Micha クラシックとリュートの楽しみ

クラシック音楽とリュート、自然・科学の話題など

2014年お気に入り盤  

さて、年越しまで数時間、去年と同じように過ごしています(笑)
今年のお気に入り盤も挙げだすと多すぎるので泣く泣く割愛したものもありますが、ひとまず以下のとおり、旧来から知っている演奏でLPを再入手したものも含みます、ハイドンの音盤はDaisyさんの情報で得たものもあります。

(オレンジ色はLP盤)
O.スウィトナー:ベートーヴェン交響曲第7番 LP
C.アバド:モーツァルト交響曲第39、40番
M.サンドホフほか:J.M.クラウス フルート五重奏曲&SQ
R.リヒター:タルティーニ vlソナタ《悪魔のトリル》 
I.ボルトン:M.ハイドン レクイエムほか
I.ボルトン:J.M.クラウス 交響曲ハ短調ほか
フィンランド・バロックO:J.C.グラウプナー 管弦楽組曲集
R.グッドマン:ハイドン 交響曲第76、77、78番
N.マギーガン:J.M.クラウス 交響曲集&ヴァイオリン協奏曲
O.スウィトナー:ブラームス 交響曲第1番(ライヴ)
B.ハイティンク:ベートーヴェン交響曲第7番
N.マリナー:ハイドン交響曲「驚愕」&「奇跡」
シュパンツィヒSQ:ハイドン 弦楽四重奏曲集 vol.1
M.デストリュベ:ハイドン ヴァイオリン協奏曲集
シュパンツィヒSQ:ハイドン 弦楽四重奏曲集 vol.2
S.ラトル:ハイドン交響曲第86番(2005年 VPO ライヴ) 
シュパンツィヒSQ:ハイドン 弦楽四重奏曲集 vol.3
ツィンマーマン、サヴァリッシュ&BPO:ブラームスvl協奏曲ほか
C.アバド、モーツァルトO:ハイドン 協奏交響曲ほか
H.グリフィス:P.ヴラニツキー 交響曲 ニ長調op.52
アンサンブル・コルディア:P.ヴラニツキー 弦楽三重奏曲集
ガリー・クーパー:ハイドン交響曲 第41、49、44番
L.ギエルミ:ハイドン オルガン協奏曲No.2ほか
W.サヴァリッシュ:ベートーヴェン交響曲第5番「運命」
S.ラトル:ベートーヴェン 交響曲第2番
N.ノース:フランチェスコ.C.da.ミラノ リュート曲集
J.リンドベルイ:S.L.ヴァイス ソナタ集
コレギウム・アウレウム合奏団:C.P.E.バッハ シンフォニア集

スウィトナーのPCM録音の目の覚めるようなLPに始まり、M.サンドホフらのJ.M.クラウス室内楽、これは今年の特筆もの、ボルトンのM.ハイドン レクイエム、良い曲を出してきます、アバドの幸福感あふれるモーツァルト、シュパンツィヒSQのハイドンSQも名演に満足、デストリュベのvl協奏曲も良かった、また新収穫はP.ヴラニツキーの作品を知ったこと、幸いH.グリフィスなどの秀演で初聴きできた。年末の締めくくりがコレギウム・アウレウムのC.P.E.バッハになるとは意外でした(笑)
年明けは未聴盤がまだあるので、それから聴く予定です。リュートも練習しなきゃ・・;
今年も偏見著しい変なブログを覗いてくださってありがとうございました。
皆さま良いお年をお迎えください。

category: 時事・雑記

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コレギウム・アウレウム合奏団:C.P.E.バッハ シンフォニア集  

一昨日は息子とともにまた名古屋の百貨店の中古盤合同セールに行ってきた。近頃は、また手に入りそうなものは見送り、輸入盤も高価なだけであまり興味の湧くものはなく、物色しない。未整理の300円~400円均一コーナーあたりに希少なものが見つかる。かつての懐かしい兼価盤ではセラフィムやヘリオドール盤は結構あるが、コロムビアのダイヤモンドシリーズは何故か少ない、今回数枚見つけて検盤コーナーで中身を見てみると、この手の兼価盤らしく、いかにもビギナーが扱った痕跡だらけで状態が良くない、よって断念;一方、カビ臭そうな古びたジャケットでも盤は良好なものもある。
その中から今日はコレギウム・アウレウム合奏団によるC.P.E.バッハの4つのハンブルク交響曲、未聴盤のように良好、これは私が最初に聴いた古楽器オケでもある。良い録音だったのは記憶していたが、針を下ろして驚き、1968年の録音でこれほど鮮明なhi-fiだったとは、古楽器の弦楽特有の響きが瑞々しい、下手な最新録音より聴き応えがある!

c p e bach sym
カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ
4つのハンブルク交響曲
コレギウム・アウレウム合奏団 
1968年録音


当時は古楽器オケの弦楽の魅力以上にC.P.E.バッハの凄さ、に圧倒された、弦楽器だけなのに、これほど多彩な音楽になるのも素晴らしい。全曲、楽章間の休みを置かず、アタッカで続ける、そうあるべき音楽である。全曲そうだが、よくありそうなカンタービレな旋律も安易な和声進行も出てこず、インテリジェンスな音楽と言えようか。

