頃です。クラウスにしてみても、これから大成しようという時に亡くなってしまったんでしょうね。ハイドンがモーツァルトに匹敵する天分を認めたと伝わるだけに惜しいです。

kraus co ko

交響曲 変ホ長調(1783)VB144
クラウスは短調交響曲が魅力ですが内容的にはこの変ホ長調が最も充実した曲かもしれません。
第一楽章、アレグロ、序奏を置かず、確固とした動機で始まります。ベートーヴェンで言えば「英雄」に相当しそうな颯爽とした推進力を持ちます。コンチェルト・ケルンは弦や木管のしなやかな旋律線も聴かせながら、バスのリズムや内声弦のトレモロをキビキビ切れ味よく引き締めます。第二主題は穏やかでゆったりフルートが入り気分を和らげる。提示部の終わりは明るく高揚させます。短調の展開部の入りで弦楽の一音がぐいっと引き付けますが、コンチェルト・ケルンの響きがじつにいい、緊張の始まり、第一主題後半を用いぐいぐい行きます、展開部後半は第二主題で明るく。再現部は今までを回想する感じにまとめますが終結部の高揚感がまたいい。
第二楽章、ラルゲット、短調の悲歌的な主題がコンチェルト・ケルンの涼やかな弦で始まる、オーボエが加わり繰り返す、一度聴いたら忘れない普遍的な名旋律だと思います。中間部は長調主題に変わり、オーボエが取りますが、これも表情が美しい。また始めの短調に戻る三部形式。
第三楽章、アレグロ、この楽章が優れもので、弦による凝った対位法で始まる、やがてトゥッティの快調な部分に入る、このあたりが第一主題群でしょうか、やや構成は複雑に思います。快活な推進力で進め、コンチェルト・ケルンはキレ抜群、提示部を反復します。展開部の入りも緊迫感があり、そのまま突き進む、やがて冒頭の対位法をちょっと再現するが引きずらずトゥッティが切り込む、そしてまた対位法をこんどは複雑、念入りに聴かせる、ここは見事。再現部に当たりそうな部分も聴きどころをいれて、スパっと終結する。

なお同盤に入っている交響曲ハ短調(1783)VB142も名演、これはクラウスがハイドンに献呈した作品で、嬰ハ短調(1782)VB140からの改作だそうですが、第一楽章は原曲よりだいぶメロディックで柔和な主題になっているため、演奏によっては緊迫感が削がれるところ、コンチェルト・ケルンはバスのリズムや内声弦のトレモロを鋭くきめて緊迫感を出します。

ハイドンの初期~中期の交響曲をじっくり味わえれば、これらクラウスの作品もきっと聴きごたえあるでしょう。クラウスはvan ワースのような人に最高の演奏で録ってほしいなあ・・

参考:Symphony in E flat major VB 144
P.スンドクヴィスト、スウェーデン室内O
1st:Allegro
2nd:Larghetto
3rd:Allegro

category: J.M.クラウス

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M.マーフィー:ハイドン&フンメルtp協奏曲  

トランペット協奏曲の名作といえば、後にも先にもハイドンとフンメルの変ホ長調2曲しかない、古典派音楽の明快さがtpにとっても頂点かもしれません。それだけ多くの演奏がしのぎを削っています。ソロ・トランペットについては必ずしもM.アンドレ級の完璧さを求めたいとは思いませんが、技巧的に多少大らかでも音楽的味わいのあるソロ・トランペット、それに充実したバックのオケがあれば満足です。今までに聴いたこの2曲でいつも気にしているのがバックですね;協奏曲はすべて同様ですが。
今日の1枚はモーリス・マーフィー:tp、ロバート・ハイドン・クラーク指揮:コンソート・オブ・ロンドンです。

murp tp con

マーフィーのtpは十分、上手すぎるくらいでしょうね音色は金管らしい光沢が基調でギターで言えばブリッジに近い所を好んで弾くようなクッキリした感じです。そしてクラーク指揮のオケがいい。何気なく聴こえるオケが味わい深いのにはまず弦楽、厚すぎない響きでボウイングの妙を聴かせます、基調として音の開始は柔らかく立ちあげ、すっと細める、流線形の一音一音を弦全員が息合わせて奏でます。そこに木管が相性よく重なり、エネルギー推移にふさわしい力感で金管やtimpが鳴り響く、すっきり見通し良いオケです。

