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Classic音楽,リュート,宇宙

クラシック音楽とリュート、宇宙・科学 etc

コダーイSQ:ハイドン 弦楽四重奏曲ヘ短調 op.20-5  

このところハマっている、ハイドンの太陽弦楽四重奏曲、6曲の内3曲は終楽章が見事なフーガというのも楽しみです。先に取り上げたハ長調、作品20-No.2に続き、今日はNo.5のヘ短調、久しぶりにコダーイ四重奏団の演奏で聴きます。

kodaly hay sq
弦楽四重奏曲
ニ長調op.20-4(Hob.Ⅲ:34)
ヘ短調op.20-5 (Hob.Ⅲ:35)
イ長調op.20-6(Hob.Ⅲ:36)


四重奏曲ヘ短調op.20-5
第一楽章、モデラートは1st vl中心のわりと感傷的でメロディアスな第一主題、第二主題も優美な味わい。ハイドンの短調交響曲とは趣が違う、展開部は第一主題で始め、複雑な書法は取らず、やはりメロディックに聴かせる場面が多い。コダーイSQは模範的な秀演で安心できるが、最近はもう少し切り立ったものが欲しくなった;
第二楽章メヌエット、交響曲39番のメヌエットに近い趣きでまずまず。
第三楽章、アダージョ、優美なテーマに基づき、1st vlのソロが目立つ、穏やかにまとめられた演奏で、もう少し引き付ける表現がほしい。
終楽章、これはいやが上にも魅力の楽章、二つのテーマをもつフーガ楽章で、譜例の2nd vlに始まる①のテーマ、vaに始まる②のテーマが各パートから繰り出される、これはヘンデルなどバロックのフーガを彷彿させる。
sc 01

盛り上がりを見せたあと111小節にフェルマータを置き、間を詰めた新たなパターンでストレッタを聴かせ、
sc 02

135小節からのvcの持続低音が終結に近いことを予感させる。
sc 03

一段と複雑な終結部を聴かせて終わる。これはop.20-2よりも聴きやすい曲でもあります。
最後のop.20-6のフーガも素晴らしいですが、あらためて。

category: F.J.ハイドン

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お詫び  

私、当ブログ機能をよく知らず、多くの方に、拍手コメントをいただいているのに気づかず、お礼書き込みをしていませんでした。あらためて過去のコメントを読ませていただき、遅ればせながら書き込みさせていただきます。

category: 時事・雑記

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「千と千尋の神隠し」サウンドトラック  

宮崎駿監督のアニメ映画で一番傑作だと思うのが"千と千尋"です。あのトンネルに入る前の石像の薄気味悪さ、でもちょっと怖いもの見たさもそそられる雰囲気、昔どこかで見たような廃屋同然の古臭い建物や街並み、幼い頃の、夢だったか現実だったか区分けが付かない記憶を明確に映像化したような世界は宮崎作品共通です、空間はいつもどおり広大に描く、またこの作品は色彩が一際良かった。神経質な千尋に対し、父と母は羨ましいほど大ざっぱ、これも不安でいっぱいだった子供心を思い出させる;冠水した線路を電車が走るってのはあり得ないけど、夢なら何の違和感もなかったりします。

Sprited_Away.jpg

久石譲の音楽がいつも作品に深みを与えています。大編成オケってのはめったに聴かないのですが、この作品なら「ピーターと狼」云々よりずっと楽しめる、オケは新日本フィル。なかなか優れた音源で、手持ちのホルストの「惑星」やらマーラー交響曲の優秀録音より上をいっている。たまにオーディオ・チェックも兼ねて聴いてみたりします。オケ全体の厚み、特に金管の量感ある響きがリアル、バスドラムは室内の空気を揺ってくる、シンバルや金属系打楽器のキレも痛快。トラック4「夜来る」や5「竜の少年」など聴きどころ。19「ふたたび」は歌曲的で長く記憶に残るよい曲だ。