1曲目、ロ短調Wq.182-5、第一印象としてC.P.E.バッハの魅力に引き込むには絶好の曲、コレギウム・アウレウムは強弱の対比を深くつけたインパクト、この当時にC.P.E.バッハの真価を聴かせる演奏をしているのは素晴らしい、通奏低音にG.レオンハルトが加わっている。1st楽章アレグレットは跳躍の大きな彫の深さ、2nd楽章は涼やかで幻想的、終楽章プレスト、これぞ疾風怒涛、躍動するリズムに動と静、常に切迫的に動くバスはJ.M.クラウスの交響曲嬰ハ短調1st楽章を思わせる。コレギウム・アウレウムのバスは力感とキレがいい。
2曲目、イ長調Wq.182-4、1st楽章が印象的で清らかな下降パッセージで始まり、総奏の力感と快調さが交互に来る、後半のポリフォニックな部分も引き付ける。進展を予測させず、突如2nd楽章に突入、この楽章間の繋がりもまた聴かせどころである。2nd楽章もまた不思議さで引き付ける。終楽章は軽快だが、その快調さがじつにいい、もちろん変化多様な内容。
3曲目、ハ長調Wq.182-3、1st楽章、ハイドンにもありそうな快活な動機で始まり、本当に弦楽だけというのを忘れる深い構成、そしてアタッカで入る2nd楽章、この楽章の調性は"転調"と記されているが、アタッカで突如、異様で凄みを帯びたバス音に始まり、まさにE.バッハ極めつけと言える深い転調の楽章、ここは当盤最高の聴きどころか。終楽章、とても親しみ易いロンド主題で始まるが、続きは一筋縄ではいかない;
4曲目、変ロ長調Wq.182-2、1st楽章は心地い軽妙さと深く抉るようなバス部との対比がいい、2nd楽章はバスのピチカートを交え、静謐なvlの響きと和声変化がいい、アタッカで入る終楽章プレストは快調なリズムにポリフォニックな掛け合いで決める。

聴き終えてC.P.Eに駄作は一つもなく、コレギウム・アウレウムの演奏、H.M&BASFの録音とも素晴らしい、これは再購入して良かった。
ちなみに息子は19枚購入、お目当て盤+得体の知れない盤も聴くのが楽しみなようで(笑)

category: C.P.E.バッハ

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リュートの"ポイント"  

ポイントと言っても"要点"ではありません;リュートの表側は指板と響板の接合部分に写真のような切れ込みが施され、これを"ポイント"と呼びます。べつに無くてもよいのですが(無い楽器もある)、ないと殺風景?・・いつの間にかリュートの基本デザインになっているようです。ここは指板材と響板材を同じ形に切り抜いて接合してあります。
ポイント
7コースluteのポイント

楽器を新しく作る場合、ポイントは普通①のような形状にするでしょう、しかしバロック期の現存する楽器や絵画に描かれた楽器には②ような形状のポイントを見かけます。
ポイント例1
これはひょっとして・・当初①のように作られたルネサンス期の8コースくらいの楽器を、時代の移行とともに10コース、11コースへと多コース化するため、幅の広い指板(ネック)に付け替え、響板側の切れ込み位置は変えられないので、ポイントの両サイドを広げた、改造の証拠ではないかと思われます、③のように全体に深く切り下げる方法もあるでしょう。現代新たに作られる楽器でも改造後の形をそのまま再現している楽器もあるようです。
結果的に②の形ってけっこう好きですけどね。

ポイント11c
P.ライリッヒ、11コースluteのポイント

とても良い楽器はとことん改修して使われたんでしょう、製作は無理でも修理や改作くらい自分でやれるといいんですけどね^^;

category: リュート

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J.リンドベルイ:S.L.ヴァイス ソナタ集  

リュートのCDをもう1枚、今日はN.ノースとともに長く活躍しているスウェーデンのlute奏者、ヤコブ・リンドベルイの演奏、注目は1590年頃に製作されたオリジナル楽器、シクストゥス・ラウヴォルフ作の11コースリュートを用いているところ。
リンドベルイは2度ほど生演奏を聴きましたが、じつに端正な音づくりで荒っぽさは皆無、昔から変りません。この貴重な楽器でシルヴィウス・レオポルド・ヴァイスのお馴染みの曲を取り入れて録音しています。BISの録音もさすが、奏者の意向も取り入れているかもしれない自然な音響。11コースで演奏可能なロンドン写本の作品から、写本中、本来別個の作品をリンドベルイは適宜組み合わせて弾いています。

リンドベルイlute01
シルヴィウス・レオポルド・ヴァイス
1) 前奏曲 変ホ長調
2) チャコーナ 変ホ長調
3) ソナタ ハ短調
4) ソナタ 変ロ長調
5) 前奏曲 ニ短調
6) フーガ ニ短調 
7) ソナタ イ短調 ‘L'Infidele
ヤコブ・リンドベルイ :リュート


1)の前奏曲 変ホ長調は転調の味わい深い曲、続けて2)は同調のチャコーナ、これはお馴染みの曲。3)ソナタハ短調では冒頭にあのお馴染みファンタジアc-mollを置く、N.ノースの演奏と比べるとサラリとした感覚、続くソナタも味わい深く、最後のジーグでこの楽器の低音の鳴りをよく味わえる。4)のソナタ変ロ長調にはフランス風序曲が含まれ聴き応えあり、最後に置かれたプレストはもう少しスピードを上げると痛快だが、リンドベルイは程々に安定感で聴かせる。5)の前奏曲ニ短調はアルペッジョで始まるお馴染みのソナタ ニ短調の最初の曲、続いて6)フーガニ短調は数少ないフーガ作品、最後の7)で魅力的なソナタ‘L'Infidele を聴かせて閉じる、目下、小生の課題曲につき参考にしたい(汗)