ハイドンtp協奏曲、チェンバロの通奏低音が小さいけどくっきり聴こえてくる、
第一楽章は速めのほうでしょう、前奏で健康的な喜びに乗せてくれる、光沢を帯びたtpが始まる、お馴染みの快調な出だしです、目立たないけど味わい十分な演奏でオケがさりげなく支えています。オケのtpもいいですね、強弱表現に新たなものも聴かせてくれます。
第二楽章、ハイドンの書く旋律には単に暖かい以上の感動を呼ぶものがありますが、この楽章もその一つ。演奏に特徴づける余地はなさそうです。遅すぎないテンポで素朴に、マーフィーのtpも曲を大事に演奏します。
第三楽章、快活で軽やかながら、力感の表現が上手く進められ第一楽章同様に味わいのある演奏。

次のフンメルtp協奏曲が素晴らしい、こちらでは通奏低音はオルガンを使い、オケの魅力がハイドンを上回って冴えています。フンメルのtp協奏曲では最高かも。
第一楽章、よく整いながらも聴き手を縛るような力みがなく、先に書いたような弦楽をはじめとする味わいをさりげなく聴かせ、快調な気分で運びます。timpを伴ったダイナミズムの入れ方も絶妙。
第二楽章は古典派から一歩踏み出た内容が魅力ですが、ここはしみじみと聴かせます。当時tpでこんな短調の感傷的な旋律というのは異例だったかも?ちょっとイタリア風で今ならエンニオ・モリコーネの映画音楽にありそうな?・・
楽章の終りは次の楽章の導入でもあります。
第三楽章、リズム的に凝った楽章だと思いますが、曲芸的にならず、ほどほどのテンポでゆとりと柔軟さを帯びながら見事にきめていきます。

category: 古典派

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グッドマン:ハイドン交響曲101番  

コンバッティメント・コンソート・アムステルダムの耳心地よい室内楽版の交響曲「時計」を聴いちゃったあと、オケ演奏で対抗できるものはないか、いくつか聴きました。
昨年、102番中毒状態の頃取り上げた、ロイ・グッドマン指揮、ハノーヴァー・バンド同盤のもう一曲、101番がかなり良いです。何度か聴いているはずなんですが、ボンヤリ聴いていたんですね;ふっ切れた気分にしてくれる快演で、しかも室内楽的な緻密な味わいもあります。

hay 102 good

弦楽、木管群、金管、timpがそれぞれ対等なくらいのバランスで、互いの響きで埋め合うことなく見通しの良い声部のやりとりとして聴こえ、オケらしい痛快な力感も聴かせる演奏で、録音もうまくいっています。この録音ではトランペットの強奏が透明に輝きます。

第一楽章、7:36、序奏は引きずらずさらりと行きますが深みはあり、通奏低音のフォルテピアノがリズムを取ると緊迫感がでます、主部は第一主題、第二主題ともにキビキビした同系主題で音階的な動きに終始する、プレストらしいテンポで快活に行きます。弦は常に緻密なデュナーミクを弾き、弱奏はぐっと下げ、強奏で金管、timpが思い切りよく壮大にします。力感の推移がとてもいい。
第二楽章、6:29は結構速めですが遅すぎるよりはいいです。弦と木管だけの演奏のあと、短調の総奏がきますが、ダイナミックで切れ味よいです。三部形式を終えた後、全休止を置いて転調した後続部に入ります、終結近くのトランペットが豪快、第一楽章以上です。
メヌエット、6:41、これも速いですが3拍子を1拍で捕える感覚にハマります、このテンポなら長大なメヌエットなどと言われないですね。しかしあっさり進めてしまうわけじゃなく、聴かせどころはあります。速いながら弦や木管は柔軟な表情を聴かせ、ティンパニは弱奏でも、主音、属音の音程がよく聴こえます、ホルンも1本が影のように低音の持続音を吹いているのも聴こえる、隠れがちな技を見通しよく聴かせ、ハイドンを詳細にオケで聴かせるのはデリケートなことだとあらためて知らされます。
終楽章、4:23、速めですがよくあるテンポです。ふっ切れた感じながら丁寧にやっている。トランペットも豪快なら、ホルンも対等に鳴らす、これならtimpも強打するしかない、窮屈さのない手足を思い切り伸ばしたような快演で終わります。モダン・オケでもこういう演奏はできるでしょう、T.ファイもきっとこんな感じに・・