オーディオ・チェックと言っても使っているのは自作SP、
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箱は一度作り替えたが、SPユニットはもう20年近くなるもの、スピーカーってのはほんと壊れないですね、その後新型の特性の優れたユニットは次々出ていますが、これで古楽器も大編成オケもそれらしく聴けるのでいまだ使用中、壊れたら"ハーベス"とか考えたいですが;(笑)

category: 近代・現代作品

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P.アンゲラー:ハイドン交響曲第101番「時計」ほか  

ウィーン古典派の演奏に長く力を注いでいるという、P.アンゲラー率いるウィーン・コンツィリウム・ムジクム(古楽器)による演奏、曲のカップリングといい、ちょっと興味が湧いて取り寄せた。ざっと聴いてみて、S.クイケン&プティットバンドのような緻密に仕上げた感じではなく、日頃の腕前と冴えで活気を込めて演奏している感じだ、時折合奏の乱れも聴かれる、おそらく古典派期当時は次から次へ多くの演奏が求められ、今日のレコーディング時のように特定の曲を入念に練り上げる暇はなかったかもしれない、そういう意味で歴史的な現実味を帯びている気がする。

m hay moz j hay
①ヨハン・ミヒャエル・ハイドン(1737~1806)
交響曲第39番 ハ長調 P.31
②ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)
クラリネット協奏曲 イ長調 KV622
(バセット・クラリネットによる演奏)
③フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732~1809)
交響曲 第101番 ニ長調 Hob.I-101「時計」
(ハイドン自身による原典版)
パウル・アンゲラー指揮:ウィーン・コンツィリウム・ムジクム
エルンスト・シュラーダー:バセット・クラリネット


M.ハイドン 交響曲第39番 ハ長調 P.31
ミヒャエル・ハイドンの交響曲といえば、小ざっぱりした作品が多いと思っていたが、これは例外、tp、timpの入った祝祭的な作品、第一楽章、第一主題は簡潔で快活だが、第二主題が意外と凝っていて聴かせる、展開部~終結部までも手の込んだ内容で楽しませる。第二楽章、緩抒楽章でもtp、timpが使われ、この時期としては兄ハイドンやモーツァルトにも例がないとされる。一番の聴きどころはフーガで書かれた終楽章、緻密な書法で快活さ華やかさでも十分に魅了する、これも後のモーツァルトのフーガ作品の火付け役の一つとされる説にも頷ける。

モーツァルト クラリネット協奏曲 イ長調 KV622
この作品に使われたオリジナル楽器、バセット・クラリネットはバセット・ホルンやバス・クラリネットと混同されやすいが、A管クラリネットの低音域をバセットホルンの最低音である記音ハ(C3)まで拡張した楽器だそうである、実際どのような楽器か近年まで詳しくは不明だったらしいが、長くなった管を演奏しやすくするため、"く"の字に折れ曲がった姿に復元されている。曲は上声とバス部の二声のように書いたり、長い音階を上って行ったり、この楽器の音域を存分に活かすべく書かれている。当演奏はエルンスト・シュラーダーが軽々と吹いていて、"名曲をじっくり"と構えた感じがなく、さらりと速めのテンポで聴かせていくのがいい。黄柘植の管で、モダンのクラリネットよりやや軽質の響きだが、クラリネットらしい艶と豊かさは十分味わえる。

J.ハイドン 交響曲 第101番 ニ長調
この曲は今日、クラリネットを含む楽譜が使われるのが通常のようだが、クラリネットは後から加えられたもので、独立したパートはなく、総奏部などで、オーボエの下支えくらいにしか使われない。当演奏ではハイドンの初稿に従い、クラリネットを除いている。聴いてみると何時もと大きく変らないが、総奏部の響きが幾分素朴に聴こえる、クラリネットが全体のサウンドに厚みと潤いを与えていたのがわかる。
第一楽章、序奏から、あまり意気込んだ感覚なく、さらりと馴染みやすい演奏で進めていく、主部は急速にせず、ホルン、tp、timpを存分にシンフォニックな響きを豪快に聴かせる。第二楽章は振子らしい速度が良い、弦による主題からあまり神経質な表現にならず、ゆったり楽しむようだ。短調からはやはり豪快。録音も深々とした充実サウンド。メヌエットは軽やかさに柔軟さも持たせた演奏で心地よい。終楽章、ほどよく快速、軽やかな開始と総奏部の豪快さが良いバランスで捕えられ、ここも神経質にならない良さで楽しめる。たまにtpのミス音もあるが、そのままの大らかさ。