ところで使用楽器、シクストゥス・ラウヴォルフ作、1590年頃は420年ほど前、ガリレオ・ガリレイの若い頃あたり、当然ルネサンス期でこの楽器は最初8コースくらいに作られたものでしょう、その後バロック期に対応した11コースに作り変えられるというよくあるケースです。楽器としての最盛期は過ぎているでしょうが、直に当時の楽器の性質を感じるうえでは貴重でしょう。録音を聴いてどうのこうの言ってもしかたないので、現物を手にしてみたいものです;
こういう楽器を弾くからにはナイロン弦など張っちゃ意味がないので当然ガット弦を張りますが、現代作られているガット弦がどの程度信頼できるものかも問題となります。1~5コースに使う普通のプレーンなガットはほぼ問題ないでしょう、ただ低音に使う弦は不明な要素が多い、
ガット低音
①はガットを縄状にして太さを得たもの、これは6、7コースくらいに向いている。②はガットに銅線を螺旋状に巻いて食い入らせたもの、銅線で重さを加えているが、しなやかさが足りず弦長の短い楽器では最低音には太過ぎて使い辛い。③はガットに金属物を含ませ、細くしなやかに出来たもので、10、11コースの最低音に向いている。いずれも現代の弦メーカーが工夫して作ったもので正確な歴史的再現ではないことも承知しておく必要がある。いずれも大量生産できる物ではないので高価である;リンドベルイはこれらを適宜使っていると思われるが、当録音では味わいのある鳴りっぷりが聴かれる。

最近はもっぱら、低音弦に大型魚用のPVF(フロロカーボン)釣り糸を使っているが、
pvf.jpg
13c lute

ガットのように狂わず、程よい硬度で音の出方も劣ることはない、実質十分代役を果たすというか、それ以上と思う。

category: リュート作品

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銀河ウォッチング2  

冬の夜、星がくっきり見えると、天体観測に勤しんでいた頃を思い出します。北斗七星でお馴染み、おおぐま座の近辺にはM51、M101ほか見どころの銀河があります。
おおぐま座
M81とM82も北斗七星の柄杓の右上にあり、これは望遠鏡の同じ視野内に収まるほど近く、10cmクラスの望遠鏡で十分見えます、もちろんこの写真には遠く及びません;存在が見えます。
m81 82
左M82、右M81
M81のスパイラルアームの先がM82に関係しているようにも見えます。M82の上下に赤く噴き出しているのは水素ガス。
M81.jpg
M81 (1200万光年)
M82a.jpg
M82 (1200万光年)(X線画像)
恒星の場合、近くに見えても距離のまったく違うものが並んでいるだけ、というのが殆どですが、銀河の場合、本当に近くにあることがあります。M81はバルジの大きな整った姿で規模も大きいでしょう、隣にあるM82に重力を及ぼし、M82ではスターバーストが起きているのがX線撮影で見られます。M82は可視光では地味なんですけどね。

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えたおとめ座M104はいつ見ても壮観です、こんな珍しい銀河が近傍に見られるのは幸運です、渦巻が降着したディスクのようになっている。M104の遥か後方に見える2つの銀河は明らかに合体しようという場面でしょう、これはハッブルだからこそ見える。
M104_20141225220422691.jpg
M104 (4600万光年)
m104後方
拡大画像

いっぽう銀河系の近くにあるけれど、規模が小さくパッとしないM33、もっと小さかったら不規則型銀河になるんでしょうね。
M33.jpg
M33 (238~307万光年)
合体経験が少ないのでしょう、渦の巻きも勢いがなく、明るいバルジの部分もない、暗いので小さな望遠鏡では殆ど見えません。しかし天の川銀河、アンドロメダ銀河とともに極部銀河群の仲間だそうです。

category: 科学・自然・雑学

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N.ノース:フランチェスコ.C.da.ミラノ リュート曲集  

久しぶりにリュートのCDです。
リュート界の巨匠となったナイジェル・ノースは以前レビューしたS.L.ヴァイスの2枚に続き、ぜひ聴きたいところを突いてきます。今回はフランチェスコ・カノーヴァ・ダ・ミラノ(1497-1543)の作品集。すでにバッハやダウランドの全集はじめ独奏曲はもとより、通奏低音でも多くの録音を残し、あらためて録音したいのはこういったところでしょうか。

north lute
ナイジェル・ノース(リュート)
6コース・リュート(16世紀初期ヴェネチア・モデル)
マルコム・プリオール 2010年製作
録音:2012年6月、聖アンドリュース教会(イギリス)