先日のコンバッティメント・コンソート・アムステルダムもそうですが、「こんな演奏だった・・」と思い込んでいたのが、あらためて聴いてみると目の覚める好演だったりするものが多々あります;聴き直ししないと・・

category: F.J.ハイドン

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ハイドン交響曲100、101番(室内楽版)  

これも長い間ラックにしまいっぱなしだったCDです。
ヨハン・ペーター・ザロモン編曲、ハイドン交響曲100、101番の室内楽版、演奏はヤン・ヴィレム・フリエンド(音楽監督)、コンバッティメント・コンソート・アムステルダム、モダン楽器によるピリオド演奏で注目していたものです。随分前に購入し、初めて聴く感覚ですが、とても良くあらためて聴き入りました。単にオーケストラのミニチュア版でなく、美しい室内楽として演奏しています。
編成は弦楽四重奏にフルート1、フォルテピアノ、この演奏ではコントラバスを加えています。パート演奏は旋律楽器達に振り分け、フォルテピアノは通奏低音の役割です。
不思議なほど物足りなさがありません、実際オーケストラの総奏音には遠く及びませんが、巧みな演奏の推移で総奏のダイナミズムを暗示させられるんですね。これはギター1本でも可能なことです。またフルート1本加わることで十分な色彩感が出ます。

hay 100 101 cca

100番「軍隊」
第一楽章、じつに美しい序奏で始まります、何しろ各パート1人ずつ、パート音が明確で、合奏体では表現できないレベルのアーティキュレーションがじっくり聴けます。主部は速めで快活、これも室内楽ならではで、細やかな表情を聴かせます。フルート1本で様々な管楽器の代役をします。オーケストラでは気づかなかった音の構成に気づきます。
第二楽章、聴き馴染んでいながら、vlとflの上手さであらためて旋律美を味わえます。例のトランペット・ソロのところはvlが鋭いアタックで模倣しますが、ほんとにtpのように聴こえます。timpの連打はチェロのトレモロで表現します。
メヌエット、じつに軽やか、上品にいきます。
終楽章、あまり急がず、弦のしなやかな表現を入念に室内楽的妙技を聴かせながら進めます。

101番「時計」
第一楽章、これも序奏が魅力、ピュア・サウンドです、溜めを持たせじっくり。主部は快速でキビキビ音を粒立てますが、弦の柔和なデュナーミクが気品を失わず、常に美音で表現されるのが心地よい。大編成オケのガサついた演奏を聴くよりはるかに良いかも;
第二楽章、ファゴットが無いが弦のピチカートで開始の雰囲気は十分、vlのテーマの歌い出しがじつに心地よい、ここでも第二楽章の旋律美をあらためて味わう気分です。上手い室内楽の勝利。短調の魅力なところも晴朗な響きでしみじみ聴かせる。
メヌエット、快調なテンポで軽やか上品。トリオではflソロと弦楽が1回ミスコードを聴かせるがこれも原曲どおり、やや長大なメヌエットも長く感じない楽しさ。
終楽章、意外なほど落ち着いたテンポ、弦はおもいきり涼やかなレガートで弾く、ここはアーノンクールの演奏を彷彿させる、突っ走らず室内楽ならではの端正な味わいを聴かせていく、展開部のフガートはバロックの合奏協奏曲のような美しい響きで聴かせる、終結はかっちりと引き締めて終わる。この終楽章の演奏は絶品と言えるでしょう。