category: F.J.ハイドン

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ザロモンSQ:ハイドン 弦楽四重奏曲第32番  

ハイドンの太陽四重奏曲と呼ばれる6曲セットは本当の意味での弦楽四重奏が確立された作品群で、この段階でもう完成の域に達したような内容、これが最高傑作だと評価する人もいるほど。確かに、と思えるほど、高度な書法が用いられています。今日はシュパンツィヒSQの最新の録音にも入っていた第32番 ハ長調 op.20-2 Hob.III:32をザロモン弦楽四重奏団のアルバムから聴く、ザロモンSQはホグウッドやピノックらと活躍したサイモン・スタンデイジ率いるグループで録音は1991年、室内的な落ち着いた響きで収録されたナチュラルな演奏で、ほっと寛いで楽しめると同時に充実した1枚。

hay sq salo
第31番 変ホ長調 op.20-1 Hob.III:31
第32番 ハ長調 op.20-2 Hob.III:32
第33番 ト短調 op.20-3 Hob.III:33
ザロモン弦楽四重奏団
Simon Standage:vl Micaela Comberti:vl
Trevor Jones:va Jennifer Ward Clarke:vc
hyperion 1991


第32番 ハ長調 op.20-2 Hob.III:32
第一楽章モデラートはいずれの主題も流麗で穏やかな味わいで気分も安定する。展開部では第一vlとvcが掛け合い、ぐっと緻密な内容となる。
第二楽章はハ短調になり、カプリチォ風の自由な形式、ユニゾンで印象強いテーマを開始、第一vlが先導する独奏曲的な進め方でもある、中間からカンタービレになるが、カプリチォ的な部分も織り込む、
休みを置かずメヌエットに入るが、第二楽章の雰囲気を引きずる、異色のメヌエットである。
また休みなく終楽章に入るが、これがじつに見事な四重フーガ、本当に耳で聴くだけでは解析できない緻密さ、4分ほどの楽章だが、反復部分がないので楽譜は結構長い。
fuga.jpg
最も印象深い①のテーマから順に第一vlが始める、4小節から第二vl、8小節からva、11小節からvc、と続く、ただしvaは2小節から、②、③のテーマを先行して弾き、①のテーマに入る、
各テーマによる音のメリーゴーランドというべきか、これらが適宜短縮されたり変形されたりして全体の構成が作られていくが、まあハイドンの手腕には恐れ入るばかり。

category: F.J.ハイドン

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Weiss ロンドン写本の筆写ミス?  

今、練習中のS.L.ヴァイスの"L infidele"ですが、ベースに使っている譜はロンドン写本です。しかしこちらは筆写ミスが多く、注意がいるそうです;一例でミュゼットについて、ドレスデン本の同曲と比較します。

ロンドンのほうは冒頭のリズムが①のパターンで始まり、以後②のパターンが混在する、ドレスデンは全て②のパターンで統一されている。
muse 譜例1
ちなみにN.ノースはリズムパターンはロンドンの混在状態をそのまま採用している。J.リンドベルイはドレスデンのパターンで統一している。

次に同じミュゼットだが、ドレスデンの46小節が、ロンドンでは55小節にそのまま飛んでいる;;その前後部分は改変なしなので、単純にワープしているのだ。
muse 譜例2
これに関しては今度はN.ノースがドレスデンのとおり演奏し、J.リンドベルイはロンドンの55小節を削除して弾いている、たしかに54小節から同じ音形で整うところ、この"55小節"がポツンと割り込むのはおかしい。これぞ不実女の振る舞いか?いずれにしても定石的ではない不思議な感覚の曲です。
参考CD 左:N.ノース盤、右:J.リンドベルイ盤
weiss nl

