Micha クラシック&リュートの楽しみ

クラシック音楽とリュート、自然・科学の話など

M.サンドホフほか:J.M.クラウス フルート五重奏曲&SQ  

タルティーニのvlソナタ「悪魔のトリル」はタルティーニの夢の中に現れた悪魔が人間には思いつかない霊感に満ちた曲を聴かせ、目覚めた彼はそれを書きとめようとしたが、夢で聴いた曲には遠く及ばなかったという伝説が残るそうです。またシューベルトは眠りかけに閃いた曲をすぐに書きとめられるよう、眼鏡をかけたまま寝ていた、という話も聴きます。それほど芸術家にとっての閃きとは夢にでてくるような掴みづらいデリケートなものかもしれません。
今日取り上げるJ.M.クラウスのフルート五重奏曲などは、夢の中の閃きをそのまま楽譜に書き切ったような傑作に思え、この曲を聴いただけで、クラウスが並みはずれた才気の持ち主と感じられます。またM.サンドホフ:fl、シュパンツィヒ四重奏団の演奏の素晴らしさも嬉しい、サンドホフはコンチェルト・ケルンの創立メンバーでもあり流石、シュパンツィヒSQも作品のデリケートな魅力をみごと掬いあげている、クラウス・ファンなら必聴の名盤です。
先日のNAXOS盤のような演奏ではマイナス面のほうが多く、これを最初に聴いてクラウスをつまらない作曲家だと多くの人が錯覚してしまったら由々しきことです。

ヨーゼフ・マルティン・クラウス
フルート五重奏曲 ニ長調、弦楽四重奏曲 ト短調 op.1-3、弦楽四重奏曲 ニ長調 op.1-4
マルティン・サンドホフ (fl.トラヴェルソ)、シュパンツィヒ・クァルテット
録音: 3-6 April 2001, Barocksaal, Kloster Benediktbeuern, Germany
CAPRICCIO レーベル

kraus fl quin
CD情報

フルート五重奏曲 ニ長調
第一楽章、アレグロ・モデラート、快速な演奏でも12:59という長大な楽章、すっきりとして小回りの効いた、クラウスらしい旋律に溢れる、弦のみでの始まりからいい、頭の音をちょい伸ばし、残りを素早く軽やかに弾く、またちょっとしたルバートなど、表現センスが冴えている。そしていいところでflが鳴りだす、殆どどこかのパートがシンコペーションを奏で、快調な流れを絶やさず、各パートが複雑に綾を成す、チェロがしばし休止して低音がない部分では、まさに夢の中を浮遊して行くかの感覚、そしていいところでチェロが鳴りだす、提示部を一回聴いただけで、十分な満足感、展開部はさらに調の推移が魅了、2度ばかり疑似再現を聴かされるようで、長い展開部が続く、再現部はどこからか明確にわからないほど変化に富む、終結部も終わりそうで終わらない、もうひと押し聴きどころを加えて、二つの終止音でついに終わる。キッパリ鋏を入れるハイドンとは随分違うが、加えられた部分が決して冗長を生まず、もっと聴きたいほどだから素晴らしい。
第二楽章、ラルゴ、気分を清めるような美しいテーマによる変奏、ここも弦だけで始め、flの出が良い、常にどこかのパートがこのテーマを奏で、他のパートが変奏要素を重ねる、変奏のセンスが冴え、中間部では意外な強奏を聴かせ、短調に移ってからぐっと深みがある、変化豊かで、ありふれた無難な変奏で終わらないのはさすがクラウス、当演奏の透き通るような美音はまさに作品の真価を聴かせる。
終楽章、フィナーレ コン ブリオ、第一楽章に負けない快調な魅力、ユニゾンの動機はC.P.E.バッハを思わせ、速めのテンポで快調なリズムと切れ味で進む、パート間がしのぎを削るように掛け合い、単調ではないリズムのセンスはラテン系顔負けの見事さ、こんな楽しさは、モーツァルト、ハイドン、ヴァンハルからも聴かれない、唯一スペイン時代のボッケリーニくらいか?展開部はこの快調さで転調の推移が一段と冴える。終結もすっぱりと洒落た終わり方。
続いて弦楽四重奏の傑作がが2曲、
弦楽四重奏曲 ト短調 op.1-3
第一楽章、短い導入がフーガ主題を導きだし、フーガが始まる、古楽器ゆえに余計にバロック的に聴こえる、中間部にテーマを変化させた対位法を置き、再び始めのフーガ主題を導く、そしてフーガをパターンを変えて聴かせる、こんな楽章はクラウスならでは。
第二楽章、ロマンツェらしいテーマだが素朴さもあって好ましい。中間部での情感の変化が聴きどころ、シュパンツィヒSQのノンヴィブラートによるハーモニーも格別。
終楽章、テンポ ディ メヌエットだが、スケルツォ風、小悪魔の踊りのような不思議な雰囲気とリズム感を聴かせ短く終わる。
弦楽四重奏曲 ニ長調 op.1-4
第一楽章、アレグロ、先述のフルート五重奏曲と同系の魅力をもつ楽章、弦楽が細やかな旋律で流線的美しさを貫き、各パートも緊密に掛け合う。この旋律の節回しの特長が似ている人は本当にボッケリーニくらいしか浮かばない、展開部も心地よい流線美のまま見事構成する。
第二楽章、ラルゲット、ニ短調にかわり、孤独感を帯びたテーマの変奏だが、変奏の技巧より雰囲気を大切にしている、中間部の長調がはっとする美しさ。
終楽章、アレグロ モルト、これぞ極めつけ、クラウスの凄味、鋭くキレ味抜群のリズムのセンス、いったいどこから影響を受けた作風なのかいまだに不明。展開部からがまた情熱的で痛快、快調な中で全パートが畳み込むように緊密に掛け合う。
作品、演奏ともに(★★★★★+α)!
関連記事

category: J.M.クラウス

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://micha072.blog.fc2.com/tb.php/538-0b632e6c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

最新記事

最新コメント

カテゴリ

最新トラックバック