category: F.J.ハイドン

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ダントーネ:A.スカルラッティ 合奏協奏曲ほか  

もう一枚、オッターヴィオ・ダントーネ指揮&チェンバロ、アカデミア・ビザンチーナによる演奏、今日はアレッサンドロ・スカルラッティ(1660~1725)の合奏協奏曲6曲およびチェロと通奏低音の為のソナタ3曲のカップリングです。研ぎ澄まされたような美しい演奏と秀逸な録音でバロックの醍醐味を聴かせます。レーベルはかわってARTS

a scr con
コンチェルト・グロッソ(pub.London 1740)
1. No.1 F minor Greve-Allegro-Largo- Allemanda(Allegro)
2. No.2 C minor Allegro-Greve-Minuetto
3. No.3 F major Allegro-Largo-Allegro-Largo-Allegro
4. No.4 G minor Allegro ma non troppo-Greve-Vivace
5. No.5 D minor Allegro-Greve-Giga:Allegro-Minuetto
6. No.6 E major Allegro-Allegro-Largo-Affettuoso
チェロと通奏低音のためのソナタ
7. No.1 D minor Largo-Allegro-Largo-A tempo giusto
8. No.2 C minor Largo-Allegro-Piano-Presto
9. No.3 C major Largo-Allegro-Amoroso-Presto

1.~6.はA.コレッリの流れを組むコンチェルト・グロッソで、緩-急-緩-急の楽章で組むのが基本形でしょうが、定型にこだわらず適宜楽章の増減、入れ替え、舞曲の追加などがされています、これはコレッリも行っていますね。緩叙楽章の和声で魅了し、急楽章の緊迫したフーガ形式はお馴染みの配置ですが、霊感に富んだ曲はいくらあってもいいですね、A.スカルラッティはピカイチです。各楽章は長くなく、急楽章の中にも緩叙部分を置き、同じパターンを長く聴かせず変化に富み、聴き手を引きつけていきます。1.のF minorの第二楽章は同音が切れ味よく並ぶフーガ主題ですが、ダントーネは鋭いアタックで演奏し、低弦では打楽器も一緒に鳴っているかのような活発さを出します。緩叙楽章の弦のピュア・トーンによる和声はこの上なく美しい、装飾も巧みで反復の際にも走句を入れて繋ぐ。
7.~9.のチェロ・ソナタは4つの楽章で揃い、ソロ・チェロに通奏低音のチェロ、チェンバロ、アーチ・リュートで演奏しています。ソロ・チェロは軽やかな弾き方のノン・ヴィブラートで、1つのボウイングの間にふっくらとした強弱を持たせます、小味の効いた装飾を入れ、ヴィオラ・ダ・ガンバに近いような雅な感覚。アーチ・リュートが積極的に活躍、楽章によってはソロ・チェロに第二の旋律パートを加えたようなリアライゼーションで楽しませる。9.のC majorの終曲Prestoではソロ・チェロが沈黙しアーチ・リュートが代ってソロ・パートを弾くところがあり、原曲に指定はないと思われるが?、こんな即興もバロックには付き物でしょうね。

ちなみにアーチ・リュートはこんな楽器、
a lute
ルネサンス・リュート調弦でバス弦を追加したものです。

category: その他・バロック

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Van ワース:ハイドン交響曲86番  

新年取り寄せた第二弾、ギィ・ヴァン・ワース指揮、Ens.レザグレマンによる録音です。こちらもベルギーの優れた古楽集団とのことです。選曲がハイドンの82、86番とそそられますし、未知の古典派作曲家ルブランを紹介しているところも共感を覚えます。何気なく発注したのが大当りでした。

hay 86 waas
J.ハイドン
① 交響曲 第82番 ハ長調 Hob.I-82「熊」
ルートヴィヒ・アウグスト・ルブラン(1752-1790)
②オーボエ協奏曲 ハ長調
J.ハイドン
③交響曲 第86番 ニ長調 Hob.I-86
2007年 RICERCAR