どうもロンドンのほうは筆写ミスが多いようだが、間違えっぷりが異常にも思える・・同じ音で運指を変更しているところもあり、いろいろ再考した様子もある、明らかな間違いもあれば改訂?とも思える部分も・・悩ましいですね。レッスンではじっくり検証して行う予定。

category: 演奏・録音について

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S.クイケン:ハイドン 交響曲第101番「時計」  

「時計」はもう何百回?聴いたかわからない、ちょっと頭が麻痺ぎみだが、リセットしたつもりで聴いてみると、本当にハイドンのような熟練の交響曲作曲家がはじめて書けるような内容を持っていて、全楽章小刻みな音階の上下行で満たされた個性的な曲、ハイドンにも他に類似した作品は無いようだ。今日もクイケン、プティットバンドの過不足ない演奏で聴く。

kuij hay 101
シギスヴァルト・クイケン指揮
ラ・プティット・バンド


第一楽章、序奏はいつもどおり、プティットバンドの極上の古楽サウンドで一際神聖に始まる、主部はちょうど良い快速、第一主題動機はキビキビとした切れ味に、しなやかさを絡めて始まり、総奏の量感もぐっと押し出す。第一主題部の最後、
譜例1
73小節からをクイケンは明確にスタッカートして、この瞬発力が心地よい、同様に演奏しているのはほかにブリュッヘン、アバド、グッドマンが思い当たる。スタッカートしない演奏が多いが楽譜の違い(ランドン版以外)のせいだろうか?
続いて82小節から第二主題が出てくるが、
譜例2
相変わらず小刻みで第一主題と大きく性格は変わらない、両主題ともきわめて器楽的。展開部は第二主題でポリフォニックに始まるが、主題が変幻自在に織り込まれた緻密な切迫感に引き込む、以後、終結まで引き付けて行く。
第二楽章、ほっとするような時計のリズム、プティットバンドの弦楽によるテーマの美しさは格別、木管も同化したように溶け合う。美音で引き付けた後、短調部分をかなり衝撃的に開始、緊迫感で包む。次にバス部が沈黙した清涼感を聴かせ、全休符を置いたあと、調を変えて後半に入る、再びじりじりと力感を重ねて行くような変奏は素晴らしい。
メヌエット、アレグレットらしいテンポで重くならず、快活に聴かせる。トリオのフルート・ソロと次の総奏と大きく対比をつける。強弱の懐深さ、しつこいようなレガートを排した表現も良い。
終楽章、急速ではないが適度に快速、この楽章の動機は
譜例3
先述の第一楽章、73小節からの音形と類似して聴こえる。弱奏で始まり、力感たっぷりの総奏に入るが、騒音的でないのが耳疲れなくて良い。展開部に替るフガートはあまり弱奏にはせず、緻密な内容をくっきりと聴かせる。

category: F.J.ハイドン

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S.クイケン:ハイドン 交響曲第100番「軍隊」  

今日も、聴き漏らしていた名演を聴く、S.クイケン指揮、ラ・プティット・バンドのハイドン交響曲「軍隊」、これもじっくり聴いた憶えがない;多くの古楽オケの演奏がある中でも、クイケン&プティットバンドの魅力は徹底して磨かれた音作りにある。この「軍隊」も特筆の名演だった。

hay sym 100 kuij
シギスヴァルト・クイケン指揮
ラ・プティット・バンド


第一楽章、序奏の始まりはしっとりとした弱奏の弦楽の美しさの極み、やがて十分な強奏を打ち出す、主部は快速、木管で始まる動機を弦が引き継ぎ、ここまでは繊細緻密、39小節からのフォルテがどっしりと豪快、DHMのピラミッドバランスの好録音でシンフォニックな醍醐味は申し分なし、
sc仮
ちなみにブリュッヘン&18世紀OのPHILIPS盤ではこのあたりの聴き応えがまるで伝わってこず、ブリュッヘンらしくない。クイケンは快速かつキビキビと緻密に整った演奏で柔と剛の対比を明確に示していき、繊細だがヤワではない気高さを感じる。展開部から終結までの壮大な表現も見事。チャーミングな旋律と武骨なほどの響きが一体となった魅力にまとめる。
第二楽章、第一楽章の熱気を冷ますような、フルートと弦楽がバランスよく溶け合った響きで開始、しかし鳴りものが入るところは十分の力感で攻める、tpの吹奏も透明伸びやかで良い、信号ラッパは意外と丁寧に演奏、その後の豪奏がすごい。
メヌエットは速めで軽やか、トリオも含め透明感を帯びた清々しい演奏でまとめる。
終楽章も意外と快速、弦楽をはじめとする合奏が緻密に整っているので結構ダイナミックな表現でも荒っぽさがなく、耳心地が良い、じっくりと引き付ける弱奏、timpを存分に打ち鳴らす強奏、最後のバスドラムの入る鳴りもの部分は録音の功もあり懐深い響きで痛快に決まる。