F.C.da.ミラノの弾くリュートはバロック期で言えばA.コレッリのヴァイオリンのように神がかった名人とされていたようです。
リチェルカーレやファンタジアといった、1分足らずから3分くらいの短い曲ばかりで、ノースは数曲ずつ続けて演奏するまとめ方が上手い。
ちなみに楽譜(イタリア式タブラチュア)はこんなふうで、ぱっと見、簡素ですが侮れません;
milano tab
現在のギター用タブ譜と似ていますが、一番下が①コースです。一番上が①弦というのに馴れてしまうとやりずらいですが、実際に楽器は一番下が①コースなので鏡に映したように現実的です。そう思って弾けばやりやすいはず;
ルネサンス期の典型である多声音楽でフーガの元にもなる、一つのテーマを次々に別声部が追ってくる書き方が中心、跳躍するような旋律は扱えないが、やはり魅力で、声楽さながらに聴き手が声部を追って楽しめるように弾かないといけない、私にはバロックリュートより難しいです;楽譜には音をどこまで伸ばし、どの音に繋がるかまでは記されていない、これは難しいと同時に探る楽しみでもあるが、プロ級の演奏をするのは並み大抵ではないでしょう、楽器も奏者も一流ではじめて成り立つような音楽、ひとつ間違えば玩具遊びみたいにになってしまう。
ノースはさすが完璧、似たような曲がいくつも続くにも関わらず、一曲ずつの内容を楽しませ、次を聴きたいと思うし、一際音が良い。ほぼ同年輩の人だけに元気に活躍してほしいです。今年の1月1日にレビューしたノース氏のLP写真、こんなに時が経ったのが信じられません(笑)

category: リュート作品

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C.アバド VPO:ブラームス交響曲 第1番  

もう1枚、アバドのLPを聴きます。これは数ヵ月前、中古を購入して置きっぱなしでした;
アバドは40歳前のレコーディングで4曲のブラームス・シンフォニーをBPO、VPO、SKD、LSOと4つのオケを振り分けて話題になりました。過去にLSOとの第4番のLPを持っていましたが、なぜかデッドな音質で残念でした。今日はVPOと録音した第1番、期待半分に購入したところ、こちらは打って変って好録音です。バランス・エンジニアはD.GのG.ヘルマンス、いくつも名録音をしているが、これは非常に良い。アバドのブラームス・シンフォニーは80年代のBPOとの録音は聴いたが、第1番はいまいちピンと来なかったがVPOの当盤はいい。

アバド ブラームスsym1
クラウディオ・アバド指揮、ウィーン・フィルハーモニーO
1972年 D.グラモフォン


第一楽章、序奏の開始は力強く感じるがサウンドはあくまで清涼、これを最後まで通す。主部への入りはスパっと短く打つ、そして主部も清涼に起伏に富んだ演奏、弦楽をガシガシ滾らせる場面はない。程よく鳴るvl群に管と内声、バス部がバランスよく響く。
楽章全体にこの「運命の動機」のリズムが組み込まれ、
譜例1
じっくりとした進行の中に切迫感を絶やさない。
展開部のクライマックス、293小節からコントラ・ファゴットに始まる地の底から這い上るような上行の末、頂点の321小節から弦楽がなだれ下る、
譜例2
ここでvl部とva&vc部が掛け合っていくが、埋もれがちなva&vc部が対等に聴こえ、見事に決まる、この後もさらに凄いが、アバドは熱気に走ることなく、冷静にコントロールして整った音楽に仕立てているようだ。常に感傷的な表現をしないブラームスにふさわしい。
第二楽章、VPOのしなやかな弦で極弱奏も含めた深い起伏と静謐さで極上の第二楽章にしている、vlソロもその味わいを象徴する。第三楽章、前楽章と同じく美音で整い、弦のしなやかさに管も見事同調する。
終楽章、ダイナミズムは程よく押さえ、やはり清涼な響きを壊さない、それで十分な高潮感に引き込む。61小節からのお馴染みの歌も心地よくさらりと行く、しかしコーダはキレたようにぐっと加速して、さすが十分欲求を満たして終わる。
感傷味あらわな曲は一度聴けばたくさんだが、ブラームスはメロディックであってもどこか間接的に訴えてくる、謎があるからこそ不変の魅力がある。

category: ブラームス

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C.アバド LSO:モーツァルト交響曲第40番  

最近はモーツァルトOを指揮したクラウディオ・アバド晩年近い録音を聴いているが、アバドの演奏といえばブラームスやベートーヴェンは以前から聴いていた。リリースごとに様々に演奏スタイルを変え、作品の真価に迫るために、いか様にも変容を見せる人だと思った。
LSO、VPO、BPOなどを指揮したブラームスやベートーヴェンを聴いても、そんなに長い期間を経ていなくとも、随分アプローチが変ってくる、聴き手としてもその中で好みが変る。後年になるほどピリオド・スタイルが際立ってくる。
先般、ロンドン響時代のLPを一枚ゲット、思えばこの頃のアバドのモーツァルトはあまり聴いた記憶がない、晩年のモーツァルトOとの比較も含めて聴いてみた。今日は2面の40番のみ。

アバド moz sym40
クラウディオ・アバド指揮、ロンドン交響楽団
1980年 D.G録音


第一楽章、70年代としては標準のテンポか、全体にレガート基調で進む、弦は英国オケらしいしっとりした美音、木管も色彩豊かに溶け合っている、フレーズのまとめ方も気品がある、第二主題になると若干テンポを遅め、再びテンポに戻るようだ、ありふれた40番にしない、新鋭らしい冴えがある。第二楽章、メヌエットとも同様に秀演、終楽章もバランスのとれた響きで、聴きたいパートが聴こえてくる、ゴツゴツ感のないサウンドでなおかつ充実感を持たせる。この時点でのアバド最高の演奏でしょう。しかし、私が一番好きなのは以前レビューしたアバドが最後に行き着いた演奏。時が移れば聴衆も演奏家も変わる、ハイティンクも同様に前進を続けたことに敬意を感じる。

category: モーツァルト

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S.ラトル:ベートーヴェン 交響曲第2番  

うちは灯油の暖房器具がありません、昨日まで非常に寒かったのでエアコン+電熱ヒーター両方入れていましたが、今夜は電熱ヒーターだけでいけそう、フリースのジャージパンツのおかげか(笑)やはり送風音のない静寂さは音楽を詳細に聴けます。