1曲目、82番を聴いて印象的なのが、最近のT.ファイ盤を思わせる明晰な録音、会場に立ち会っているような生っぽいサウンド、音場の分解能が良く、tp、timpの打音が明確に聴こえ、引き締まります。演奏も最もお気に入りのタイプ。
第一楽章、ちょうどよいテンポで聴かせるべきパートをしっかり浮かばせ強弱の対比も明確、音をセンスよく切っておさめ、次に移る一瞬の間が心地よい。緊迫させたあとの弱音のレガートが爽快。展開部の構築感も申し分なく聴かせる。
第二楽章、アレグレットらしいテンポで歯切れよく進めます。穏やかな雰囲気のテーマですが変奏が短調に転ずると劇的に力感を込めます。ふたたび長調に戻ると愛らしく、を繰り返します。少し変化を入れて最初のテーマに戻り、終結部は一際明るい表情を見せて終わります。
メヌエット、きりっと気高い表情のメヌエット、固くなりすぎないよう柔軟な間を置きます。トリオも同じテンポでフレーズの終りでじんわりとリタルダンドします。
終楽章、副題の元であるユーモラスな動機で始まり、ちょうど良い快速感です。なんと言っても展開部が圧巻、緻密な内容と壮大な起伏を持ちます、そこは期待どおり申し分なく聴かせてくれます、かっちりした中にも柔和な表情も入れます。
2曲目、ルブランのオーボエ協奏曲は湧き出すような才気、では今一つですが、聴かせどころを持った秀作です。
3曲目、注目の86番に行きましょう。
86番は快速に演奏しても痛快な魅力が出ますが、落ち着いたテンポでがっちり構成を味わうのもまた良いです。ワースの演奏はブリュッヘンや鈴木秀美に近いがっちりタイプ。それが明晰な録音で緻密に味わえます。
第一楽章、8:52、序奏はピュア・サウンドで清々しく、主部はくっきり落ち着いたリズムを刻んで始まる、じわじわとクレシェンドを聴かせ、トゥッテイのダイナミズムもしっかり、低弦やtimpが凄みを持って押し出します。表現を細やかに聴かせ提示部をきちっと締めて終わり、反復に入る、この間がよい、一瞬のことが心地良いんですね。展開部もじっくりツボを押えながら進め、展開部の終わりを痛快にきめ、再現部に入る、この間もいい。
第二楽章、5:43、カプリチォ・ラルゴですが極端に遅くせず、彫りの深い表現で聴かせます、終番では快速感が出ることになり効果的です。
メヌエット、4:41、快活でメリハリをつけ、3拍子にすっきりした気分で乗せられます。トリオも同じテンポでさらりと行きます、このトリオの旋律は好きですね。
終楽章、6:37、第一楽章と同じくあまり急ぎませんがくっきりリズムを打ち出し快調さは十分です。きちっと折り目正しく緻密な表現で、展開部では壮大さを聴かせます。印象的なコントラバスの力強いパッセージがずっしり響き、終結もスパっと心地よく終わる。
アンサンブルも抜群で入念に仕上げられた隙のない演奏、2013年お気に入り盤間違いなし。
ハイドン音盤倉庫:Daisyさんは2011年に取り上げておられ評価は(+++++)、まったく同感です。

category: F.J.ハイドン

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O.ダントーネ:バッハ チェンバロ協奏曲  

こいつぁあ、春から・・っていうか、今年に入って届いたCDがいずれもハズレ無しで縁起がいい、2013年お気に入り盤にさっそく入るでしょうv
バッハのチェンバロ協奏曲の新盤がそろそろ欲しいと思い、選んだのがオッターヴィオ・ダントーネ:指揮&チェンバロ、アカデミア・ビザンチーナです。古楽演奏も時を経るごとに洗練され、不可欠な現代奏法の一つと言えますね。
イタリアの古楽集団、ダントーネのチェンバロにアカデミア・ビザンチーナの弦楽は各パート1人ずつ、音量バランスがいいという要素以上に、各パートがソロということで、バックが細やかな表情を聴かせるところが魅力です。長い一音の中の美しい強弱表現、クッキリしたアタックなど。

bach cem con dan
チェンバロ協奏曲 第2番 ホ長調 BWV1053
チェンバロ協奏曲 第4番 イ長調 BWV1055
チェンバロ協奏曲 第5番 ヘ短調 BWV1056
チェンバロ協奏曲 第1番 ニ短調 BWV1052
録音:オワゾリール、2007年3月31日-4月4日 ラヴェンナ 