category: F.J.ハイドン

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ナットの修正  

リュート・ナットの弦溝位置は弾き手によって具合のよい位置が微妙に違って、標準スペーシングは無いと言えるでしょう。特に多コースのバロックリュートは限られた指板スペース内で広げたり詰めたりのせめぎ合いです;複雑な装飾音をよく弾くあたりは広げたいところ(と言っても僅かですが)、いくつか曲を弾いて、こうすると具合が良いというのがわかってきます。わずかにずれた位置(0.5mm以下とか)に溝を掘り直すのは難しいです、こうなったらナットの作り替え、この楽器は4回目かな、やっと文句なし?の状態にできました;
仕上り
リュートのナットはあまり溝を深く彫ると美しくありません、特に黒壇ナットは弦が半分以上顔を出し、滝のように見えるのがいいんです(笑)

ナット自体は結構簡単に作れます、獣骨や黒壇をちょうどの寸法に切り出し、後は手に持ってサンドペーパーを敷いた板台の端で半分ずつ削って、カーブ面を作ります、リュートに当てがって高さの具合も見ながら仕上げていく。
削り

肝心なのは溝入れです、これに失敗したら台無し、ダブルコースの間隔も0.2mm狂っただけで具合わるくなります;紙に書いたスペーシングを鉛筆でナット上に転記、そこをまずニードルでけがき、けがき線に三角の細ヤスリを当てがって仮の溝を付け、最後に細丸ヤスリで仕上げ彫りをします。弦の巻きとり方向はまっすぐとは限らず、斜め向きの弦もあるので、溝もその向きに彫ります。溝の方向がまずいとギリギリ音をたて、スムースな調弦ができません。
ナット

category: 楽器について

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小さい楽器は難しい  

アルト・リュートを手にしたのはいいんだけど、いざ曲を弾こうとすると何だか難しい(笑)、楽器そのものは良く、気に入っていますが。長年ギターとか、それに近いサイズのリュートに馴染んできたせいか、急に弦長の短い楽器を手にすると随分勝手が違います、アルト・リュートは写真のテナーより55mm短いですが、かなりの違いに感じます。
ソプラノ・リュートもあるのにアルトで音を上げてちゃいけませんが;

at lute
後ろ、テナー・リュート 弦長:585mm
手前、アルト・リュート 弦長:530mm


弦長は短いほど、振幅の大きさが小さくなり、押弦も弾弦も手触りは硬く感じられます。テンションはやや緩めに設定してあるにもかかわらず。
sinpuku.jpg

初めからソプラノ・マンドリンやヴァイオリンに馴染んでいる人にはそれが普通なんでしょうけど、私などがたまに触らせてもらうとまるで歯がたたない感触です。アルト・リュートはそれほどではないにしろ、時間をかけて手を馴染ませていくしかないですね、今のところ粒の不揃いな荒っぽい音しか出せないです;小さい楽器は弦長が短いからラク、なんてことはないですね、大きい楽器のような"クッション"が無くて反応がシビアー、より微妙なコントロールが必要で、難しくなることのほうが多いです、わかってはいたのですが・・。

category: 楽器について

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S.クイケン:ハイドン 交響曲第26、52、53番  

しばらく音盤レビューが留守になっていました。ちょっと離れて耳をリセットするのもいいかもしれない、手始めはハイドンですね。
今日も古楽の大御所による演奏、S.クイケン指揮の当盤は先般のE.ウィルフィッシュ:ハイドン 協奏交響曲ほか、と2枚組になっているCD1のほうで、単独盤も持っているが、これでじっくりと聴き直しました。クイケン、ホグウッド、ピノック、コープマンなどは今も古くなく、ナチュラルな演奏で安心して聴ける。クイケン&プティットバンドの清涼、緻密なアンサンブルは何時もながら耳を楽しませる。

