Micha クラシックとリュートの楽しみ

クラシック音楽とリュート、自然・科学の話など

歴史的響き・ガット弦  

久しぶりに楽器の話題です。
A.セゴビアがギターにナイロン弦を使って以来、ギターはナイロン弦が常識、その後リュートにも通常はナイロン弦という流れになりました。ギターについてはナイロンを張る想定で楽器自体が開発されてきたと思いますが、リュートは本体だけ歴史的に作られ、それにナイロンを張っています。不合理ではあるのですが、今の演奏環境からして、弦の耐久、調弦の安定を優先してナイロン系を使うのが殆どです、私も普段はそうです;ちなみに下の写真はガット系の3種

ガット弦
①プレーン・ガット:羊腸を依って乾燥させ、研磨して太さを整え、オイルを染ませたもの、高・中音用
②ヴェニス・ガット:羊腸を縄状に巻き合わせ、太くしたもの、低音用
②ローデド・ガット:羊腸に銅化合物を染ませ、重さを補充したもの、低音用


歴史的リュートは初期は6コースで合計張力もさほどではなかったですが、バロック期は11~13コースという2倍程の数になります。楽器本体の強度はほとんど変わっていないので、全体に張力を下げないと楽器を破損します。バロック期のリュート奏者の絵ではほとんどがブリッジ近くを弾いていますが、緩い張力に対応した弾き方でしょう。

lute弾弦
バロック期、リュート奏者の右手

またバロック期のリュートの表現は左手による装飾音など繊細なものとなり、緩い張力が奏法にも好都合だったはずです。ガット弦は伸び率の少ない性質なのでエネルギー損失が少なく、緩くても鳴るんですね、よってガット弦の使用を経験するのはとても意義があります。
ただし、注意が要るのは張力の設定で、ぐんぐん伸びて細ってしまうナイロン系と同じつもりで選んではいけない、70~80%はじめから緩いものを選ぶことですね。あるいはピッチを下げて緩くするかです。

gut01.jpg
6コース・ルネサンスリュートにガット弦を張ったところ、ちょっと強めです

gut02.jpg
11コース・バロックリュートの低音にローデド・ガットを使用したところ、緩めですがナイロン芯の巻弦より図太く、力のある鳴り方です。

録音では以前レビューしたN.ノースのヴァイスのCDなどでその響きが味わえます。
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category: 楽器について

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コメント

あるべき姿に

そうですね。私も強くそう思います。
張力を弱く張っていたから、という説明でいろんなことが氷解してきます。ブリッジ寄りの弾弦、バスライダーの構造的強度の有無など。

現代は、ほんとうに環境やショービジネスオンリーで、真の演奏を聞かせようとする演奏家が極めて稀であり、残念です。

リュートを聴きに来る聴衆は、バロック時代の再現された古の響きを楽しみたいと思っているのです。たしかに、チューニングの狂いで、何分もあれやこれやと聴衆を待たせることを、失礼と思っている演奏家もいるでしょう。しかし、それはちょっと違うと思うのです。

演奏家が、
「今日は、歴史的ガット弦での演奏を行います。皆さんご存知のとおり、ガット弦は環境に反応しやすいので、ちょっとお時間をたびたび頂戴するかもしれません。ご了承を。その代わり、バロック時代の本当の響きを堪能していただけるでしょう。」

・・・・・と、こんなふうに会場のお客様に説明しておけば、文句は出ないでしょう。むしろ誠実で真摯な演奏家と評価されるでしょう。音感がしっかりしていれば、チューニングなどすぐ済むはずです。

 手間がかかるのは理解できますが、利便性ばかり追求するお手軽なカルチャーばかり持て囃されている現代において、せめてリュートの演奏くらいは、正統な姿勢を貫いてコンサート会場に望んでいただきたい。
 これは、特にプロ演奏家に言いたい愚痴です。

la luth #WOzCi2Wo | URL
2014/01/13 10:35 | edit

la luth さま こんにちは

あくせくして時間のない今の人々、巷には商業ベースの軽薄なカルチャーばかり、なんか虚しい気がしますね。聴衆としても時には本物を求めたいものです。
通常のクラシック演奏会の形式、さっと演奏者が出てきて、見事に弾いて退場する、なんて形式は古楽ではなしにして、時間は要しても、じっくり贅沢な時を過ごす、バロック時代に誘う、そんなコンサートがあってもいいと思います。
プロは職業とするかぎり諸事情で難しいかもしれませんが、ガット弦で真正の響きに親しんでいるのはアマチュアのほうが多いかもしれませんね。やれ楽器が変形した、壊れたという話は現在一般のプロを真似て強い弦を張ったせいでしょう、昔の奏者がそんな無理な扱いをしたとは考えにくいです。

michael #xNtCea2Y | URL
2014/01/13 14:59 | edit

michael さま、まったく仰るとおりですね。強く肯いてしまいます。

 今、話は違いますが、例えばクラシックギターでも、ハイテンションで弦高を高くして、鋭敏な音量の大きなギターが持て囃されています。登竜門である各種コンクールを見ていても、その傾向がわかります。
 するとアマチュアも、右に倣えで、そのようなギターを求めることになります。しかし、その後を追跡していくと、そういうギターはかなり早くに手放してしまうようです。「コンクール用」 であって、生涯を共にする楽器にはなりえないのかな、と思ったものでしした。
 音量=説得力 というのはわかりますが、飽きがきてしまうのだと思います。やはりどちらかというと音色だと思うのです。

 リュートでは、最近は比較的お客の多く入るような会場で弾かれる場合も多くなっている気がします。
 音量重視ではなく、音色の妙を充分に楽しめるそんなコンサートであってほしいものです。サロン的空間、教会、礼拝堂、木造寺院などなど、会場を吟味すれば、軽いタッチの発音でいくらでもふくよかな荘厳な響きは得られるものです。そして、ガット弦の真髄を満喫できるのです。

 今後、ガット弦を勇気を持って、積極的に使用する演奏家がもっと現れて、私たちを楽しませてくれる日を願うばかりです。
どちらかというと、アマチュア愛好家のほうが進歩的だと思いますね。

la luth #ioE1F6no | URL
2014/01/13 16:14 | edit

la luth さま こんばんは

ギターといいますと、大会場で張り替えたばかりの弦の音がビシバシ聴こえ、耳が疲れるだけのプロさんもいれば、楽器本体の音を美しく聴かせるアマチュアさんもいます。それに現在普及しているスパニッシュの流れのギターは万人向けではないと思います、19世紀タイプなら手の負担が減り、挫折せず長く続けられるかもしれません。有名なプロのやることを常識と鵜呑みにせず、一人一人が美の探究をすればいいと思います。リュートの場合、謎の部分が多いですからなおのこと、アマチュアはいくらでも失敗できるのが強みかもしれませんね(笑)


michael #xNtCea2Y | URL
2014/01/13 20:04 | edit

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