1曲目の第2番 ホ長調はvlかその他の旋律楽器の為の協奏曲が原曲らしく、気品のある比較的長大な力作です。
第一楽章は速度指定なしで、ダントーネはあまり急ぐテンポは取らず、じっくり歩を進める快活さがこの楽章にふさわしく感じます。ダントーネは即興的妙技は控えめで堅実に弾き進め、バックと一体となって活き活きとした演奏に仕立てます。
第二楽章、シチリアーノは簡潔な美しさだけでなく、力作らしい深みを持っています。弦の撫でやかな演奏による和声も美しい。
第三楽章、アレグロは切れ味よいリズムで快活に、しなやかな気品も表現します。

2曲目BWV1055はオーボエ・ダモーレが原曲、3曲目BWV1056はvlが原曲、これらの急楽章は速めのテンポを取っていますが、それぞれ楽章が活きてくる感じです。

お目当ての4曲目第1番 ニ短調 BWV1052ですが、甘ったるさのない鉄光りのような曲相がじつにいい、古い演奏のカール・リヒターも独自の魅力ですが、ダントーネはこれまでにない魅力が聴けます。
第一楽章、快速ですが聴きなれないほどではなく、心地よい。ユニゾンの確固たるテーマで始まり、整然と弾き進むチェンバロにバックの弦が繊細しなやかな響きを奏で、ときに切れ味よく主張し重ねます。原曲はvlですが、同音異弦や近接音を交互に連続して弾くところなど、vl的な書法が鍵盤的にあえて変更されていないところが引き付けます、表紙写真はまさにそこを演奏している場面ではないでしょうか、二段鍵盤を使わず同鍵上で弾いているようで、このほうが切迫感がでます。楽章中の音楽性を漏らさず引き出そうという姿勢を感じます。
第二楽章、ここも瞑想的なテーマをユニゾンで開始、同音が2音づつ続きますが、1拍目と2拍目をほとんど繋いだようなレガートで2拍目は余韻のように奏でます(チェンバロは同音の2拍目を弾きません)、旋律の表情に応じくっきり区切るところもあり絶妙な表現です、これだけで脱帽、テーマは低弦が同じ表現で転調しながらも繰り返し演奏し、上手いアゴーギグのチェンバロと弦のしなやかな和声が乗っかります。これほど第二楽章を魅力に聴いたのは始めてです。
第三楽章、心地よく快速、切迫感を持たせながらも弦の余韻の響きも聴かせる品の良さ。この楽章にはチェンバロが厚く和音を弾くクライマックスがありますね、ここをずっしり聴かせるアゴーギグも流石、ダントーネはツボを押さえ、弦のはっとするような表現も見事です。

category: J.S.バッハ

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クイケンSQ:ハイドン弦楽四重奏曲82番  

ハイドン最後の四重奏曲83番は1803年に着手されたものの2つの楽章のみ書かれて未完に終わっています。そのまま出版されましたが。1799年に書かれたプロコヴィッツ四重奏曲第2番に当たる82番ヘ長調(Hob.Ⅲ-82)は完成された最後の四重奏曲となります。ロンドン旅行を終え、オラトリオやミサ曲の大作を書く直前の頃で、高齢で健康も衰えたハイドンには大作曲家への期待を裏切らない仕事をするのはきっと楽ではなかったでしょう。とはいえ、さすがに82番は老境など感じさせず、蓄えられた手腕を存分に発揮、最高傑作に思えます。
クイケン・クヮルテットのすっかり耳に馴染んだ、柔軟なピュア・サウンドで懐深い演奏で聴きました。