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シギスヴァルト・クイケン指揮
ラ・プティット・バンド
1988年 ヴァージン・クラシックス


第26番ニ短調「ラメンタチオーネ」
26番という若い番号で、3つの楽章しかないが、49番「受難」と同時期の作品だったのが意外、しかし内容は納得できる。
受難劇的な第一楽章は規模は程々だが、切り立った緊迫感で無駄なく引き締まっている。
第二楽章はバスの規則的なリズムと変奏の要素を持った弦楽伴奏、そこにobがグレゴリオ聖歌を歌う、意表を突く場面なく、神聖な気分で引き付けていく。
終楽章のメヌエットも受難劇的な気分を持たせる、バスが先行するカノンを置き、ぐっと彫の深さを与える、トリオにも意外性を持たせ、最後を締めくくるメヌエットらしい。

第52番ハ短調
ハイドンの短調交響曲の中でもっとも内容の深さを感じさせる、新時代の短調交響曲の規範ともなるような傑作。
第一楽章の劇的な第一主題、安堵感のある第二主題による対比の提示部、展開部は第二主題で始め、第一主題による劇的な深い展開、ここからが良い、
sc hay sym52 1st
第二主題の展開も置き、再現部、終結部まで緊迫感を維持する。
第二楽章、例によって弱音器をつけた穏やかな弦楽の主題、静謐な気分を打ち破るような強奏も置いて対比をつけるところがこれまでの疾風怒涛の緩叙楽章と一味ちがう。
メヌエットもハ短調で典雅というより瞑想的なテーマ、カノンの手法も加わる、トリオは長調だがメヌエット主題と同形のままのテーマで短い。
終楽章、ポリフォニックに始まる第一主題、第二主題も快活ながら第一楽章同様、安堵感のあるテーマが味わい深い。
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展開部は劇的な味わい、疑似再現を置いた構成も緻密で、終結も一際劇的である。

第53番ニ長調「帝国」
これはハイドンが広く出版を想定した意欲作でしょう、言うまでもなく全交響曲の中でも輝きを持つ傑作の一つ、
第一楽章、張り詰めた序奏、クイケンは切れ目を入れて引き締める。以下主部の譜例、
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①主部の動機がまた主和音を上下行するだけの、ちょっと頼りない印象で始まるが、次の②で一転、スタカートを入れた総奏でぐっと立派に確立する、③でさらに活気を付け、④でさらに2nd vlが快活な切れの良さを加える、ここまで盛り上げて経過部のあと、やっと落ち着いた第二主題が入る、
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展開部の充実度もすばらしい。
第二楽章は歌謡風テーマの変奏曲、特に意表を突く場面はないが、ハイドンのオケのための変奏のセンスは飽きさせることはない。
メヌエット、この明確で活気のあるテーマは何度聴いてもいい。timpの古楽器的なバン、とくるアクセントが効く。
終楽章、差し替えバージョンのAを演奏、快速に決めて行く、ここでも良い意味で粗野な味のあるtimpが効く。展開部は短調で開始、転調による瞑想的な部分を置き、終結部は意欲作らしい華々しさで終わる。

category: F.J.ハイドン

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ブリッジ  

リュートやギターの弦を止める部分も一応ブリッジと呼ばれます。ヴァイオリン属の場合は胴の底部で弦のテンションを受け止め、駒は弦の圧力のみ受け止める構造になっていて、まさにブリッジ(橋梁)と呼ぶにふさわしい状態かと思います。"駒"というのも挟みこむ木片台のようなイメージです。
リュートの弦は響板上にじかに止められ、弦楽器の構造としても大きく違うようです。
ブリッジというより、エンド・バーとでも言ったほうがしっくりきそう?
ブリッジ
最小限の質量にするため、これ以上大きくできない、うちの楽器でも一度、剥がれ飛んだことがある、そういう意味では"駒"かな(笑)