そこで今日はサイモン・ラトル指揮、VPOのベートーヴェン交響曲全集より第2番、ラトルの極弱音を使う表現はエアコンやらPCが動いていると聴こえない部分がある。EMIの録音は非常に鮮明でそんな微弱な表現をくっきり再生している。

rattle be sym 2
サイモン・ラトル指揮、ウィーン・フィルハーモニーO

第一楽章、序奏からVPOの弦の味わい深さと起伏の深い演奏で引き付ける、引き締まった総奏音の心地よいこと、主部は快速でキビキビと行く、爽快さを持つ楽章に相応しい、第二主題を木管が先に奏で、vlが続く、この繰り返しのときvlは分割したスタカート音に変り、力感を強める、
譜例1
ベートーヴェンによくある手法のようで、ラトルは十分切り立てて演奏、ここがいい。
コーダが随分長くなって、人によっては「ベートーヴェンは終わり方がくどい」との評もあるくらい;しかしコーダも第二展開部と言えるほど聴かせる時代になったということ。
第二楽章、VPOの弦はヴィヴラートを控えるが、ふくよかな美音はまったく遜色ない、と言うよりこのほうが良い。ラトルの起伏の深い強弱、最弱音までこのサウンドに満ち足りる。もはやハイドンの緩抒楽章とは距離が離れ、ロマン派的、シューマンの交響曲No.1「春」:第二楽章の基盤のように聴こえる。
スケルツォは力感の置きどころが意外な曲だが、キビキビした感覚で引き立てる、トリオで意外なほど弦楽を叫ばせるが効いている。
終楽章、快速なテンポで開始のびっくり感覚の動機から鋭く切り立てる、深い強弱起伏とピシッと整った合奏で引き付けて行く、コーダに入る前の弱奏は本当にエアコンが動いていると聴こえないほどで、そのあと痛快極まりない終結で決める。

category: ベートーヴェン

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B.ハイティンク:ベートーヴェン 交響曲第2番  

雪が積もるのは一冬で2、3日、積もるとしてもうっすらの場合が多い当地ですが、朝起きてすぐ窓の外を見たら「あちゃー、しっかり積もってる;」ってことで早く出かけました。今年替えようと思ったスノータイヤをもう一冬使うことにしたが、まあ何とか走れました;

今日はハイティンク指揮、ロンドン響のライヴ・シリーズより、ベートーヴェン交響曲第2番、ベートーヴェン・シンフォニーとしては演奏される機会が少ないほうだと思うが、これは全曲中最も爽快な曲、先日のP.ヴラニツキーの交響曲op52を聴いた後だと、作曲時期がほぼ同じであること、親交の深い二人であったことなどから、共通の楽しみが聴こえてくるようだ。

hait be sym 2
ベルナルト・ハイティンク指揮、ロンドン交響楽団
2005年 ライヴ


ハイドンの書法を引き継ぎ、新たなアプローチに踏み出した作品、第一楽章の序奏から大いに聴かせる構成、ソナタ形式の主部の中では動機の組み込みが緻密になり、コーダが長くもう一つの展開部のように聴かせる、また楽器の用法も巧みになり、クラリネットの活用やtimpの活躍が目立ち、手の込んだオーケストレーションに発展している。もちろんベートーヴェンの続く作品の基盤にもなっている。第二楽章は神聖な雰囲気に始まり、第九の第三楽章を予期させるが、もうロマン派の精神を感じ、そのままシューマンの交響曲に繋がりそうだ。スケルツォや終楽章は斬新、特に終楽章のロンド・ソナタの主題には驚く、終楽章もコーダが長く大いに聴かせる。
ハイティンク指揮、LSOの演奏は無駄なくくっきりと、最新の演奏感覚で第2番の魅力を明快に聴かせてくれる。timpはピリオド・タイプのようで、サウンドを切り込むように打ち出す。
今まであまり聴かなかった第2番が魅力の作品として浮び上ってきたしだい。

category: ベートーヴェン

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T.ピノック:ハイドン 交響曲第35、38、39、59番  

今日はDaisyさんの記事を読んだとたん、私もこれが聴きたくなってしまいました。トレヴァー・ピノックのハイドン交響曲第35、38、39、59番のカップリング。これを購入した当時はCDの新譜は3500円の頃;

pinn hay sym25etc
トレヴァー・ピノック指揮
イングリッシュ・コンサート
録音:1988-1989 アルヒーフ


T.ピノック率いる優れた古楽オケが疾風怒涛期のハイドンを録音し始めたと知って期待は膨らみ、新盤の出るのを楽しみに待ったものです。疾風怒涛期の演奏は他にもあったものの、いまいち満足できないものばかりでした。ピノックの演奏は過不足なし、作品の価値を捉えた純度の高い演奏に思います。アルヒーフの録音が全パートを緻密に聴かせる伝統の録音でこれがハイドン・シンフォニーを聴くのに功を奏していて、各パートが溶け合うと言うより噛み合う感覚で聴けます。カップリングの4曲は35番と39番は疾風怒涛期の定番というべき魅力、そして38番と59番はハイドンの斬新な感覚が冴えた魅力かな。