hay sq 82
録音:1998年 オランダ、ハーレム、ドーブスヘヅィンデ教会 DENON

第一楽章、アレグロ・モデラート、爽快なテーマでハイドンの最も魅力な快調さと深い充実感を両立しています。ポリフォニックな展開部は長く、複雑で彫りの深い構成は流石、オーケストラでは聴けない小味の効いた魅力もいっぱい。ヴィーラント・クイケンのチェロが豊かでよく響き、しっかりとバランスを支えます。
第二楽章はプレストのメヌエット、ほとんどスケルツォと言えるでしょう。主題もメヌエット風ではなく、活発なものです。ここでもチェロが単独に活発なリズムを刻むのが印象的。トリオはとても弱音で夢うつつの感じに誘います、この弱音のままメヌエット主題を導入的に演奏してメヌエットの再現に入ります。
第三楽章、アンダンテ、幾分リズミカルながら昔を懐かしむかのような、穏やかなテーマ、これを繰り返しながら、変奏のオブリカートが重ねられていく、和声変化の魅力も持たせながら、後半の第一vlによる無窮動なオブリカートが美しくここで活気もでてくる。最後は眠りにつくように静寂に終わる。
終楽章ヴィヴァーチェ・アッサイは活気ある主題で単調にリズムに乗せず、シンコペーションを多用して次の拍へと跨ぎ、ちょっとラテン的なリズムの妙もあり、横の流れもじつに快調、見事に各声部の糸を織り込みながら、無窮動的に進めます。提示部を一回聴いただけで、展開部のような充実感ですが、さらに対位法を駆使した展開部は見事、終結ではvlの最高音を聴かせ、粋な終わり方、何度聴いてもわくわくする傑作楽章です。

category: F.J.ハイドン

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W.サヴァリッシュ:シューベルト交響曲5番  

我家の近辺ではレコード店というものが殆どなくなり、大型スーパー内のCD兼楽器店も数年前撤退しました。今は完全にネット通販に頼っています。
このCDは随分前、まだCD店を覗いていた頃、シューベルト交響曲の全集が手軽に揃うと、目に付いて何気なく買って保留しておいた、W.サヴァリッシュ、SKDの録音です。今聴いてみて、買っておいて良かったと思うしだい。
PHILIPS盤ですが録音はD.シャルプラッテンとあります、1967年の録音ですが、うちのシステムと相性もよく、じっくり味わえるサウンドです、弦の音がいい。

sch sym sawa

シューベルト16歳のときに書いた第1番は先人ハイドンやモーツァルトをすっかり吸収しベートーヴェンの影響も受けた堂々たる作品、という解説はまさにそのとおりで、大天才と言わざるを得ません。またシューベルトの管弦楽は管楽器の色彩的な扱いが印象的で、2種の木管、fl&obとかob&clなどユニゾンで奏して音をブレンドする方法を第1番から聴かせています。第5番にclはありませんがfl&obで聴かせます。あの「未完成」でもob&clで新たな木管楽器が出来たような響きを聴かせますね。ユニゾンになったり和声になったりするのがいいです。
今日は昨年、O.スウィトナーの演奏でも取り上げた第5番から行きます。
サヴァリッシュはその指揮姿からもイメージできるような寸分のスキもない"楷書体"的なきちっとした演奏、過剰な表現はなく足りないものもない模範演奏のような、聴いていて身が締まる感じを受けます。
第一楽章、冒頭からSKDの完璧なアンサンブルが耳を引きつけます。弛んだ感じはまったくなく、かといって固いと感じることもない、整然と提示部を聴かせ、展開部は程よく力強く切迫感を持たせます。
第二楽章、やはり主題やハーモニーの味わいがハイドンの緩叙楽章を彷彿させますね、後半ではロマン派的でシューベルトらしい和声の切り替えも聴かせ、歌曲をふと思い出します。第二楽章もサヴァリッシュはきりりと引き締めながら聴かせます。
第三楽章、一応メヌエットですが、切れ味よく引き締めた演奏、ト短調で旋律的にはモーツァルト40番風ですが、雰囲気は25番風な感じです。トリオは穏やかで田園風になります。この楽章が第5番をより魅力的にしていますね。
終楽章、ハイドン的なロンド風主題で軽快に進みます、明るさと緊迫感を交互に見事に配置していきます。サヴァリッシュは十分な力感も持たせながら荒っぽさのない演奏で見事に閉めます。