category: 楽器について

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リュートの低音弦  

リュートほど弦の選択肢が多い楽器はないかもしれません、豊富というわけではなく、消去法式に妥協できるものを選ぶという方向ですが;リュートを始めた当時、国内ではPyramid社のナイロン弦と巻弦しか選ぶ余地はなく、ギター弦と同じ質のものでしたが、リュート弦はこんなものだと思って使っていました。その後ガット弦も求めやすくなり、フロロカーボンなど新種の素材も試しました。それぞれに一長一短があり、多コースの中で適材適所に使ったりしました。バロックリュートで言えば、①~⑤コースまでの弦はよりどりみどりと言えるでしょうが、いつも悩むのは低音コースの低音弦です。最も理想なのは余韻が短く、緩いテンションでも低音がよく立ち上がる、深みのある響きです。オクターヴ弦が何のためにあるのか、本当の意味がわかってきました。

まずPyramid社とaquila社の巻弦
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先述のとおり、ナイロン繊維に銅線を巻いたものでギター弦と同じ作り、サスティーンが長く、新品は倍音もかなり出る、リュートの低音としては理想から遠い、ギター弦ならとっくに交換するほど古ぼけた状態からが使い時でした。やがてaquila社から倍音を押さえこんだ巻弦"D"と称する製品が出るようになり、リュートにはより好ましい性質でした、銅線にメッキをせず透明コーティングで錆を押さえてあり、アルミメッキより美観を維持します。

Gamut社の Gimped gut
gimp gut
これはガットを捩る際に金属線も一緒に巻き込んだものでしょう、均等間隔に巻けるはず、研磨をかけて目的のゲージ(質量)に仕上げてあります。歴史的には無い弦ですが、金属線が入った分、細めにでき、ガットらしい響きを維持するといったものでしょう、しかしさほど細くはならず、弦にしなやかさが無いのが難点です、これはガットと金属線が縛り合っているためでしょう。弦長の短い11コースluteでは最低音に使うのは無理があります。

aquila社のVenice gut
ve gut
Gamut社のPistoy gutも同じような作りと思いますが、ガットを縄状に依り合わせて太くしたものです。これの良さはさすが縄状でしなやかなこと、振動精度もわりと良く、ブリッジにも巻きやすい、ただし太さはプレーン・ガットと同じになるでしょう、適度な太さ範囲なら良い弦ですが短い楽器の最低音に使うには太すぎます。

aquila社のloaded gut
lo gut
aquila社が歴史的な低音弦として再現したもので、ガットそのものもに金属物を含ませた弦ですが、正確な再現という確証はないでしょう、確かに比重を上げて細くするのに成功している、弦質もしなやかで扱いやすく、良い鳴り方でこれなら最低音にもいける。これで振動精度が良く、お値段もリーズナブルなら申し分ないが、そこがイマイチ;;ワケありか製造が中断して長くなります。
総じて、これらガットによる低音弦は値段が高いうえに振動不良のものが多いというのが大きな難点。

クレハの大型魚用フロロカーボン釣り糸
購入時は表面はツヤがあり透明ですが、少し研磨してツヤ消しにしてあります。
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これは楽器用ではありませんが、選択肢の一つ、フロロカーボンといえば一時、高音弦やオクターヴ弦などに使っていましたが、音質がどうも無味で、ナイルガットなどの登場で遠ざかっていました。最近、低音用の弦として再浮上、比重はガットよりは重いので細めになり、しなやかとは行かないが程々の硬度、理想の鳴り方に近く、ピッチも安定して、調弦に手間取らない、ということで現在主に使っているという経緯です。

ところで今や殆ど使わなくなったナイロン弦ですが、たまに役に立つ箇所があります、
at 6c
アルト・リュートは④コースからオクターヴ調弦にしていますが、オクターヴ弦はかなり細いのを使うことになり、ガットなら0.38くらい、細すぎて甲高いのでここはナイロンの0.40にしました、毛羽立ちの心配なく、1本くらいいいでしょう。

category: 楽器について

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