35番変ロ長調 Hob.l:35
ハイドンに親しむには初めに35番のような曲が絶好かもしれません、第一楽章の動機に続く10小節から、
sym 35 sc
このリズミカルな旋律はじつに楽しく、引き付けずにおきません。弦楽のみの第二楽章は嫌がうえにも弦楽の美しさが要求される、イングリッシュ・コンサートは流石。メヌエットはトリルやパッセージを散りばめた洒落た味わい、急速な終楽章は切れ味冴え渡る、こうした楽章も穏やかに丸めた演奏が多かっただけに目の覚めるような爽快さ。

38番ハ長調 Hob.l:38
この第一楽章の動機を聴いて、何だこれは!?と大抵の人は驚くでしょうね、ハイドンのエネルギー源を繕わずむき出しにしたようなテーマで、一度聴いたら一日中、頭で鳴っています^^これが展開部に入ると魅惑的になるんだから流石です。初演を聴いた人達はどう感じたことか。
第二楽章は弦楽による疾風怒涛期ならではの緩抒楽章、2nd vlのみ弱音器を付け、1st vlのエコーや和声を弾く、また後半、50小節からの掛け合いで、
sym 38 sc
2度→3度の不協和→協和のパターン、お馴染みだがピノックは鮮やかに響かせじつに魅力。メヌエットも一味いつもと違う、トリオはobのソロ。終楽章が聴かせる、簡潔に始まり、総奏でポリフォニックになる、ここはピノックは切り立てる、これで行くかと思いきやobコンチェルトに移る、バロックobならではの響きで演奏も味わい深い。

39番ト短調 Hob.l:39
この曲は短調作品としてお馴染み、第一楽章で動機を提示して、1小節分休み、ハイドン「待たせの術」でこれが引き付ける、展開部では61小節から一段と情熱的に踏み込む、ピノックの演奏はバスや内声がくっきり出てここが引き立つ。終楽章も同様に全パートが溢れ、力強い。

59番イ長調「火事」Hob.l:38
副題の由来は「大火事」というオペラの序曲に使われたかららしい、第一楽章の始まりを聴くと何か火事騒ぎみたいな様相もあるが、それにしては危機感がなく楽しすぎる(笑)、快速で小刻みな主題で構成していくのが魅力。第二楽章は短調で開始、弦が主体の優美な楽章だが後半で管が加わる、一か所だけホルン信号が高鳴るのは何なのか?謎が残って面白い。メヌエットも意外性をもった面白さ。終楽章、2本のホルンの鮮やかな信号に始まり、ポリフォニックな部分が続く、展開部でそれを深め、最後もホルンで痛快に終わる、このホルンが上手い。

category: F.J.ハイドン

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W.サヴァリッシュ:ベートーヴェン交響曲第6番「田園」  

EMI原盤のサヴァリッシュによるベートーヴェン交響曲全集、この全集は第8番と第9番のみライヴであとはセッション録音。第九の録音はさすがに人が多いせいか響きはデッドで少し惜しいが、第8番はさほどでもない。第1~7番は理想の録音で仕上がっている。
今日は好録音の「田園」を聴く、サヴァリッシュが振った「田園」ってあまり記憶になく、始めてかもしれない。しかし予想どおり、サヴァリッシュは大袈裟な演出なく、純度の高い演奏に仕上げている。

sawa be sym6
ウォルフガング・サヴァリッシュ指揮、ロイヤル・コンセルトヘボウO

RCOの透明度の高い響きが心地よい、第一楽章は長閑な光景の描写だが、折り目正しく颯爽とした感覚がサヴァリッシュらしい、かなりの弱奏表現も使うが、ppでもはっきりとした口調で語るように緻密な音が聴こえてくる、第二楽章では常にどこかのパートが小川のせせらぎを描写しているが、弱奏ながら丹念に聴かせる、終りの鳥達のさえずりは、整った演奏の中にまさに自然描写のような印象で引き立つ。第三楽章はスケルツォらしい活気のテンポできりっとリズムを切り立て、嵐の描写は極端な強奏は控え、バランスの良い響きでコントロールする、嵐が去って終楽章、よくあるのが非常にゆっくりしたテンポで表情過多に歌いあげる演奏だが、サヴァリッシュは程々なのがいい、RCOの美音をやたら前面に出すことなく、スッキリと自然に。何度も繰り返し鑑賞できる信頼の演奏というべきか。

category: ベートーヴェン

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W.サヴァリッシュ:ベートーヴェン交響曲第5番「運命」  

年末を前にDVDレコーダーが故障してしまい、修理に出して戻ってきたのが、全然治っていない;HDDへの録画と再生はOKだがDVD-Rへのダビングと再生がエラーになる、今度はメーカーの修理員に来てもらい、書込み&再生部のユニットを交換してやっと正常になった。この際買い換えようとも思ったが、HDDに入っている番組に残しておきたいのがあって迷った結果。

さてスウィトナーのモーツァルトの次はサヴァリッシュ先生のベートーヴェン、EMI原盤でBRILLIANT CLASSICSから出ている交響曲全集、サヴァリッシュは良い録音が今一つなかったが、今回はコンセルトヘボウ、アムステルダムでRCOを振って最高の条件、1991-1993年の録音でサヴァリッシュ68~70歳の頃、この頃は円熟の極致で矍鑠としておられたでしょう。かつてサヴァリッシュを「外科医のよう」と言った評論家もいるそうだが、わからなくもない、オケのまずい演奏(病巣)を見逃さないとか(笑)
特殊な拘りや個性を誇示するようなことは一切なく、ニュートラル、ひたすら真正な音楽を聴かせていく、というと味気ないとも思われるかもしれないが、正攻法でこれほど聴き手を捉える指揮者は本物であり、大指揮者として君臨していた人以上ではなかろうか。