category: シューベルト

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S.ラトル:ハイドン交響曲22番「哲学者」  

灯台基暗しとはこのことで、102番や86番に注目して22番「哲学者」を聴くのが後廻しになっていた、サイモン・ラトル盤です。数ある曲の中から3曲選んで録音しているのだから、これもとっておきの名演となっています。

hay 22 rattle

まず注目すべきは第一楽章(アダージョ)、聖者と俗人の対話のような曲で、一定のリズムを刻んでいくバスと内声の上に、ホルン、コールアングレと弱音器をつけたvlが対話していきます。ホルンとコールアングレは美しく整った演奏を聴かせますが、バーミンガム市響のvlがピュア・サウンド+良い味わい、があります。ラトルは非常に階層の深い強弱法を取っていて、特に楽章の後半、vlが美しいppを聴かせ、さらに消え入るような美しいpppを聴かせるところ、深い安らぎの世界に引き込まれるようです。そしていつの間にかふっと元の音量に戻してくる無段階の柔軟な表現、ここまでの表現は他に例がないかも?第一楽章だけで千金の価値があります。強弱法は大きな単位の表現もあれば、旋律の動きに応じた無段階のまさに語る表現までありますが、ラトルはフレーズの終わり「言葉尻」も綺麗にまとめて聴かせてくれます。この演奏にはホルンは荒々しい表現は避け、適度に和らげるのが合うでしょうね。
第二楽章(プレスト)速すぎない程度のちょうど良い快速、十分練り上げられた整ったアンサンブル、ぐっと押したり引いたり、行き届いたコントロール、申し分なし。
メヌエット、速度表示なしですが、前後の楽章と対比させて、ゆったりと優雅に演奏します。平凡な主題だという評論家もいますが、私はこういうスッキリした主題も好きなのです。
終楽章(プレスト)全楽章そうですが荒っぽさがなく、耳心地のよいサウンドで快活にまとめます。階層の深い強弱は全楽章聴かれます。

ついでに続きの102番、86番もあらためて聴いたのですが、22番で聴いた、深く想いを込めたような強弱表現がここでも聴かれます。他の多くの演奏を聴いた対比で気づくのだと思いますが、特に86番は序奏部からそれを聴かれます、これは昨年のお気に入り盤に追加せねば・・トップクラスかもしれません。

category: F.J.ハイドン

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B.ヴァイル:ハイドン交響曲86番  

年末のN響の「第九」はロジャー・ノリントン指揮でした。ノリントン氏はノンヴィブラート奏法のことを「ピュア・サウンド」と言っていて、今や古楽奏法ではなく現代奏法の一つとなった感があります。音の純度が上がることによりハーモニーが鮮明に、またオケ配置も右側に2nd:vlを置くドイツ型が曲の構成を聴かせる上で有効であると、これも珍しくないですね。「第九」も新しい発見を聴かされる演奏でした。

さて、年のはじめは景気よくハイドン交響曲86番にしました。去年取り上げるのを忘れていたB.ヴァイル指揮、ターフェル・ムジークOです。まさしくピュア・サウンド。

b weil hay 86

全体に速めのテンポで快調さではあのマリナー盤に次ぐ感じです。細かなこだわりや勿体ぶったところがなく、締めるところは締めながら、ターフェル・ムジークOの上手いアンサンブルでサクサクと進めていくのがいい。沸き立つような終楽章が痛快。
一つの演奏ですべてを満たすのは難しいでしょうが、昨年聴いた86番でまずN.マリナー盤は一際快調で緻密なアンサンブルで聴かせたのが耳に残っています。一方で鈴木秀美盤のピュア・サウンドによるカチっと折り目正しい演奏や同じくブリュッヘン(旧盤)のガッチリ堅牢な演奏も好きですし、中道ですがS.クイケンの美音で整えた爽快な演奏、R.グッドマンのよく整い重厚感ももたせた演奏、T.ファイの快調さの中にも緻密に聴かせどころを盛り込んだ演奏、アーノンクールの修辞的意味を求めたような深い演奏、86番の魅力を最初に味わったS.ラトル盤の秀演もいいですし、それぞれの指揮者らしい魅力が楽しめます。
今年は室内楽や声楽入りの曲も聴いていきたいです。

category: F.J.ハイドン

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