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ウォルフガング・サヴァリッシュ指揮、ロイヤル・コンセルトヘボウO

まず聴いてみたのが第5番「運命」、極端な表現なく、楷書的にきっちり聴かせて行く、開始の動機はあまり力まず端正、rit.も程々、そのあと弱奏が続き、18小節でぐっとcresc.が要求されるが、
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ここはテンポも少し巻いて引き付ける、一瞬のことだがなるほど、と思わせる。
外観的には何の変哲もない演奏に目立たず効果的な変化を忍ばせ、音節の区切りを明確に切り立てた演奏で聴き手を引き込む。終結部でもテンポを巻いて緊迫の内に終わる。
第二楽章、密やかな弦の響きにも筋が通ったような味わい、tpとtimpは結構高らかに、自然に力感を出す。楽章の起伏の深さを存分に聴かせる。
第三楽章、スケルツォも適切なテンポ、(サヴァリッシュはやたら遅いテンポは聴いたことがない)ここも強弱の起伏深く切り立った感覚、コントラバスのパッセージも緻密に整い、聴きどころ。終楽章への移行部の弱奏もぐっと下げて、終楽章に突入、timpの連打が存分にcresc.し、ブラスが高鳴る、終楽章もまさに一点の迷いもない楷書体、ごく当り前に素直に聴けて感動させる、RCOの絶対的な美音と上手さも支えている。終結部の加速も最適、心地よく終わる。

category: ベートーヴェン

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O.スウィトナー:モーツァルト交響曲第40、39番  

あまり記憶にないジャケットだが、O.スウィトナー指揮SKB、モーツァルト交響曲のLPを見つけた、D.シャルプラッテンのクラシック部門はこの頃エテルナというレーベルだったらしい。40&39番というのが気に入った。'74-'75年の録音だが、すでにDENONと技術協力したPCM録音と同質の優れたサウンドで聴けるのも良い。涼やかで美しい弦、豊かな木管、輝かしい金管、明確に出るtimp、全体のバランスの良さ、スウィトナーの多くの録音からは共通の魅力が聴かれる。

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オットマール・スウィトナー指揮、シュターツカペレ・ベルリン

J.カイルベルトの楷書的に対しスウィトナーは行書的と言えるが、要所に切り立ったアクセントを置く、常にバランスの取れた美音を放っていく集中力にピリっと張りつめた感覚がある。
40番、第一楽章テンポは遅いと感じないくらいで行く、清涼な弦楽と管楽アンサンブルの掛け合いのような対等バランスで、地味に響きがちな40番のサウンドが鮮やかに展開する、やはりクラリネットの入った第二版がいい、展開部も良いが再現部のこのあたりから、
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スタカートの力強い上向和音をfag、va、バスが奏でる中、2nd.vlとユニゾンだった1st.vlもこの上向和音に一拍ずれて切り替える、この切迫感の増強がじつにいい。
第二楽章も短調の部分での木管の響きが心引き付ける。この楽章はあまり息の長い旋律がなく、同音を連ねたり、32分音符が2つ並び前打音風の音が印象的に動く、
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メロディックにするより深みへ誘う。
メヌエットは清潔な響きを保つが、意外に力強く演奏、もともとそういうテーマでここは悲壮感を出す、トリオは一時の安らぎである。
終楽章、メヌエットの悲壮感を引き、斬新な楽章でもある、今では40番で一番好きな楽章となった。展開部の始まりも斬新だが、1st.vlとfagが第一主題のカノンを始め、フォルテでvaが入る、1st.vlがストレッタで続く、
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ここからが緻密で大いに魅力!天才には朝飯前で今更感心することもないが(笑)
そして終楽章の終わり付近、音階の駆け上り、
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かつてスウィトナーがN響を振って、弦楽の流れに継いで管楽も対等に聴かせようとする棒の指示がTV画面からはっきり見てとれたのをよく覚えている、当録音もそのとおり捕えている。ここはvl群が強すぎると聴こえにくい。

39番、序奏の開始、総奏音から力を抜いて本当に耳心地よい、主部は普通かやや快速、これも40番で述べたとおり、弦楽と管楽の好バランスで響きは抜群。第二楽章は爽快、短調部での管楽の色合いが効く。メヌエットは程よくリズムを切り立て、やはり弦と管の対峙する響きがさらに心地よい。終楽章、力み過ぎない範囲できりっと引き付ける、スウィトナーらしい美質で締めくくる。

category: モーツァルト

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L.ギエルミ:ハイドン オルガン協奏曲No.2ほか  

あまり知られていない古典派作曲家を取り上げるのも、ハイドンの有名曲ではない部類を演奏するのも同じことが言えるかもしれませんが、演奏しだいで有名曲となんら引けをとらない魅力を放ちます。今日はロレンツォ・ギエルミ率いるラ・ディヴィナ・アルモニアによるオルガンとヴァイオリンのための協奏曲集で、よく演奏されるorg協奏曲No.1やvl協奏曲No.1は入らないアルバムです。ハイドン好きには聴きどころでしょうが、一般にはマニアックと思われがちかも?しかし聴けばたちまち魅力に包まれる。
ロレンツォ・ギエルミは解説文の言葉を借りれば「古楽の牙城」バーゼル・スコラ・カントルムの教授でもあり、ここではorgのソロも務める。vlはイル・ジャルディーノ・アルモニコの音楽監督も務めるステファーノ・バルネスキ、演奏者のゆるぎない実力が基盤となった名演、絶対的自信がないと出せないであろう逸品のアルバムです。

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1. オルガン協奏曲 ニ長調 Hob.XVIII:2
2. ヴァイオリン協奏曲第4番 ト長調 Hob.IIIa:4
3. ヴァイオリン、オルガンと弦楽合奏のための二重協奏曲 ヘ長調 Hob.XVIII:6
4. オルガン協奏曲 ハ長調 Hob.XVIII:10
ロレンツォ・ギエルミ(org・指揮)
ラ・ディヴィナ・アルモニア(古楽器)
ステーファノ・バルネスキ(vn)


1曲目、オルガン協奏曲第2番の第一楽章開始からひじょうに活き活きと個々の音符に表情があり、数小節聴いただけで引き込まれる、弦楽もすばらしい、わりと長大で内容の高い第2番を最後までじっくり味わえる。オルガンは新設されたばかりのものだが、音は古式ゆかしく機構音を伴う、フルート管の音は気品があり、鳴る前の一瞬、フッと空気の入る音はいつもの味わい、発音でいえば子音のように音を粒立て、第二楽章のパッセージなども明快に聴こえる。
2曲のヴァイオリン協奏曲第4番も傑作だ、前古典派らしい魅力に包まれる、バルネスキのvlは長い音は芳醇、素早い技巧にもしなやかさを感じる美しさ、終楽章の切れ味、まさにC.P.E.バッハの急楽章を彷彿させる。
3曲目はvlとorgの為の二重協奏曲、始まりの主題はorg協奏曲No.1の姉妹作品のうような雰囲気、vlとorgのソロという組み合わせは聴き慣れないだけに面白いが美しく溶け合い、ダブル・コンチェルトらしい聴かせどころも流石ハイドン、演奏は爽快な中にも切り立ったインパクトを置いて引き付ける。
最後はやや小規模なオルガン協奏曲第10番、これはオルガンのみが完全にソロを取る通常の協奏曲ではないようで、鍵盤を含む室内楽のような書き方らしい。
まったく演奏の良しあしで音楽の価値は桁が変ると思える。古典派の演奏で求めたいのは、一にも二にも作品そのものの真価が聴けること(当り前だが)、そこに演奏者の美質が共鳴してさらに魅力が加わるのは大いに結構だが、これは大変デリケートなこと、言わばとてもプレーンな音楽で変な料理をすると台無しになる。

category: F.J.ハイドン

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J.カイルベルト:モーツァルト交響曲第38「プラハ」、39番  

先日も中古盤セールを覗いたのですが、最近は、これは欲しい!とピンときたものだけに絞ることにしています。我々の世代には千円盤というのは馴染みが深く、統一されたジャケットのデザインが目につくと内容は何だろうと取りだしてしまいます。このテレフンケンのジャケットは1300円時代のもの。このシリーズではヨーゼフ・カイルベルト指揮、バンベルクSOの録音が多く、今では貴重なものでしょう。今回はモーツァルト交響曲第38「プラハ」と39番、これは初めて聴きます。ハイドンの「時計」を聴いたときと同様、きっちりと楷書的なモーツァルトです。

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ヨーゼフ・カイルベルト指揮
バンベルク交響楽団


38番は序奏部は速めのテンポで、余計なしつこさなく主部に入る、気みじかオヤジにはちょうどいい(笑)、主部は普通くらいのテンポ、スタカート表現を適所で使い、直線的な中に流線美を加えた感覚、tpとtimpが良く飛び出し、譜例のリズムが象徴するような快調なステップの感覚を聴かせる、これは付点を伸ばしぎみに、次の16分音符を詰めるのが心地良い。
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弦は合奏群でもボウイングのソロイスティックな味わいをよく聴かせ、決して武骨にはなっていない。長い楽章だが、きりっと引き付けて進め、終結もrit.をせずスパっと終わる、反復があるのかと思ってしまった。
第二楽章も予想どおり、さらりと粘っこさを出さない演奏、聴いていてしつこい嫌味がない。
終楽章はけっこう速いテンポできっちり整った合奏で切迫感をつける、展開部ではさらに凄味を聴かせる。

39番の序奏は速めで音を切りながら付点リズムを立たせ、最近のピリオド演奏の感覚に近い、序奏の最後の音が主部のテンポを決めるが普通くらいに導く、主部は快調だが、骨組みをかっちり聴かせる、tpとtimpの打音リズムがしっかり立ち、効果的に助長する、やはり終結はrit.なし。
第二楽章、当然やんわりとした表現などしない、繰り返しは少し弱音にして、次との対比をつけ、中間部の短調はぐっと深みを聴かせる。
メヌエットは思ったとおり、並みの演奏以上にスタカートで切り立てる、まさにドイツ語を喋るような、しかしフレーズのまとめはふっと力を抜く、これは最高。
終楽章、わりとレガートに始めるがやはり骨組みはしっかり感じる。提示部の最後、
sc 2
このスタカートを当然に意識するリズムのように、各部をきりっと引き締めながら全体をまとめる、心地よさこの上なし。古い演奏には甘ったるかったり、やけに拘った演奏があって好きではないが、カイルベルトのモーツァルトはお気に入り盤に加わった。

category: モーツァルト

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